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観察していた者達 その4

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「まぁ、セレスティアお嬢様が・・・今更こんなことで引くわけがないわな・・・」


「アドネイド辺境伯家の家訓からして、略奪愛上等みたいなものがあった気がする・・・」


「力を重んじる家系だからな・・・」


隊員たちは自分達の主に勝手に何やら期待をし、ソワソワしだす。
少し前に流れていた神妙な空気は、いつの間にか霧散していた。


「『シュウ達の間に入り込む隙間はない』・・・確かにそう報告を上げれば、お嬢様の意思に関係なく、旦那様が任務の中止を決定するかもしれん。だが、『入り込む隙間はない』などと、それはマート・・・お前の私見だろ?」


「えっ・・・あぁ、そういえば・・・そうかも・・・?」


隊員達に問われ、マートは誘導されるがままに答える。
マートに同行していた斥候達も、そういえば・・・と言葉を濁し始めた。


「そうだな。不確定要素を報告書に上げることはできんよなぁ。入り込む隙間がないように見えたっていうのは、実際には俺の個人的な考えだしなぁ。うん。その文言は入れるべきではないな」


マートの言葉に、隊員達は「そうだそうだ」と頷く。


「そりゃそうだ。シュウはスケベだから色仕掛けであっさり鞍替えなんてことも・・・あるかもしれない」


「お嬢様の魅力があれば・・・落ちない男なんていないものな」


シュウとフローラの掛け合いの記録を見て、「入り込む隙間はない」と思っていたはずの隊員達のほとんどが、今では手のひらを反していた。
皆、セレスティアがシュウ達の間に挟み込もうとするのをギャラリーしたくて仕方がなかった。
面白そうだから・・・という、主に対して不敬な思いを抱いているのもあるが、彼らから見ても魅力的なセレスティアが本気で迫れば、シュウとフローラの熱愛にヒビを入れることも不可能ではないと信じ初めていたからだ。


「そんなわけで・・・報告書には『入り込む隙間などない』なんて文言は入れないほうがいいな。まだ諦めるような段階じゃない」


手のひらを返したマートに「お前・・・」とグレースは呟いたきり絶句した。
しかし、結局グレースはこいつら面白がってるだろ!と思いつつも、特にマート達の提言を跳ね除けるようなことはせず、無難に起きたことのみを報告書にして辺境へ送るに留める。

なんだかんだいって、グレースも任務を続けていたかったし、それにほんの少しだけ「シュウ達の間に入り込もうとするセレスティアの図」を見てみたいと思っていた。

シュウ達は自分達の知らぬところで、次なる騒乱のフラグが立てられていたのだった。
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