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ルドルフ立つ その4

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「やぁ、どうも失礼する」


トールが最初その侵入者を見たとき、あまりの違和感に目を見張った。
第四皇子ルドルフ・・・なぜ彼が目の前に立っている?と。

ルドルフがアンドレアにいること自体は理由はわかる。シュウやフローラ狙いだろう。だが、皇族である彼は『ゴブリン』のようにいくらでも腕の立つ刺客を差し向けられる権力を持っている。わざわざ現場にやってくる必要などないはずだった。

危険だ---!


トールがルドルフに対して危険を察知して動こうとしたその瞬間--

目の前の空間が炎で爆ぜた。


「ぐっっっ!?」


突然発生した衝撃波と熱に包まれ、トールは一瞬気を失った。
次に目が開いた瞬間には、体が地面に横たわっているのを自覚する。


「・・・ぁ・・・」


声にならない声が口から漏れ出る。
全身が痛い。恐らく骨が何ヵ所か折れているのだろうか。
起き上がろうとして思わず出そうとした腕を見て、皮膚がところどころ破れ血が流れ、そうでないところは黒く焦げていることに気が付いた。


(ああ、そうか…)


強力な攻撃魔法を食らい、灼熱に身を焼かれながら壁に打ち付けられたのだとトールは認識した。

恐らく受けたのは強力な爆発魔法。
そしてそれを発動したのはルドルフ。

危険を察知してトールが咄嗟にとった行動は、腕で頭を庇うことだった。
幸いにもそれが効いて、すぐに意識を取り戻せて冷静に状況を分析出来ている。

だが、だからといって今のトールにはどうすることも出来ない。
体のダメージが深くてろくに動けないので、反撃はおろか逃げることさえ出来ない。


「ふむ、今の一瞬で反応して防御したか」

ルドルフはトールを見下ろすと、感心したように頷いた。
ルドルフが使ったのは無詠唱魔法というもので、魔法を使用するにあたって必要なあらゆる時間のかかるプロセスを大幅に短縮することの出来るものである。
魔法の居合い抜きのようなものだが、これを使うことの出来る人間は世界的にも極めて珍しい。

トールはルドルフが無詠唱魔法を使うとは思わなかったが、持ち前の危険察知の能力で咄嗟に頭を庇うことで、どうにか今意識を保つことが出来ている。
これがルドルフからしてみれば中々に驚異的なことであった。並みの者なら何が起きているかを理解することも出来ず、既に意識を手放しているはずだからだ。
実際、トールとともに魔法攻撃を食らったオーガ君は全身を黒焦げにして地面に突っ伏し、全く動く様子はない。


「やはり時に自分の目で現場を見なければならないということだな。まさかこれだけの人材に出会うことが出来るなど。すぐに直属の配下にしたいところだ」


しゃがみ込み、ゆっくりとルドルフは倒れたトールに顔を寄せる。


「事が済んだら、是非とも考えてもらいたい」


「・・・!?」


ルドルフが呟いた瞬間のことだった。
全身を走る激痛で意識が朦朧としていたトールは、一瞬で自分の体のダメージが消えたことに気が付いた。
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