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ドラゴンパニック その5

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自分にとっては狭い建物の損壊を気にしてか、それまであまり大きなアクションで攻撃を仕掛けてくることはなかった。
かぎ爪にしたって、大振りではなくジャブのようにちょこちょこ繰り出すような感じであった。ドラゴンにとってはジャブでもシュウにしてみれば必殺の一撃になるので、脅威であることには違いないが。

だが、シュウが攻撃を避け続けていると、やがてドラゴンが興奮し始めていることに気が付いた。


(あれはまるで・・・)


飼い主にじゃれついている犬・・・
ドラゴンの興奮具合を見て、シュウはそう思った。

だからだろうか・・・特に予備動作があったわけではないが、シュウはを予見することが出来た。


ガァァァァッ


ドラゴンが僅かに叫びを上げた瞬間だった。
それまでかぎ爪しかしてこなかったドラゴンが、急にシュウのほうへ体当たりするように突っ込んできたのである。
興奮した犬が飼い主に飛び込んでくるように。


「いっ!?」


その巨体故に、唐突に体ごと突っ込まれるのはシンプルに脅威だった。
シュウに当たれば体は四散して、いかに回復術世界一クラスのフローラと言えど蘇生は不可能である。


ダンッ


後ろに緊急回避し、極力威力を殺すように仕向けてシュウはドラゴンの体当たりを受けることになった。


ドンッ


ゴロゴロ


だがいかにシュウとて巨体の突撃の威力を殺しきることは出来ず、シュウはその体をピンボールのように弾き飛ばされる。


「くっ・・・!」


大きなダメージこそなかったものの、二度、三度と同じことをされればさすがにいなしきれない。
シュウは急に死が現実的になったことにゾッとした。


『ガアアアァァァッ』


ドラゴンが叫ぶ。
これもまた興奮しているように見え、すぐにでもまたシュウに突撃してきそうでもある。
ふと見ると通路はドラゴンの突進によりいくらか損壊しており、それまで建物へのダメージを気にしてたと思われるドラゴンも、興奮で周りが見えていないようだった。

犬だとしたら、なんて困った犬だ。自分はお前の飼い主じゃない、などとシュウは現実逃避もあってか呟く。
また突進か?どうしたもんか・・・
などと考えていたシュウだったが・・・事態はより最悪の方向へ展開しようとしていた。


「・・・あ」


ドラゴンが口を大きく開けたのである。
そう、ドラゴンの本当の必殺技・・・口から繰り出されるブレス攻撃だ。
これだけはないと勝手に思っていたのに!と、シュウは頭を抱えたくなった。


「興奮しすぎるにもほどがある・・・!」
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