464 / 464
ルドルフ立つ その4
しおりを挟む
「やぁ、どうも失礼する」
トールが最初その侵入者を見たとき、あまりの違和感に目を見張った。
第四皇子ルドルフ・・・なぜ彼が目の前に立っている?と。
ルドルフがアンドレアにいること自体は理由はわかる。シュウやフローラ狙いだろう。だが、皇族である彼は『ゴブリン』のようにいくらでも腕の立つ刺客を差し向けられる権力を持っている。わざわざ現場にやってくる必要などないはずだった。
危険だ---!
トールがルドルフに対して危険を察知して動こうとしたその瞬間--
目の前の空間が炎で爆ぜた。
「ぐっっっ!?」
突然発生した衝撃波と熱に包まれ、トールは一瞬気を失った。
次に目が開いた瞬間には、体が地面に横たわっているのを自覚する。
「・・・ぁ・・・」
声にならない声が口から漏れ出る。
全身が痛い。恐らく骨が何ヵ所か折れているのだろうか。
起き上がろうとして思わず出そうとした腕を見て、皮膚がところどころ破れ血が流れ、そうでないところは黒く焦げていることに気が付いた。
(ああ、そうか…)
強力な攻撃魔法を食らい、灼熱に身を焼かれながら壁に打ち付けられたのだとトールは認識した。
恐らく受けたのは強力な爆発魔法。
そしてそれを発動したのはルドルフ。
危険を察知してトールが咄嗟にとった行動は、腕で頭を庇うことだった。
幸いにもそれが効いて、すぐに意識を取り戻せて冷静に状況を分析出来ている。
だが、だからといって今のトールにはどうすることも出来ない。
体のダメージが深くてろくに動けないので、反撃はおろか逃げることさえ出来ない。
「ふむ、今の一瞬で反応して防御したか」
ルドルフはトールを見下ろすと、感心したように頷いた。
ルドルフが使ったのは無詠唱魔法というもので、魔法を使用するにあたって必要なあらゆる時間のかかるプロセスを大幅に短縮することの出来るものである。
魔法の居合い抜きのようなものだが、これを使うことの出来る人間は世界的にも極めて珍しい。
トールはルドルフが無詠唱魔法を使うとは思わなかったが、持ち前の危険察知の能力で咄嗟に頭を庇うことで、どうにか今意識を保つことが出来ている。
これがルドルフからしてみれば中々に驚異的なことであった。並みの者なら何が起きているかを理解することも出来ず、既に意識を手放しているはずだからだ。
実際、トールとともに魔法攻撃を食らったオーガ君は全身を黒焦げにして地面に突っ伏し、全く動く様子はない。
「やはり時に自分の目で現場を見なければならないということだな。まさかこれだけの人材に出会うことが出来るなど。すぐに直属の配下にしたいところだ」
しゃがみ込み、ゆっくりとルドルフは倒れたトールに顔を寄せる。
「事が済んだら、是非とも考えてもらいたい」
「・・・!?」
ルドルフが呟いた瞬間のことだった。
全身を走る激痛で意識が朦朧としていたトールは、一瞬で自分の体のダメージが消えたことに気が付いた。
トールが最初その侵入者を見たとき、あまりの違和感に目を見張った。
第四皇子ルドルフ・・・なぜ彼が目の前に立っている?と。
ルドルフがアンドレアにいること自体は理由はわかる。シュウやフローラ狙いだろう。だが、皇族である彼は『ゴブリン』のようにいくらでも腕の立つ刺客を差し向けられる権力を持っている。わざわざ現場にやってくる必要などないはずだった。
危険だ---!
トールがルドルフに対して危険を察知して動こうとしたその瞬間--
目の前の空間が炎で爆ぜた。
「ぐっっっ!?」
突然発生した衝撃波と熱に包まれ、トールは一瞬気を失った。
次に目が開いた瞬間には、体が地面に横たわっているのを自覚する。
「・・・ぁ・・・」
声にならない声が口から漏れ出る。
全身が痛い。恐らく骨が何ヵ所か折れているのだろうか。
起き上がろうとして思わず出そうとした腕を見て、皮膚がところどころ破れ血が流れ、そうでないところは黒く焦げていることに気が付いた。
(ああ、そうか…)
強力な攻撃魔法を食らい、灼熱に身を焼かれながら壁に打ち付けられたのだとトールは認識した。
恐らく受けたのは強力な爆発魔法。
そしてそれを発動したのはルドルフ。
危険を察知してトールが咄嗟にとった行動は、腕で頭を庇うことだった。
幸いにもそれが効いて、すぐに意識を取り戻せて冷静に状況を分析出来ている。
だが、だからといって今のトールにはどうすることも出来ない。
体のダメージが深くてろくに動けないので、反撃はおろか逃げることさえ出来ない。
「ふむ、今の一瞬で反応して防御したか」
ルドルフはトールを見下ろすと、感心したように頷いた。
ルドルフが使ったのは無詠唱魔法というもので、魔法を使用するにあたって必要なあらゆる時間のかかるプロセスを大幅に短縮することの出来るものである。
魔法の居合い抜きのようなものだが、これを使うことの出来る人間は世界的にも極めて珍しい。
トールはルドルフが無詠唱魔法を使うとは思わなかったが、持ち前の危険察知の能力で咄嗟に頭を庇うことで、どうにか今意識を保つことが出来ている。
これがルドルフからしてみれば中々に驚異的なことであった。並みの者なら何が起きているかを理解することも出来ず、既に意識を手放しているはずだからだ。
実際、トールとともに魔法攻撃を食らったオーガ君は全身を黒焦げにして地面に突っ伏し、全く動く様子はない。
「やはり時に自分の目で現場を見なければならないということだな。まさかこれだけの人材に出会うことが出来るなど。すぐに直属の配下にしたいところだ」
しゃがみ込み、ゆっくりとルドルフは倒れたトールに顔を寄せる。
「事が済んだら、是非とも考えてもらいたい」
「・・・!?」
ルドルフが呟いた瞬間のことだった。
全身を走る激痛で意識が朦朧としていたトールは、一瞬で自分の体のダメージが消えたことに気が付いた。
0
お気に入りに追加
206
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる