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ドラゴン大パニック

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「えっ・・・!?」


ドラゴンのブレス攻撃の直前で、唐突に女の声で自分の名が呼ばれたことにシュウは困惑した。
『シュウ君』などと、そんな呼び方をしてくる人間はこれまでにそう多くはなかったのもまた困惑を強めた理由の一つだ。
フローラは決して『シュウ君』などと呼ばない。トールだって呼ばないだろう。魔物じじいは・・・そんな風に呼んでくるなんて、気持ち悪くて考えたくもなかった。


『流石だよシュウ君!流石ボクの見込んだ男だ』


またも声が聞こえてきて、シュウはさらに困惑する。
誰だ?一体どこにいる?

(人付き合いの中で、自分のことをボクと呼ぶ女に心当たりは・・・いや、娼館を含めるとまぁまぁいたかも?)

結局、自分のことを呼ぶ女に心当たりはない。だが、心当たりがないからといって危ない状況に身を置かせるわけにはいかないと考え、シュウはドラゴンが本格的に襲い掛かってくる前に、どうにか声の主の女を安全なところに避難させようと思っていた。

シュウはドラゴンから意識を向けつつも、自分の名を呼ぶこの場にひどく不釣り合いな声の主を探す。

が、見たらない。
この場にいるのは、あくまで自分とドラゴンのみ。


「え・・・?まさか・・・」


一つの結論に思い至ったシュウは、顔を青ざめさせながら呟いた。
可能性としては頭にちらついているが、それが事実であっては困るといった風だ。ただでさえ、ドラゴンの吐き出すブレスを素手で切り裂いたという、類まれ過ぎる経験をしてしまっているのだから、もう脳みそのキャパシティが限界に達しようとしているのだ。


『シュウ君・・・そっか。流石にこの姿のままじゃ、混乱しちゃうよね』


またも女の子の声。
口を大きく開いてブレス攻撃をしようとしているように見えたドラゴンは、いつの間にか口を小さく閉じていた。
そして攻撃しようとする素振りを一切見せなくなる。


(考えたくはなかったが、声はドラゴンのほうから聞こえてきている気がする・・・いや、まさかそんな・・・)


そんなことあってはいけない、まさかそんな・・・これ以上変なことなんて起きないで。頭がおかしくなる。

シュウがあれこれ考えている間に、ドラゴンが強い光を発し、シュウは思わず目を閉じた。
そして光が弱まったように感じ、目を開いた次の瞬間には・・・

シュウの目の前に、それまでこの場にいなかった十代後半の少女の姿が現れた。
代わりに消えているドラゴンの姿。


「・・・」


絶句しているシュウに、目の前の少女は言った。


「これでどうだいシュウ君?竜の姿より、こっちの姿で話したほうが落ち着いていられるだろ?」


その言葉を聞いて瞬間、シュウは驚愕のあまり思わず意識を手放しそうになった。
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