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ドラゴンパニック その6
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ドラゴンが大口を開き、自分に向けているのと対峙しながら、シュウはかつての自分の仲間のことを思い出した。
それは剣士サーラのことである。
ドラゴンが口を開き、ブレス攻撃をしてくると思った瞬間・・・唐突に以前交わしたサーラとのやり取りが瞬時に脳裏に思い浮かんだのだ。
『サーラ。たまにしれっと敵の攻撃魔法を剣で切り裂いて無効化していますが、一体どうやっているのですか?レベルの低い魔法相手ならともかく、上級の魔物の灼熱の炎すら同じようにあしらっている。こんな話、他に聞いたこともないのですけど』
「えーっと・・・コツとしては炎とか斬りたいもの直接じゃなくて、空間というか空気というかを切取る感じで・・・」
『すみません、全然わかりません』
回想終了。
(・・・あれ?もう少し何か気の利いたことを思い出せなかった!?)
まるで走馬灯のようにシュウの脳裏に浮かんだそれが、起死回生のきっかけになるのが冒険者間で語られる定番の武勇伝だったりするのだが、今回のシュウにはそう都合よくヒントになるものは浮かんでは来なかった。
サーラの神業にドン引き・・・ではなく、驚愕させられた想い出が蘇っただけだ。
「そううまくいくものではないか・・・せめて剣でもあればサーラの真似事でも・・・」
自嘲気味に笑い、ため息をつきながらもドラゴンに向けて構えをとるシュウ。
剣でもあれば・・・そう言いつつも、シュウは自分の手もまた武器であることに気が付いたのだ。
己の手もまた、敵を切り裂く刃となるという話をして、ライルに驚かれたのはいつだったか。
「はは・・・どうかしてる」
シュウは苦笑いを浮かべながら、スッと腕を上段に構える。
手刀でドラゴンの吐くブレスを切り裂いてやろう・・・そう思っての構えだ。
素手が武器になると言ったとはいえ、その出来はサーラの持っていた得物には到底及ばない。
というか、もしこの手が剣と同等であっても、サーラと同じことがそうそうできるわけではない。
シュウが自ら呟いたように、他人から見れば頭がどうかしていると思われるだろう。
だが、シュウは冷静に自分の右腕に一本の刀身をイメージさせていた。
空間を切り取る--
バカバカしいと口にしながら、今では本気でそれを為そうとシュウは考えていた。
目の前のドラゴンが何を吐いてくるかさえ、シュウにはまだわかっていないというのに。
なんて脳筋だよ、と自分で自分に呆れつつも、何だかシュウは今それが本当に出来る気がしていた。
カッッッ
ドラゴンの口から、通路を埋め尽くすほどの灼熱の炎が放出され、シュウに迫った。
それは剣士サーラのことである。
ドラゴンが口を開き、ブレス攻撃をしてくると思った瞬間・・・唐突に以前交わしたサーラとのやり取りが瞬時に脳裏に思い浮かんだのだ。
『サーラ。たまにしれっと敵の攻撃魔法を剣で切り裂いて無効化していますが、一体どうやっているのですか?レベルの低い魔法相手ならともかく、上級の魔物の灼熱の炎すら同じようにあしらっている。こんな話、他に聞いたこともないのですけど』
「えーっと・・・コツとしては炎とか斬りたいもの直接じゃなくて、空間というか空気というかを切取る感じで・・・」
『すみません、全然わかりません』
回想終了。
(・・・あれ?もう少し何か気の利いたことを思い出せなかった!?)
まるで走馬灯のようにシュウの脳裏に浮かんだそれが、起死回生のきっかけになるのが冒険者間で語られる定番の武勇伝だったりするのだが、今回のシュウにはそう都合よくヒントになるものは浮かんでは来なかった。
サーラの神業にドン引き・・・ではなく、驚愕させられた想い出が蘇っただけだ。
「そううまくいくものではないか・・・せめて剣でもあればサーラの真似事でも・・・」
自嘲気味に笑い、ため息をつきながらもドラゴンに向けて構えをとるシュウ。
剣でもあれば・・・そう言いつつも、シュウは自分の手もまた武器であることに気が付いたのだ。
己の手もまた、敵を切り裂く刃となるという話をして、ライルに驚かれたのはいつだったか。
「はは・・・どうかしてる」
シュウは苦笑いを浮かべながら、スッと腕を上段に構える。
手刀でドラゴンの吐くブレスを切り裂いてやろう・・・そう思っての構えだ。
素手が武器になると言ったとはいえ、その出来はサーラの持っていた得物には到底及ばない。
というか、もしこの手が剣と同等であっても、サーラと同じことがそうそうできるわけではない。
シュウが自ら呟いたように、他人から見れば頭がどうかしていると思われるだろう。
だが、シュウは冷静に自分の右腕に一本の刀身をイメージさせていた。
空間を切り取る--
バカバカしいと口にしながら、今では本気でそれを為そうとシュウは考えていた。
目の前のドラゴンが何を吐いてくるかさえ、シュウにはまだわかっていないというのに。
なんて脳筋だよ、と自分で自分に呆れつつも、何だかシュウは今それが本当に出来る気がしていた。
カッッッ
ドラゴンの口から、通路を埋め尽くすほどの灼熱の炎が放出され、シュウに迫った。
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