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不審者達

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アンドレアで起きた異変は、シュウ達の監視していたグレース隊も察知した。


「おい!俺が予約してた風俗店が休業してたぞ!!」


「ていうか風俗店、大体どこも休業してねぇか?」


「そのせいか・・・俺が目をつけてた立ちんぼの女の子、いつもの場所にいねぇって思ってたら、やけに客が増えて争奪戦になってるってよ」


グレース隊の男達は、風俗店休業をきっかけにして騒動に気づいた。
彼らにしてみれば風俗は遠征任務中の数少ない娯楽なのだから、異変に気付くのは一瞬だった。


「アンドレアの風俗業のほとんどは・・・クローザがオーナーみたいですな。そのクローザは調べたところ憲兵に軟禁されているとか」


騒ぐ隊員達に気づいたグレースがマートに調査を命ずると、一時間もしないうちにクローザに起きていることの情報を掴むことができた。


「クローザが軟禁?理由は?」


「それが判明されていないっすな。憲兵の上層部からの圧力ということらしいですが・・・どうもその更に上から来ているらしい・・・というところまでしか今は掴めてねぇっす」


「ふぅん・・・どうにもきな臭いな。タイミング的に考えると・・・帝国の第4皇子が動いている件が絡んでると見ていいだろう」


クローザはアンドレアの支配者層の人間だ。そのクローザに圧力を加えられる者などそうそういるものではない・・・そう考えていたグレースは、クローザ達の会話を盗み聞くことで得た情報と照らし合わせ、結論を出した。
グレースの意見に同感であるマートはコクリと頷く。


「第4皇子が動こうとしている。そしてその障害になりえるだろうクローザ達の動きを封じた・・・その可能性がある。そしてそう受け取れるような動きが、他にもあるみたいですぜ・・・クローザのことを調べているついでに、そんな情報もちらほらと」


「決まりだな。シュウ様が危ない」


グレースとマートが再度頷きあったその時であった。


「そこまでだ不審者ども!」


突然、叫び声とともに10数名の憲兵が抜刀した状態で姿を現した。
グレース隊は建物の影、屋根の上、物陰の隙間などあらゆる場所から魔物じじいの家をシュウ達にバレないように観察していたのだが、傍から見れば確かに不審者そのものだった。


「大人しくしろ。これより貴様らを逮捕する」


剣を突き付けながら隊長格らしき憲兵がそう言うと、ところどころに隠れていたグレース隊の隊員達が次々と憲兵に取り押さえられていく。
「どうします?」
困惑顔の隊員達が、グレースに目線で訴える。

グレースは察した。自分達は確かに不審者に見えたかもしれないが、タイミング的にシュウの回りにいる障害物として自分達も第4皇子に認識されたのかもしれないと。
となると、このまま黙って捕まるわけにはいかなかった。


「逃げろ」


グレースはそれだけ言ってから迫る憲兵の顔面を殴って昏倒させ、即座にその場を走り去った。それをきっかけに、グレース隊の面々はまさに蜘蛛の子を散らすように各々で逃走を開始する。


「待たんか貴様ら!!」


憲兵団の隊長が激昂して追いかけるが、グレース隊の面々は「待つかばーか」など小ばかにしながら逃げまとう。


こうしてグレース隊と憲兵の戦いの火蓋は、唐突に切って落とされたのであった。
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