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久々に怖い後輩 ゼロ
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時は少し前にさかのぼる。
フローラは当初、強引に大出してしまったシュウを糾弾しながらも、ヤケ酒しながら一応は待つつもりだった。
だがオーガ君が作るツマミが美味だったのもあり、想定していたよりも酒が進んでしまったことによって酔いが進んでしまったことに加え、トールがボソリと発した不用意な一言がフローラの思考を変えた。
「すげー飲み食い・・・太っちゃいそうだな・・・」
トールは別にフローラに聞かせるつもりで言ったわけではなかった。無心に、ボソリと小声で呟いただけのこと。だが、それはフローラの耳に入ってしまい、大いに彼女を刺激した。
とはいえトールは出て来るツマミを次々と平らげ、「酒!飲ますにはいられません!!」と言いながら酒を飲み続けているフローラを見て、つい思ったことが口から出てしまったなのだが。
「太る・・・?私が・・・?」
パリーン
フローラは飲みかけていたワイングラスを手元から放し、地面に落として割ってしまう。
そしてガクガクブルブルと震えながら、両手で頭をボリボリと力強く掻いて俯いた。
「太る・・・そうしたら、シュウ様は私のことなんて見てくれなくなるかも・・・!」
フローラが戦慄している様を見て、トールは不謹慎にも「ショックを受けてはいるが、これで大酒飲むのを止めるかな?」などと思っていた。自分の不用意な呟きが聞かれてしまったことは誤算だったが、結果オーライになるかもと期待をしていた。
だが、残念ながらそうはならなかった。
「・・・シュウ様を連れ戻します」
唐突にフローラは立ち上がり、据わった目でそんなことを言いだした。
「は?」
「シュウ様を連れ戻して、巨乳女になど現を抜かさぬよう、私色に塗り替えます。上書きします!」
「いやいや・・・」
また話がややこしくなるじゃねぇーかとトールは嘆きたくなった。
そもそも二人はお尋ね者なのだ。シュウもそうだが、フローラは有名人故にもっと危険なのだ。
トールにしてみればどさくさに紛れて自由になれるかもしれないチャンスなのだが、人が良いのか巻き込まれ体質故の順応性の高さなのか、シュウとフローラのことを割と心から心配している。元はフローラを殺そうとしていたのに中々の切り替えの早さだった。
「落ち着きなよ・・・彼は絶対帰ってくるよ。待っていなさいって」
トールはフローラに落ち着くよう宥めるが、既にフローラは外出の用意を済ませてしまっていた。手にワインの瓶を持って。
「お、おい・・・ほんとに行くのかよ!やめなって!!」
トールは肩を掴んで止めようとするが、フローラはその手を振り切って動き始めてしまった。
それでもとトールは「失礼」と言いながらフローラを羽交い絞めにして止めようとするが・・・身体強化の魔法を使ったフローラはそれすらものともしなかった。
「お、おい・・・!ちょっと!止まれ!フローラちゃんやめろって!!」
半泣きになりながらフローラを止めようと引きずられていくトールを見ながら、オーガ君は手を振って「お気をつケテ」と言って見送った。
本能的に「今のフローラに逆らうべきではない」と悟ってのことだった。
フローラは当初、強引に大出してしまったシュウを糾弾しながらも、ヤケ酒しながら一応は待つつもりだった。
だがオーガ君が作るツマミが美味だったのもあり、想定していたよりも酒が進んでしまったことによって酔いが進んでしまったことに加え、トールがボソリと発した不用意な一言がフローラの思考を変えた。
「すげー飲み食い・・・太っちゃいそうだな・・・」
トールは別にフローラに聞かせるつもりで言ったわけではなかった。無心に、ボソリと小声で呟いただけのこと。だが、それはフローラの耳に入ってしまい、大いに彼女を刺激した。
とはいえトールは出て来るツマミを次々と平らげ、「酒!飲ますにはいられません!!」と言いながら酒を飲み続けているフローラを見て、つい思ったことが口から出てしまったなのだが。
「太る・・・?私が・・・?」
パリーン
フローラは飲みかけていたワイングラスを手元から放し、地面に落として割ってしまう。
そしてガクガクブルブルと震えながら、両手で頭をボリボリと力強く掻いて俯いた。
「太る・・・そうしたら、シュウ様は私のことなんて見てくれなくなるかも・・・!」
フローラが戦慄している様を見て、トールは不謹慎にも「ショックを受けてはいるが、これで大酒飲むのを止めるかな?」などと思っていた。自分の不用意な呟きが聞かれてしまったことは誤算だったが、結果オーライになるかもと期待をしていた。
だが、残念ながらそうはならなかった。
「・・・シュウ様を連れ戻します」
唐突にフローラは立ち上がり、据わった目でそんなことを言いだした。
「は?」
「シュウ様を連れ戻して、巨乳女になど現を抜かさぬよう、私色に塗り替えます。上書きします!」
「いやいや・・・」
また話がややこしくなるじゃねぇーかとトールは嘆きたくなった。
そもそも二人はお尋ね者なのだ。シュウもそうだが、フローラは有名人故にもっと危険なのだ。
トールにしてみればどさくさに紛れて自由になれるかもしれないチャンスなのだが、人が良いのか巻き込まれ体質故の順応性の高さなのか、シュウとフローラのことを割と心から心配している。元はフローラを殺そうとしていたのに中々の切り替えの早さだった。
「落ち着きなよ・・・彼は絶対帰ってくるよ。待っていなさいって」
トールはフローラに落ち着くよう宥めるが、既にフローラは外出の用意を済ませてしまっていた。手にワインの瓶を持って。
「お、おい・・・ほんとに行くのかよ!やめなって!!」
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それでもとトールは「失礼」と言いながらフローラを羽交い絞めにして止めようとするが・・・身体強化の魔法を使ったフローラはそれすらものともしなかった。
「お、おい・・・!ちょっと!止まれ!フローラちゃんやめろって!!」
半泣きになりながらフローラを止めようと引きずられていくトールを見ながら、オーガ君は手を振って「お気をつケテ」と言って見送った。
本能的に「今のフローラに逆らうべきではない」と悟ってのことだった。
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