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平穏の終わり その2
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「だ・・・ダイヨンオージルドルフ・・・?誰だかわかりませんが、随分と紛らわしい名前ですね」
「第4皇子ルドルフ。帝国ドレークの現皇帝ノ・・・」
「聞きたくない聞きたくない!」
現実逃避のあまり、ルドルフの名を聞いたことをすっとぼけようとしたシュウに、オーガ君が律儀に修正しようとしたところ・・・シュウは理解を拒んで両耳を塞ぎ叫び出す。
(皇族が狙っている!?いや・・・白金の騎士団が出てきたのだから、それくらいのことがあってもおかしくはないが・・・教会に狙われ、逆恨みの先輩に狙われ、白金の騎士団に狙われ、高位魔族に狙われ、そして今度は皇族!!?いや、覚悟はしていたけど、実際に来るとなるとちょっと・・・??)
シュウの思考はグルグルと混沌の渦を描いていた。
ドッと冷や汗が滝のように流れ、体の震えが止まらない。
「ありゃ、アンタ洩らしちまったのかね。そりゃまぁ、相手が相手だから気持ちはわかるけどねぇ」
シュウが股間を濡らしていることに気付いたトールが、眉を下げながらやれやれと首を振って言う。
「これはこぼした紅茶ですよ!まぁ、正直失禁しそうなほどの衝撃が走ってますけど」
「まぁ、世界に名だたる聖女サマをかどわかして逃げたとなっちゃこうもなるよね。さっさと遠くまで逃げればいいのに、どうしてこんなところでノンビリしてたんだ?」
「それは・・・」
トールの問いかけに、シュウは口を噤む。
「世界秩序を乱しかねない人造スライムの研究のため」というのは現段階では関係者以外には最高機密にすべき話であるが、そうでなくてもどうしてシュウはここまで自分がこの問題に取り組んでいるのだ?という疑問が頭をもたげる。
スライム問題を放置して逃げれば、一時的にはもしかしたら追手を振り切って平穏な生活が送れるかもしれない。
だが、十数年・・・早ければ数年後には、スライムを使った暗殺が横行し、世界秩序が乱れる可能性があった。
とはいえ、いくらシュウの理想のスローライフは乱世の中には無い、と考えての行動だったとしても、勇者でも何でもないシュウにははっきり言って身の丈に余る問題なのだ。
これはシュウもここまで来ておきながら、ずっとモヤモヤしていたことだった。
(本当に・・・どうして自分はこんなことをしているのだろう)
シュウとフローラは追われる身だ。それもとびきり危険な連中に追われている。
善行のために寄り道している暇など本来なら無いのだ。
そして今、懸念通りに新たな追跡者がエントリーした・・・皇族という、最低最悪の追跡者である。
さっさと逃げればせめてルドルフが追跡者であるという事実を知らなくて今よりは楽だったかもしれないものを・・・
(はぁ・・・どうして自分は・・・)
意味の無い自問自答をしているシュウ。
フローラが助け船を出そうかと口を開きかけたそのとき、トールはあっけらかんと言った。
「まぁ、どうして・・・なんて、自分でも理由がわかんないことばっかやりがちだよなぁ人生ってもんは。俺だってなんでこんなことしてるのかわからなくなるよ。・・・けどまぁ、何もかも合理的に計画通りで生きていくより、面白くていいってこともあるんじゃね?」
「えっ・・・」
「あれやった、これやっちまった、って悩んでたって仕方ねぇよな。なるようにしかならねぇよ。正解なんてもんは多分ねぇんだし、そういうのがあるんなら世の中で頭の良いやつで破滅する奴はゼロってことになる。でも、現実はそうじゃねぇだろ?」
トールの言葉は、シュウの心に深く突き刺さった。
「第4皇子ルドルフ。帝国ドレークの現皇帝ノ・・・」
「聞きたくない聞きたくない!」
現実逃避のあまり、ルドルフの名を聞いたことをすっとぼけようとしたシュウに、オーガ君が律儀に修正しようとしたところ・・・シュウは理解を拒んで両耳を塞ぎ叫び出す。
(皇族が狙っている!?いや・・・白金の騎士団が出てきたのだから、それくらいのことがあってもおかしくはないが・・・教会に狙われ、逆恨みの先輩に狙われ、白金の騎士団に狙われ、高位魔族に狙われ、そして今度は皇族!!?いや、覚悟はしていたけど、実際に来るとなるとちょっと・・・??)
シュウの思考はグルグルと混沌の渦を描いていた。
ドッと冷や汗が滝のように流れ、体の震えが止まらない。
「ありゃ、アンタ洩らしちまったのかね。そりゃまぁ、相手が相手だから気持ちはわかるけどねぇ」
シュウが股間を濡らしていることに気付いたトールが、眉を下げながらやれやれと首を振って言う。
「これはこぼした紅茶ですよ!まぁ、正直失禁しそうなほどの衝撃が走ってますけど」
「まぁ、世界に名だたる聖女サマをかどわかして逃げたとなっちゃこうもなるよね。さっさと遠くまで逃げればいいのに、どうしてこんなところでノンビリしてたんだ?」
「それは・・・」
トールの問いかけに、シュウは口を噤む。
「世界秩序を乱しかねない人造スライムの研究のため」というのは現段階では関係者以外には最高機密にすべき話であるが、そうでなくてもどうしてシュウはここまで自分がこの問題に取り組んでいるのだ?という疑問が頭をもたげる。
スライム問題を放置して逃げれば、一時的にはもしかしたら追手を振り切って平穏な生活が送れるかもしれない。
だが、十数年・・・早ければ数年後には、スライムを使った暗殺が横行し、世界秩序が乱れる可能性があった。
とはいえ、いくらシュウの理想のスローライフは乱世の中には無い、と考えての行動だったとしても、勇者でも何でもないシュウにははっきり言って身の丈に余る問題なのだ。
これはシュウもここまで来ておきながら、ずっとモヤモヤしていたことだった。
(本当に・・・どうして自分はこんなことをしているのだろう)
シュウとフローラは追われる身だ。それもとびきり危険な連中に追われている。
善行のために寄り道している暇など本来なら無いのだ。
そして今、懸念通りに新たな追跡者がエントリーした・・・皇族という、最低最悪の追跡者である。
さっさと逃げればせめてルドルフが追跡者であるという事実を知らなくて今よりは楽だったかもしれないものを・・・
(はぁ・・・どうして自分は・・・)
意味の無い自問自答をしているシュウ。
フローラが助け船を出そうかと口を開きかけたそのとき、トールはあっけらかんと言った。
「まぁ、どうして・・・なんて、自分でも理由がわかんないことばっかやりがちだよなぁ人生ってもんは。俺だってなんでこんなことしてるのかわからなくなるよ。・・・けどまぁ、何もかも合理的に計画通りで生きていくより、面白くていいってこともあるんじゃね?」
「えっ・・・」
「あれやった、これやっちまった、って悩んでたって仕方ねぇよな。なるようにしかならねぇよ。正解なんてもんは多分ねぇんだし、そういうのがあるんなら世の中で頭の良いやつで破滅する奴はゼロってことになる。でも、現実はそうじゃねぇだろ?」
トールの言葉は、シュウの心に深く突き刺さった。
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