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ドラゴンパニック その3
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意を決して飛び出したシュウの目に飛び込んできたのは、荒廃した魔物じじいの迷宮・・・ではなかった。
「あれ?」
シュウ達のいた部屋の防壁を執拗に攻撃するほど獰猛なドラゴンであれば、その身を狭めている通路など崩落するほどに破壊しているだろうと予想していたが、意外にも意外、通路は思っていたよりは断然本来の姿を保っていた。
もしかしたらフローラが言っていたようなドラゴンなんていなかった?
想像していたような崩壊現場になっていなかったことで、一瞬だけ甘い期待をシュウはしていたが・・・
「グオオオォォォォォ・・・」
その期待を打ち砕くように、視界いっぱいに収まる巨大なドラゴンの唸り声がシュウにその存在をアピールする。
「そんなに都合良くはいきませんか」
苦笑いを浮かべ、身構えながらシュウはドラゴンの種類を分析しようとする。種類によって戦い方が変わるので、冷静に正確に、万が一にもミスなどないようにシュウは意識を集中させた。
(えっ・・・?わからない・・・)
魔物じじいの影響と勇者パーティーに属していた関係もあって、大概の魔物の種類は記憶していたはずだったが、目の前のドラゴンはシュウの知らないものだった。
ドラゴンは上位種なら、大体は必殺攻撃の手段として何かを口から吐くのが特徴だ。
口から出るそれが何であるか知るか知らないとでは、戦い方が大きく変わる。
(色は炎を吐くファイアードラゴンと同じ赤。だが、角の形、目の色、翼の形状、どれもファイアードラゴンのそれと違う。新種?魔物じじいが、新しい種類を発掘して連れてきたのか・・・?)
平時ならば興味津々に観察したいところだが、最悪なことに今はこの未知なる敵と戦わなければならない。シュウの心境は非常に複雑だった。
どんな攻撃をしてくるのか、どれだけ早く動くのか、どれだけ皮膚が厚いのか、それらがまるでわからない状態で戦うのは、元より不利だったシュウの立場をより絶望的なまでに不利にする。
魔物じじいなら命に係わるレベルの状況でも、未知なる魔物との遭遇なら泣いて喜ぶだろう。
だが、シュウは違う。正直なところすぐにでもフローラが待つ防壁の中へ逃げ帰りたい気持ちだった。シュウとて魔物じじいの影響で探求心は強めだが、どれでも命は惜しいくらいのことは考える。
ちなみにシュウはギリギリまで防壁へ逃げ帰ることのないようにするために、フローラと防壁を一時解除・・・避難するときの合言葉を決めていた。
「助けてください!なんでもしますから!」
これが合言葉。こんな情けない合言葉など相当に切羽詰まった状況にならないと言わないだろうと奮い立たせる意味で決めた合言葉だが、シュウはもうすぐにでも言いたい気持ちでいっぱいだった。
「あれ?」
シュウ達のいた部屋の防壁を執拗に攻撃するほど獰猛なドラゴンであれば、その身を狭めている通路など崩落するほどに破壊しているだろうと予想していたが、意外にも意外、通路は思っていたよりは断然本来の姿を保っていた。
もしかしたらフローラが言っていたようなドラゴンなんていなかった?
想像していたような崩壊現場になっていなかったことで、一瞬だけ甘い期待をシュウはしていたが・・・
「グオオオォォォォォ・・・」
その期待を打ち砕くように、視界いっぱいに収まる巨大なドラゴンの唸り声がシュウにその存在をアピールする。
「そんなに都合良くはいきませんか」
苦笑いを浮かべ、身構えながらシュウはドラゴンの種類を分析しようとする。種類によって戦い方が変わるので、冷静に正確に、万が一にもミスなどないようにシュウは意識を集中させた。
(えっ・・・?わからない・・・)
魔物じじいの影響と勇者パーティーに属していた関係もあって、大概の魔物の種類は記憶していたはずだったが、目の前のドラゴンはシュウの知らないものだった。
ドラゴンは上位種なら、大体は必殺攻撃の手段として何かを口から吐くのが特徴だ。
口から出るそれが何であるか知るか知らないとでは、戦い方が大きく変わる。
(色は炎を吐くファイアードラゴンと同じ赤。だが、角の形、目の色、翼の形状、どれもファイアードラゴンのそれと違う。新種?魔物じじいが、新しい種類を発掘して連れてきたのか・・・?)
平時ならば興味津々に観察したいところだが、最悪なことに今はこの未知なる敵と戦わなければならない。シュウの心境は非常に複雑だった。
どんな攻撃をしてくるのか、どれだけ早く動くのか、どれだけ皮膚が厚いのか、それらがまるでわからない状態で戦うのは、元より不利だったシュウの立場をより絶望的なまでに不利にする。
魔物じじいなら命に係わるレベルの状況でも、未知なる魔物との遭遇なら泣いて喜ぶだろう。
だが、シュウは違う。正直なところすぐにでもフローラが待つ防壁の中へ逃げ帰りたい気持ちだった。シュウとて魔物じじいの影響で探求心は強めだが、どれでも命は惜しいくらいのことは考える。
ちなみにシュウはギリギリまで防壁へ逃げ帰ることのないようにするために、フローラと防壁を一時解除・・・避難するときの合言葉を決めていた。
「助けてください!なんでもしますから!」
これが合言葉。こんな情けない合言葉など相当に切羽詰まった状況にならないと言わないだろうと奮い立たせる意味で決めた合言葉だが、シュウはもうすぐにでも言いたい気持ちでいっぱいだった。
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