追放の破戒僧は女難から逃げられない

大事な話 ×２

「シュウ。正直に言うわ。私は、力を手に入れるためにどうしても前の夫と結婚する必要があった。だけど、ずっと貴方のプロポーズを断ったことは後悔していたのよ」


クローザの告白。
だが、それは今更過ぎる話であり、シュウにとっては決して聞きたいような話ではなかった。
だから話なぞ聞かずにさっさと部屋を出て行きたいところだが、今は敵意を剥き出しにしてシュウを襲おうとしているボルドを抑えつけておかねばならない。だから動こうにも動けなかった。

とはいえ、そうだからといってクローザの話に満足に耳を傾けられるものでもなかった。


「くっ・・・ぐぐ・・・」


シュウは今のところ完全にボルドの動きを封じるように関節技をキメているが、ボルドはどうにかして抜け出せないかと体をあれこれ動かそうと足掻いている。
捻じられた腕は激痛が走っているはずだが、それにめげずに足掻こうとするボルドからは並々ならぬ執念が感じられた。


「殺してやる・・・殺してやるぞ・・・」


ブツブツと物騒な言葉を吐きながら、ボルドは執念でシュウに襲い掛かろうとしている。

これは気を抜けば拘束を解かれる－－
シュウはそう直感していた。

が・・・


「妹の幸せを奪った恨みを晴らすために、俺はいつかここにお前が現れると思って潜伏していたんだ・・・だからシュウ！お前だけは！」


「えっ」


とても気になることをボルドが口走り、シュウの意識がそっちに集中し始める。


「私は確かに他の男と結婚した。けど、体だけは許していないの。夫も歳も歳だったし、見栄えの好みなアクセサリ代わりの妻がいれば良かっただけだから納得してた。だから私の心も体は、今でもシュウだけの物よ」


「ちょっ」


クローザの方も勝手に話が盛り上がりに入っている。


「お前がいなければ、妹は今頃人並みの幸せを掴めていたはずなんだ！それをお前が！！」



「シュウ、今はまだ言えないけど、私にはどうしても力を手に入れなければいけない理由があったの。だけど今なら私は十分に力を持ってる。もう私と貴方が結ばれる障害は無いの！お願い、どうか私と」



ステレオで気になる事を聞かされて、シュウはもうどうしたら良いかわからず収拾のつかないカオスな状況となっていた。


だが、その滅茶苦茶な空気も、一人のクローザの配下の報告によって吹き飛ばされることになった。

バァン

と、扉が大破しそうなほどの勢いで開かれる。
合図があるまで何があっても入るなと、人を入れるなと人払いを厳命されていたが、血相を変えた男が息を切らしながらやってきた。


「ボス！緊急事態故に失礼します！！今、ここが襲撃を受けてます！！」