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かつての恋人 その2

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「あら、つれないわね。また昔みたいに仲良く出来ると思ったのに」


シュウに拒絶されたクローザは、さして気にしている様子もなく、お道化た調子でそう言った。

(何を今さら勝手なことを)

シュウは思わずそう口にしそうになったが、ギリギリのところでそれを堪え、努めて冷静に言った。


「私とクローザは既に昔とは関係が違います。それに、貴方には伴侶がいるのだから疑わしいことはするべきではありません」


再度なるシュウの拒絶。
だが、言われたクローザは怯むでもなく、悪戯っぽい笑みを浮かべながら再びシュウに歩み寄る。


「私の旦那は既に何年も前に亡くなっているわ。もうそういうのは気にしなくて大丈夫よ」


「そうですか・・・だからと言って、節度は保つべきでしょう」


クローザの夫が他界していたことに少なからず驚きはしたが、それでもシュウがその言葉でクローザに傾くことはない。
シュウは小さく溜め息をつき、これ以上この話題は引きずって調子を狂わされてはたまらないと、さっさと本題を切り出すことにした。


「それで、暗号を使ってまで私をここに呼び出した理由はなんですか?昔話をしたいだけなら、申し訳ありませんが、今日はこれで失礼させていただきます」


シュウは半身を部屋の入口に向け、「関係ない話が続くなら帰るぞ」という意思表示を見せる。だがクローザはとぼけたように普通に話を続けた。


「あら?昔の知り合いのシュウが折角帰郷したと聞いて話がしたいと思ったのだけど、駄目だったかしら?」


(駄目に決まっている!)
シュウは心の中で叫ぶが、それを表情にすら出すことなく、平静を装って答える。


「・・・すみませんが、今は取り込んでいるところでして。正直あまりそういう余裕がないのです。また機会があればそのときにでも」


またまたシュウによる遠まわしな拒絶。とはいえ半分は本音だ。
本当は外に出るのだってリスクがあるのだ。それを押してここまで来たというのに、ほじくり返したくない昔話などしたくはなかった。
それもフローラの反対を押し切って出てきているので、後がとても怖いまである。


(一体何を考えている・・・?)


シュウにはクローザの考えがわからない。


「やれやれ・・・困ったわね」


取り付く島もないシュウに、クローザは眉尻を下げる。

・・・が、それも一瞬のことで、彼女は引くことはなかった。
それどころか踏んではいけないスペースを踏んできた。


「私がプロポーズを断ったこと、まだ気にしているの?」


「・・・」


ズドーーーーンと、ド直球に突っ込んできたクローザに、呆然としてシュウは口を半開きにして固まった。

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