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観察していた者達 その2

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グレースのシュウへの狂信っぷりに、流石に部下達もこれには閉口した。
「ホモだ。あれはもうソッチの世界に踏み入れてるわ」「狂信者だ」
口々に自分達の隊長のことを悪しざまに言うが、本気で言っているわけではない。よくも悪くもこの口の悪さと気安さがグレース隊を含めた辺境伯軍の空気である。

部下達から散々に言われていたグレースだが、やがてその空気はガラリと変わることになった。
建物内部へ侵入していたマート達が戻ってきたことがきっかけだった。


「何かあったか?何だか酔っぱらった聖女フローラが男を引きずってソッチに向かっていったようだが・・・」


「いやいや、そこまで見ておいて何も無いなんて思わないでしょ!当然ながらありましたよ!本当もう、何かあったなんてもんじゃねーっすよ!」


マート達は自分達が得た情報量の多さにやや興奮しながら、一つ一つそれらをグレースに報告した。


「なんてことだ!やはりシュウ様は我々の器では測れない男だった!!」


マートからの報告を聞いたグレースは、プルプルと体を震わせたかと思うと、突然歓喜してそう叫んだ。
一応はシュウ達に見つからないように尾行している立場なのに・・・と部下達は思ったが、グレースが騒ぎたくなる気持ちもわからないでもない。


「まさか・・・クローザが本当にシュウに未練たらたらだったなんて・・・」


「フローラもそうだが、クローザの立場なら他にいい男なんていくらでも捕まえられるだろ・・・?あんな目が閉じているのか開いているのかわからないような男の何がそうさせるんだ」


「あそこがでかいのが理由か?」


「そんなんでモテるわけねーだろ」


部下達にはシュウを巡ってフローラとクローザが対立したことを聞いて、信じられないと衝撃が広がっていた。


「そういえば、俺たち以外にもシュウ達を観察している連中がいたな・・・まさか、あれはクローザの手によるものか」


「それだとしたら、シュウのために情報統制するなんてなんてことないわな・・・」


「いやまさか・・・シュウのために本当にそこまでするなんて。そこまで惚れてるなんて・・・」


シュウがそこまでモテるわけねーだろ!と決めつけていた部下達は、グレースの言葉が正解だったことに大きくショックを受けている。
世の中モテるのが不思議な人間もいるのだが、それを目の当たりにした感じだった。


「いや、シュウのこともそうだが・・・問題が一つあるぞ」


衝撃を受けていたり、歓喜したり思い思いのリアクションをしている仲間達に対し、呆れ顔でマートは言った。


「シュウとフローラ・・・想像以上にこの二人の間に誰か入り込む隙間なさそうだぞ。セレスティアお嬢様・・・どうあっても勝ち目なくないか?」


「「「あっ・・・」」」


マートの言葉に、グレース隊の面々はこの任務が『シュウがセレスティアの夫になるか相応しいか』の調査も含まれていることを思い出した。
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