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逃がさない その3

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「あら、シュウ。もしかしてボルドに挑んでみるの?止めた方がいいわよ」


心配して止める体を装いながらも、クローザは煽る。
シュウは暴力をちらつかされて屈服する性格ではないことを、幼馴染であるクローザは良く知っていた。
一時は屈服したように見えても、その実虎視眈々と機会を伺っており、後で必ず反撃に出る。とにかく暴力に屈することを嫌うのだ。


「そうまで煽られて、黙っていられる性格ではないことはご存じでしょう?何にせよ、この状況では落ち着いてお話など出来そうにありませんしね」


クローザの警告?に微笑を浮かべて答えるシュウを見て、クローザは笑みを深める。
長く神官として生きてきたために言葉遣いこそ変わったが、それでも根っこの部分は変わってないことに、クローザは嬉しさを感じていた。


「そう。じゃあボルド、やりなさい」


嬉しさに浸るのは一瞬のこと。唐突にクローザはボルドに対してそう言った。
クローザのGOサインが出た瞬間、シュウの視界からボルドが消える。


「むっ!?」


シュウはボルドとの睨みあいの中、いつ彼が仕掛けてきてもおかしくはないと警戒していた。
クローザの戦闘開始の合図は唐突ではあったが、それでもシュウの予想の範囲内。警戒していたシュウが虚を突かれることなどなかったはずだった。

だが、シュウはボルドの姿を一瞬にして見失った。
ボルドはシュウの予想を遥かに上回る瞬足だったのだ。


バシッ


シュウがボルドの攻撃に対処できたのは、ギリギリのタイミングだった。
姿を消したと思っていたボルドは、シュウの右から現れ、裏拳を叩きこもうとしたところを捕捉された。


「っ!!」


シュウの虚を突いた初撃が完全に決まったと思っただろうボルドは、自分の裏拳があっさりといなされたことに驚愕して一瞬硬直する。
そしてこの硬直がボルドの命取りとなった。

シュウは右手でボルドの攻撃をいなした直後、即座に距離を詰めて掌底をボルドの顎に叩き込んだ。
硬直していたことで対応が遅れ、もろにボルドは攻撃を受けることになる。

ゴスッッ

軽い脳震盪を起こしたボルドがよろめくと、その機会を逃さずにシュウがトドメを仕掛ける。


「はぁっ!!」


金的、水月、喉、人中の正中線に拳の連撃を叩きこむと、ボルドは流石に耐えきれず膝を着いた。


「ぐっ!?」

ドスン

だがそこで終わらない。
シュウは動けなくなったボルドの腕を捕ると、その腕を吊り体を地面に抑えつけ、関節技を決めて完全に捕縛の体勢に入った。
関節を決められ、一切動くことができないボルドは自力でシュウの手から抜け出すことはできない。

誰が見てもわかるシュウの完全勝利だった。
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