追放の破戒僧は女難から逃げられない

失恋した女

シュウ達とクローザの悶着が終え、数時間経過した頃・・・
分厚い扉が閉め切られた部屋で、クローザは荒れに荒れていた。


「次、持ってきなさい！」


効果なワインをまるで水のようにガブガブとラッパ飲みし、次から次へと空にしていくクローザ。アンドレアの支配者層のそのような姿を軽々しく見せられるはずもなく、部屋にはボイドが一人いるのみで、あとは誰一人入ってくるなと厳命されていう。


「ボス・・・そろそろその辺にしておいたほうが・・・」


クローザの痛ましい姿に、ボイドは顔を引きつらせながらも気遣ってみせるが・・・


「うるさいわね！今日くらいは飲ませなさいよ。さっさと次を持ってこないと瓶で頭を叩き割るわよ！」


酔って目を座らせたクローザの迫力に、ボイドもそそくさとワインのおかわりを持ちに行く。
美貌の女傑されているクローザの見るに堪えない醜態だが、彼女からしてみれば人生で初の失恋を経験したばかりである。
ボイドもそれがわかってはいるので出来るだけクローザの好きなようにさせようとは思っているが、頭に思い浮かぶは「それなら何故昔フッたのだ？」という疑問だった。

そんな内心を透かしてか、クローザは置物のように大人しくしていたボイドに突然絡みだした。


「こんなに失恋に悔しがるくらいなら、どうしてシュウのプロポーズを断ったのか？バカじゃねーのか？どうせ、そんな風に考えているんでしょう？」


「いえ・・・決してそんなことは・・・」


まさに思っていた通りのことを指摘され、ボイドは平静を装いながらも内心はドギマギしていた。


「富が欲しくて他の男と結婚したくせに、今更ヨリを戻そうとした図々しい女だって思ってるんでしょ？わかってるわよ」


「決してそんなことは！」


「どう思われたって仕方がないわ。けどね、それには私には私なりに理由があったのよ・・・まぁ、それでも自分勝手な話よね。自分でもわかっているのよ」


ボイドの言葉は耳に入っていないのか、クローザは独り言ちるように呟いた。


「理由ですか・・・？それは、一体どのような・・・」


本来ならば黙っているべきところだが、ボイドはどうしてもクローザなりの理由とやらが気になり、つい口が滑ってしまった。気が焦ったボイドらしかぬ失態だ。
だが、クローザは酔ったせいか、場の空気に流されて「それは・・・」とボイドに対する答えを口にしようとする。

そのときだった。


「大変ですボス！」


空気を読まぬ張り上げた声がしたかと思うと、血相を変えた配下が飛び込んできた。