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ゴブリン その3

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「やぁ、ミケランジェロ。隊員達の様子はどうだ?問題はないか?」


ルドルフは宿屋に『ゴブリン』のリーダーを呼び出した。
隊員達からヘッドと呼ばれていたリーダーの男・・・ミケランジェロは、粗野な見た目に似つかわしくなどに、恭しく礼をして入室する。


「・・・やはり、なんだか似合わないね、この名前」


「ほっといてくだせぇ」


名前のことに触れられ、口を曲げてフンと鼻を鳴らして不機嫌そうにするミケランジェロ。それを見て近衛騎士や侍従は睨みつけるが、ルドルフ自体は気にする様子もない。
これはルドルフとミケランジェロが気の知れた間柄である故だった。


「隊員達の様子をお聞きになりましたね?隊員達は今、街で見つけた生きの良い男を見つけてハッスルしてますわ。もし面倒事になっちまうようなら、また後始末の方よろしく頼みますわぁね」


ミケランジェロが名前のことを弄られた意趣返しとばかりに、意地悪そうに笑って言う。
『ゴブリン』の隊員達は、たびたび問題を起こし、都度ルドルフが権力を用いて後始末を行って来た。


「あぁ、その程度のこと。いつものことじゃないか。隊員達が元気なのは良い事だね。作戦時のコンディションが良いならそれに越したことはない」


ルドルフはどこまで本気なのか、いつものことだと意に介した様子もなく答える。
『ゴブリン』は問題行動をたびたび起こすが、それでも依頼された仕事は確実にこなしてきたので、皇室も彼らを見捨てることなくバックアップをしてきた。


(くっ・・・!こいつら、どこまで皇室に泥を塗るような真似を・・・っ!)


近衛騎士達は忌々し気にミケランジェロを睨みつける。

仕事は出来るが、皇室に対する敬意に欠け、つくづく品の無い『ゴブリン』の連中は、皇室に忠誠を誓い、誇りをもって職務に当たっている者達からすれば、嫉妬や侮蔑の対象ですらあった。

だが、そんな彼らも『ゴブリン』の仕事を見るとどうしても口を閉ざさざるを得ない。


「それはそうと、作戦遂行に当たって魔物じじいの家の間取りをざっくりと調べてきた」


ミケランジェロはそう言うと、バサリと幾枚もの書類をルドルフの近くにあるテーブルの上に置いた。
魔物じじいは数百・・・あるいはそれを越える数の魔物を飼育していると言われているが、地上から見える小さな小屋の地下は、想像だにしえないほどの広大な地下迷宮が広がっている予想されていた。
ミケランジェロはその地下のマップを持って来たのだ。


「ほぉ・・・よく調べたね」


マップに目を通しながら、ルドルフが感嘆の声を上げる。

偏屈で人を寄せ付けず、家に滅多に人を招き入れることのない魔物じじいの家の間取りを、ミケランジェロ率いる『ゴブリン』は手に入れていた。

それは魔物じじいの地下迷宮を施工した業者から盗み、手に入れたもの。
それも施工業者は各所により魔物じじいの気分によって国ごと変えるため、関わった業者の数は数十にも及ぶ。そして魔物じじいの家の施工時の図面はいずれの業者からとっても最高機密扱いであり、厳重保管されているはずなのである。
それらを全て手に入れてきたことに、近衛騎士達は唖然とせざるを得なかった。
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