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ドラゴンパニック

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ドォォォォォン


フローラの魔法防壁がさらに大きな音を立てる。
部屋の外にいるドラゴンは、どうやらシュウ達の存在に興味を持ってしまったらしく、やり過ごすというわけにはいかなくなってしまったようだ。


「フローラ。魔法防壁が破られるまでに・・・どのくらいの時間がかかりますか?」


シュウはフローラに問いながら、腕を回したり膝を曲げたりと、柔軟体操を開始する。防壁が破られたその時は、例え勝ち目が薄かろうと戦わなければならないからだ。


(かつてドラゴン族と戦ったときは、いずれもライルかサーラの剣で首を落としての決着だった。奴らの固い皮膚には、斬撃以外の攻撃が通りにくい。私の拳などもってのほかだろう。果たしてどこまで戦えるのか・・・)


シュウはかつて『光の戦士達』として戦っていた頃の記憶を呼び覚ます。
ドラゴン族は頑丈な皮膚と巨大な肉体・・・そして筋肉を持っている最恐クラスの魔族だ。
肉体が強大なだけでなく、種族によって異なるブレス攻撃・・・例えば口から炎を吐いて攻撃してきたりなど、とにかく恐ろしい存在だ。

強力な攻撃をかいくぐり、何発も殴り込んだところで恐らくドラゴンにはろくにシュウの攻撃は通用しない。
ドラゴンの固い皮膚は、高価な武具の素材にまでなるほどの強度を持っている。シュウの素手での攻撃どころか、賢者アイラの強力な攻撃魔法とて表面を傷つけるばかりで中身には対してダメージを与えられないだろう。


(聖の魔力を拳に乗せて、それを全力で叩き込んでどうなるか・・・きっとどうにもならないんだろうなぁ)


フッと、シュウは諦めたような乾いた笑いを浮かべる。
かくなるうえは、可能性は低いが魔物じじいが牢の以上に気付いて駆けつけてくるまで時間を稼ぐしかないとシュウは思った。
きっと魔物じじいの扱いに長けた彼ならどうにかしてくれるだろう・・・知らんけど、と。

そんなことを考えるシュウを前に、フローラはう~んと唸りながら考え、少しばかり時間をかけてから質問を答えを返した。


「私の防壁が破られるまで、恐らく早くて二時間くらい・・・でしょうか」


「長いですね!」


フローラの出した答えがあまりに想像より長い時間で、シュウは安堵のため息をつく。
フローラが規格外の力を持つ聖女で良かった・・・そう思ったのだが・・・


ドォォォォォン

ゴォォォォン

ガンガンガン

ドンドンドン

カーン カーン


ドラゴンは防壁に対して熾烈な攻撃を繰り広げ続けているのか、耳をつんざくような騒音がひたすら鳴り響き続けた。それに二時間耐えるだけでも苦痛も苦痛だ。


「防壁より先に・・・魔物じじいの家が崩壊するほうが先かもしれませんね・・・なんて」


苦笑いを浮かべながらそう言うフローラの顔を見て、シュウは「やっぱり自分が出るしかないのか」と肩を落とした。
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