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平穏の終わり その4
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苦労人トールの有難いお説教?によって、肩の力がいくらか抜けたシュウ。
とはいえ、ルドルフという大人物に狙われているという事実は変わらない。
食事を終えてティータイムでも、ぬるーくルドルフに関しての話し合いは続いた。
「ルドルフ殿下ですかぁ・・・フローラに強く執着していたのでしょうか。私は面識がありませんから、恐らく恨みの類は買っていないはずです」
シュウの言葉を聞いて、フローラはう~んと唸って思い出すような仕草をする。
「そう言えば・・・最初に私に婚約を打診してきたのがルドルフ殿下だったような・・・気が・・・します?」
「・・・何故に曖昧なんですか?」
「ルドルフ殿下に全く興味ありませんでしたから、気にも留めていなかったのです。当時から私の心は既にシュウ様の物になっておりました」
フローラの脳裏に、おぼろげながらかつてレウスが「皇子殿下婚約の打診をして来たぞ!喜べ!」と興奮してフローラに話をしてきたときのことが思い出された。
このときにレウスが「これほど食い気味に皇子が婚約を打診してくるのなら、やり方によってはより上位の相手を見つけることも可能なのでは」と欲を出さなければ、シュウ達が駆け落ちしたとてその後のフォローのために今ほど苦労することはなかっただろう。
「・・・それでは、殿下との面識は?」
「どうだったでしょうか?あまり記憶に留まっておりません・・・申し訳ありません。ですが記憶に無いということは、面識があったとしてもほとんど大したものではなかった程度だったのではないでしょうか」
第4といえど皇子であるルドルフとの面識があったかどうかも覚えていないなんて、どれだけ目の肥えた女だよ!と、話を聞いていたトールは思った。
(利用価値があれば人脈のために懇意にしただろうし、きっとそう考えることすらなかった相手だったのよね、うん)
あまり記憶にはないが、記憶に無いということは心底どうでも良い相手だったのだろうなとフローラは自分の中で再確認をする。
はっきり言ってしまえば、フローラにとってシュウ以外の男は「利用価値があるかないか」でしかない。
嫌な女かもしれないが、可及的速やかに、かつ確実にシュウを自分に物にしたいと画策し、行動していたフローラにとって、他の男と必要以上に懇意にすることは時間の無駄であるし、何よりシュウ自身に誤解される可能性があるために避けたいことであった。
「なら、駆け落ちされたことが皇子としてのプライドを傷つけた・・・とか、そんなところじゃないか?」
トールが無難な結論を出すと、シュウもフローラも「そうかも」と頷いた。
実際のところは 異常なまでにルドルフがフローラに執着しているのだが、それをシュウ達が知るはずもない。
「皇族の嫁候補を横からかっさらっていったんだからなぁ・・・そりゃ、捕まえて拷問したのちに極刑にしたくても仕方がないよな・・・うん」
トールが渋面しながらそう言うと、シュウは何も言えなくなる。
伴侶に迎えたい人間をかっさらわれた人間の立場からしたら、シュウの存在は憎くて仕方がないはずだろうと。
そんなシュウの心を察してか、トールがバシバシとシュウの肩をたたきながら言った。
「気にするなよ。フローラちゃんとは合意の上で駆け落ちしたんだろ?こういうのはさらわれた人間を自分の元に留めておけなかった男の側が悪い!」
「まぁ・・・」
実際、フローラはルドルフのことなど気にもかけていなかった。
シュウとの駆け落ちが実現せず、もしレウスが用意した婚約者と結婚することがあっても、認識阻害の魔法を使ってでも白い結婚までに留めておこうと考えていたくらいである。
「けどまぁ、そういうのって皇族には関係ないかなぁ?プライド優先だろうし。相手が悪かったなぁ。あはは・・・」
「それ言うなら最初からフォローする必要ありませんでしたよね!?」
シュウが笑っているトールに詰めよっていると、そこに何やら一枚の紙を持ってきたオーガ君がやってきた。
「すみマセン。こんなものが先ほど郵便受けに入っテいたのですガ・・・」
「ん?」
紙を受け取って目を通したシュウは、表情を硬直させることになった。
とはいえ、ルドルフという大人物に狙われているという事実は変わらない。
食事を終えてティータイムでも、ぬるーくルドルフに関しての話し合いは続いた。
「ルドルフ殿下ですかぁ・・・フローラに強く執着していたのでしょうか。私は面識がありませんから、恐らく恨みの類は買っていないはずです」
シュウの言葉を聞いて、フローラはう~んと唸って思い出すような仕草をする。
「そう言えば・・・最初に私に婚約を打診してきたのがルドルフ殿下だったような・・・気が・・・します?」
「・・・何故に曖昧なんですか?」
「ルドルフ殿下に全く興味ありませんでしたから、気にも留めていなかったのです。当時から私の心は既にシュウ様の物になっておりました」
フローラの脳裏に、おぼろげながらかつてレウスが「皇子殿下婚約の打診をして来たぞ!喜べ!」と興奮してフローラに話をしてきたときのことが思い出された。
このときにレウスが「これほど食い気味に皇子が婚約を打診してくるのなら、やり方によってはより上位の相手を見つけることも可能なのでは」と欲を出さなければ、シュウ達が駆け落ちしたとてその後のフォローのために今ほど苦労することはなかっただろう。
「・・・それでは、殿下との面識は?」
「どうだったでしょうか?あまり記憶に留まっておりません・・・申し訳ありません。ですが記憶に無いということは、面識があったとしてもほとんど大したものではなかった程度だったのではないでしょうか」
第4といえど皇子であるルドルフとの面識があったかどうかも覚えていないなんて、どれだけ目の肥えた女だよ!と、話を聞いていたトールは思った。
(利用価値があれば人脈のために懇意にしただろうし、きっとそう考えることすらなかった相手だったのよね、うん)
あまり記憶にはないが、記憶に無いということは心底どうでも良い相手だったのだろうなとフローラは自分の中で再確認をする。
はっきり言ってしまえば、フローラにとってシュウ以外の男は「利用価値があるかないか」でしかない。
嫌な女かもしれないが、可及的速やかに、かつ確実にシュウを自分に物にしたいと画策し、行動していたフローラにとって、他の男と必要以上に懇意にすることは時間の無駄であるし、何よりシュウ自身に誤解される可能性があるために避けたいことであった。
「なら、駆け落ちされたことが皇子としてのプライドを傷つけた・・・とか、そんなところじゃないか?」
トールが無難な結論を出すと、シュウもフローラも「そうかも」と頷いた。
実際のところは 異常なまでにルドルフがフローラに執着しているのだが、それをシュウ達が知るはずもない。
「皇族の嫁候補を横からかっさらっていったんだからなぁ・・・そりゃ、捕まえて拷問したのちに極刑にしたくても仕方がないよな・・・うん」
トールが渋面しながらそう言うと、シュウは何も言えなくなる。
伴侶に迎えたい人間をかっさらわれた人間の立場からしたら、シュウの存在は憎くて仕方がないはずだろうと。
そんなシュウの心を察してか、トールがバシバシとシュウの肩をたたきながら言った。
「気にするなよ。フローラちゃんとは合意の上で駆け落ちしたんだろ?こういうのはさらわれた人間を自分の元に留めておけなかった男の側が悪い!」
「まぁ・・・」
実際、フローラはルドルフのことなど気にもかけていなかった。
シュウとの駆け落ちが実現せず、もしレウスが用意した婚約者と結婚することがあっても、認識阻害の魔法を使ってでも白い結婚までに留めておこうと考えていたくらいである。
「けどまぁ、そういうのって皇族には関係ないかなぁ?プライド優先だろうし。相手が悪かったなぁ。あはは・・・」
「それ言うなら最初からフォローする必要ありませんでしたよね!?」
シュウが笑っているトールに詰めよっていると、そこに何やら一枚の紙を持ってきたオーガ君がやってきた。
「すみマセン。こんなものが先ほど郵便受けに入っテいたのですガ・・・」
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