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フローラの圧力 その2
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フローラと二人きり。
シュウは湯浴みに出たので、すぐには戻ってこないし、オーガ君は家事やらで大忙しでこれまた戻ってこない。
(き、気まずい・・・!)
シュウがクローザの元に行ってしまってヤケ酒を飲んだ時は、それなりにフローラと打ち解けることが出来ていたような気がするが、先ほど彼女は背筋が凍るほどの殺気をトールにぶつけていた。
そんなフローラと二人きり・・・何も起こらぬはずはなく・・・
「さぁて・・・と」
フローラは軽く伸びをしてから、自分達のいる部屋の入り口の扉をそっと閉める。
「お話しましょうか。トールさん」
トールに向けて微笑みを向けながらそう言うフローラだったが、目は笑っていなかった。
(あかん)
トールは自慢の危険察知能力で察した。ここにいてはいけないと。何があってもこの場から離れなくてはいけないと。
「ごめん、俺明日早いからもう寝るわ。おやすみ」
早口でまくし立てると、トールは高速でフローラの横を通り抜けて部屋を出ようとする。ボイドですら制したトールの神速にかかれば、そうそう彼を捉えることなどできないはずだが・・・
ドンッ
だが、そんなトールの動きを予測していたのか、フローラは手を突き出して行く手を阻む。
「ひっ!」
眼前にフローラの手が差し出されて壁に突かれると、トールは逃げ場を失われた状態になった。
「お話しましょう、と言っているんです・・・トールさん」
口調は穏やかだが、目が座っていて露骨に不機嫌さが出ているフローラに、トールは逆らう術を持たなかった。
蛇に睨まれた蛙。もはや体を動かすことも出来ない。
ガタガタと震えるトールにフッと微笑みかけると、フローラは口を開いた。
「トールさん。シュウ様にあまり余計なことは言わないでくださいね」
「えっ・・・」
表情とは裏腹に、フローラはトールに圧をかけた口調で言った。
「女難だなんて言って、まるで私といることがシュウ様の不幸そのものみたいじゃないですか。そのようにシュウ様が曲解などしてしまったら、私がご一緒することが難しくなってしまいます」
「・・・」
話が聞かれていたか・・・とトールは自分の迂闊さを呪う。
しかし、クローザとのやり取りでは、シュウはそのことも込みでフローラとの逃避行を受容していると言っていたよな?と、トールは首をかしげたくなった。
だが、トールの疑問を他所に、フローラにしてみれば万が一にもシュウの気が変わってはいけないと不安に思っていた。
権力と伝手を使い、手を尽くして外堀を埋めることでシュウはフローラと一緒に逃避行せざるを得ない状況にまでは持って行けたが、これからもそれが続くかどうかはわからない。シュウの気が変わってフローラから逃げ出すようなことがあれば、フローラにそれを防ぐ手立てはないのだ。
だから極力シュウの心変わりを防ぐように努めなければならないと、フローラは思っていた。
そのためならば、いくらか打ち解けたトールとて害することも躊躇いはない。
シュウのことは信じてはいるが、それでも不安な気持ちもあるのだ。シュウに今のフローラとの逃避行について、これ以上疑問一つでも抱かせるわけにはいかない。
「ね?お判りいただけました?」
「・・・」
トールは無言でコクコクと頷きながら、やっぱりシュウの女難の相は本当だったわと思った。
シュウは湯浴みに出たので、すぐには戻ってこないし、オーガ君は家事やらで大忙しでこれまた戻ってこない。
(き、気まずい・・・!)
シュウがクローザの元に行ってしまってヤケ酒を飲んだ時は、それなりにフローラと打ち解けることが出来ていたような気がするが、先ほど彼女は背筋が凍るほどの殺気をトールにぶつけていた。
そんなフローラと二人きり・・・何も起こらぬはずはなく・・・
「さぁて・・・と」
フローラは軽く伸びをしてから、自分達のいる部屋の入り口の扉をそっと閉める。
「お話しましょうか。トールさん」
トールに向けて微笑みを向けながらそう言うフローラだったが、目は笑っていなかった。
(あかん)
トールは自慢の危険察知能力で察した。ここにいてはいけないと。何があってもこの場から離れなくてはいけないと。
「ごめん、俺明日早いからもう寝るわ。おやすみ」
早口でまくし立てると、トールは高速でフローラの横を通り抜けて部屋を出ようとする。ボイドですら制したトールの神速にかかれば、そうそう彼を捉えることなどできないはずだが・・・
ドンッ
だが、そんなトールの動きを予測していたのか、フローラは手を突き出して行く手を阻む。
「ひっ!」
眼前にフローラの手が差し出されて壁に突かれると、トールは逃げ場を失われた状態になった。
「お話しましょう、と言っているんです・・・トールさん」
口調は穏やかだが、目が座っていて露骨に不機嫌さが出ているフローラに、トールは逆らう術を持たなかった。
蛇に睨まれた蛙。もはや体を動かすことも出来ない。
ガタガタと震えるトールにフッと微笑みかけると、フローラは口を開いた。
「トールさん。シュウ様にあまり余計なことは言わないでくださいね」
「えっ・・・」
表情とは裏腹に、フローラはトールに圧をかけた口調で言った。
「女難だなんて言って、まるで私といることがシュウ様の不幸そのものみたいじゃないですか。そのようにシュウ様が曲解などしてしまったら、私がご一緒することが難しくなってしまいます」
「・・・」
話が聞かれていたか・・・とトールは自分の迂闊さを呪う。
しかし、クローザとのやり取りでは、シュウはそのことも込みでフローラとの逃避行を受容していると言っていたよな?と、トールは首をかしげたくなった。
だが、トールの疑問を他所に、フローラにしてみれば万が一にもシュウの気が変わってはいけないと不安に思っていた。
権力と伝手を使い、手を尽くして外堀を埋めることでシュウはフローラと一緒に逃避行せざるを得ない状況にまでは持って行けたが、これからもそれが続くかどうかはわからない。シュウの気が変わってフローラから逃げ出すようなことがあれば、フローラにそれを防ぐ手立てはないのだ。
だから極力シュウの心変わりを防ぐように努めなければならないと、フローラは思っていた。
そのためならば、いくらか打ち解けたトールとて害することも躊躇いはない。
シュウのことは信じてはいるが、それでも不安な気持ちもあるのだ。シュウに今のフローラとの逃避行について、これ以上疑問一つでも抱かせるわけにはいかない。
「ね?お判りいただけました?」
「・・・」
トールは無言でコクコクと頷きながら、やっぱりシュウの女難の相は本当だったわと思った。
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