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逃がさない
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シュウはこの場から去ると言いつつも、それでも何だかんだクローザの話に付き合った。
幼馴染として、そして元恋人としての情があったからだ。長年神官として、ある程度八方美人であることを強いられていたことも、あるいは関係あるかもしれない。
だが、シュウはクローザから感じる何とも言い難い圧を感じた瞬間、直感的にこの場を離れなければならないと判断した。
「急用を思い出しました!それでは、今日はこの辺で失礼しますね」
若干上ずった声で言いつつ、超絶にわざとらしく手をポンと打ち、シュウは一言断って部屋の元来た出口に向かって踵を返す。
少々情けないように見られそうな振る舞いだが、とりあえずシュウはこの場を離れられればそれで良かった。
「・・・おや」
シュウはクローザの返事を待たず、すぐにでも部屋を出ていくつもりだった。
だが、それを阻む者が扉の前に立っている。
「・・・」
無言でシュウを見つめながら、行く先を阻まんとしているのは、シュウより頭一つ高い長身の浅黒い男・・・クローザの側近として、常に傍に控えている者だった。
「何よシュウ。そんなに急がなくてもいいじゃない」
動きを止めたシュウにゆっくりと歩いて追い付いたクローザが、シュウの肩に手を置いて微笑を浮かべる。
「紹介するわ。彼はボルド。私の頼りになる側近よ・・・とっても強いの」
悪戯っぽい笑みでそう言うクローザに、シュウは何も答えない。
(なるほど・・・強い)
手を合わせていなくても、ボルドが相当な実力者であることにシュウは気付いていた。
優れた戦士は歩き方や立ち方などを見るだけでわかる。が、それを越えた更なる戦士は、纏うオーラだけで伝わってくると言われている。
シュウと対峙するボルドは、後者の方だとシュウは思った。
しかし、シュウが気がかりなのはボルドのその圧倒的なオーラだけではない。
(あの目・・・)
ボルドがシュウを見る目・・・感情を隠しているように見えて、その実、何かしら激しい感情を抱いているとシュウは感じ取った。それは勘だが、確信に近いものをシュウは感じている。
「シュウとはもう少し話をしたいわ。部屋からは出さないで。多少は手荒にしても良いわ」
そんなボルドの様子に気付いていないクローザは、ボルドに対してそう命じる。
ボルドは僅かに頭を下げ「ご命令のままに」と述べたが、淡々とした口調とは裏腹に、シュウを見るその目には先ほどよりも強い感情・・・憎しみが宿っているとシュウは察知した。
「客人。悲惨な目に遭いたくなければ、どうかこのお部屋からはご移動なさいませんよう。ご命令とはいえ、実のところワタクシは手加減が苦手ございます」
忠告しているようでいて挑発しているボルドの態度に、シュウは苦笑いを浮かべた。
「どうだろう、果たしてすぐに帰られるかな?」と。
幼馴染として、そして元恋人としての情があったからだ。長年神官として、ある程度八方美人であることを強いられていたことも、あるいは関係あるかもしれない。
だが、シュウはクローザから感じる何とも言い難い圧を感じた瞬間、直感的にこの場を離れなければならないと判断した。
「急用を思い出しました!それでは、今日はこの辺で失礼しますね」
若干上ずった声で言いつつ、超絶にわざとらしく手をポンと打ち、シュウは一言断って部屋の元来た出口に向かって踵を返す。
少々情けないように見られそうな振る舞いだが、とりあえずシュウはこの場を離れられればそれで良かった。
「・・・おや」
シュウはクローザの返事を待たず、すぐにでも部屋を出ていくつもりだった。
だが、それを阻む者が扉の前に立っている。
「・・・」
無言でシュウを見つめながら、行く先を阻まんとしているのは、シュウより頭一つ高い長身の浅黒い男・・・クローザの側近として、常に傍に控えている者だった。
「何よシュウ。そんなに急がなくてもいいじゃない」
動きを止めたシュウにゆっくりと歩いて追い付いたクローザが、シュウの肩に手を置いて微笑を浮かべる。
「紹介するわ。彼はボルド。私の頼りになる側近よ・・・とっても強いの」
悪戯っぽい笑みでそう言うクローザに、シュウは何も答えない。
(なるほど・・・強い)
手を合わせていなくても、ボルドが相当な実力者であることにシュウは気付いていた。
優れた戦士は歩き方や立ち方などを見るだけでわかる。が、それを越えた更なる戦士は、纏うオーラだけで伝わってくると言われている。
シュウと対峙するボルドは、後者の方だとシュウは思った。
しかし、シュウが気がかりなのはボルドのその圧倒的なオーラだけではない。
(あの目・・・)
ボルドがシュウを見る目・・・感情を隠しているように見えて、その実、何かしら激しい感情を抱いているとシュウは感じ取った。それは勘だが、確信に近いものをシュウは感じている。
「シュウとはもう少し話をしたいわ。部屋からは出さないで。多少は手荒にしても良いわ」
そんなボルドの様子に気付いていないクローザは、ボルドに対してそう命じる。
ボルドは僅かに頭を下げ「ご命令のままに」と述べたが、淡々とした口調とは裏腹に、シュウを見るその目には先ほどよりも強い感情・・・憎しみが宿っているとシュウは察知した。
「客人。悲惨な目に遭いたくなければ、どうかこのお部屋からはご移動なさいませんよう。ご命令とはいえ、実のところワタクシは手加減が苦手ございます」
忠告しているようでいて挑発しているボルドの態度に、シュウは苦笑いを浮かべた。
「どうだろう、果たしてすぐに帰られるかな?」と。
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