追放の破戒僧は女難から逃げられない

モンスターパニック

「あ、あれ・・・魔物に・・・囲まれてる？」


ミケランジェロを始め、『ゴブリン』の面々は苦笑いをしながら周囲に目を配った。

ギッシリ

そんな擬音が聞こえてきそうなほど、彼らの視界いっぱいに魔物達がいることに気付く。


「あれ・・・？檻に入ってなかった？えっ？えっ？いつの間にお外に出ていたの？えっ？」


『ゴブリン』達の困惑はもっともだ。
事前の調べでは、魔物達を閉じ込めている檻は特別中の特別製であり、完全無敵と言えるほどの強度を持つもので、「牢破りなどで勝手に魔物が出てくることはあり得ない」と結論づけていたものなのだ。
だから『ゴブリン』の面々は魔物じじい宅にいる数百の魔物との闘いなど想定していなかった。


「ちっ、どうするよ・・・」


逃げ出そうにも、魔物達で築き上げられた壁は到底すり抜けられる隙間がない。それがわかっているからこそ、皆は示し合わすことなく、自然と背中を預けあう形で円陣を組んだ。


「お前ら・・・少しばかり状況が変わった。ひとまずは生き残ることを優先しろ。この陣を乱すなよ」


ミケランジェロの緊迫した言葉に、部下達は「少しばかりじゃないでしょ！」と言いながらも、より仲間同士密着して武器を構える。


「「「ウシャーツ！！」」」


数多の魔物が一斉に『ゴブリン』達に襲いかかる。
魔物の中には中には十数メートル級のドラゴンや大蛇までいた。


「どうやって収容されてたんだよコイツら！？」


魔物じじいの迷宮は阿鼻叫喚の地獄絵図となった。




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「・・・む？」


「？どうされましたかシュウ様」


トール達どころか『ゴブリン』達も大騒ぎしていたその頃・・・
シュウ達は呑気に二人しておたのしみしようとしていたが、何やら不穏なものを感じ取ったシュウは、服を脱ぎ掛けた手を止めた。


「いえ、今・・・ここでとてつもないことが起きているような気がして・・・」


「とてつもないこと・・・ですか？」


「ええ。昔、この家に遊びに来ていたときにも、似たような感覚がありました。そう・・・あれは魔物達を閉じ込める檻を制御する仕掛けが誤作動し、全ての檻が開放されて大騒ぎしたときのような」


シュウは遠い目をして当時のことを思い出す。
そのシュウの予感は怖いほどまでに的中していた。


「いえ、まさかそのようなことが・・・」


フローラがシュウの予感はさすがに間違いだろうと部屋の戸を開け、ひょっこり廊下に顔を出す。


「えっ」


フローラの表情が固まった。
そこには通路いっぱいに立ちふさがるほどの大きさのドラゴンがいたのだから無理もなかった。