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卑屈な男マルス
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「よ、ようこそいらっしゃいました・・・事前にお知らせいただけましたら、盛大におもてなしさせて頂けたのですが・・・」
柄にもなく、マルスが恭しく礼をして歓迎した相手は、ドレーク帝国第4皇子ルドルフであった。かつて帝都でレウス司教がシュウ達の断罪の鑑賞会を開催した際、現場にいた男である。
(な、なんで帝国の第4皇子がこんなところに来るんだ!?)
表向きでは歓迎しつつも、突如に現れたルドルフに対してマルスは大きく焦っていた。自分が相手をするには雲の上過ぎる相手である上に、ルドルフがやってくる理由が全く理解できないからだ。
そして、この場での対応に間違いがあると後々自分の立場を脅かすことになるので、マルスからしてみればルドルフは疫病神みたいなものであった。
「なに、少しばかり用件があっただけのこと。それより私はお忍びで来ているので、あまり派手な歓待も困るのだ」
ルドルフは涼しい顔でそう言った。
寒気がするほどの美男子であり、お茶を用意したシスターもうっとりと見惚れている。
(ちっ)
マルスはシスターのその様子を見て、内心舌打ちしたい気持ちだった。マルスは端正な顔立ちをした男が大嫌いだ。
不摂生で弛んだ体、吹き出物が多い顔・・・マルスは自分の容姿にコンプレックスを抱いているからだ。
マルスは金で手に入れた力で欲しい女は無理矢理にでも抱いてきたが、その実、本当の意味で相手の心を手に入れたことはない。それは自分の容姿が理由であるとしか、マルスは考えたことがなかった。
そうした卑屈な思考、それに反した傲慢な言動が人を寄せ付けない理由なのだが、それがわかっていない。それを指摘する者すらいない。
寂しさのあまり権力を使って女を抱いても抱いても寂しい気持ちが拭えず、その裏返しで更に海水を飲み続けるかのように歪んだ感情に任せて情事を繰り返しているのだ。
無論、そうすることで人心はどんどんマルスから離れていき、負のスパイラルに陥っていく。
ルドルフのような男は違うよなぁ、などとマルスは考える。
自分が逆立ちしても手に入れられないものを、その容姿だけで容易く手に入れることが出来る。
大した苦労もなく女が寄ってきて、いくらか失敗して一時的に女が離れたとしても、心の持ちよう一つですぐに戻ってくる。美しいことはそれだけで有利なのだ。
(そう・・・シュウもそうだったなぁ・・・)
マルスはシュウのことを思い出す。
閉じているのか開いているのかわからない細い目ではあったが、男の前な顔立ちで体はスラリとしていた。
シスターもそうだが、マルスに与しない人間の心を掴み、人気があった。恋人だっていた。
自分が持っていないものを持っていた。
だからこそ余計に敵意を持っている。
(あぁ~、ムカつくぜ。この男は、イケメンであることに加えて皇族だしな)
皇族・・・そう、皇族・・・
って、皇族・・・!
マルスはここで唐突に思考の海から這い上がった。
相手は皇族。
ワンミスで自分の首が飛ぶようなこの状況で、気が付いたら卑屈な考えに浸ってしまっていたと、今更になって気が付いた。
「・・・というわけで、今の私は公人としての訪問をしているわけではない。だから、この教会で目についたものだって特に口外するつもりはない」
会話の途中で意識が戻ったが、どうやら繋げられるところにいるようだとマルスは胸を撫で下ろす。
教会の不都合な部分を見られて気にかけられていることなど、気にも留めていなかった。
だから、この後にルドルフに持ちかけられた話は、マルスの心臓を鷲掴みにするほどの衝撃を与えた。
柄にもなく、マルスが恭しく礼をして歓迎した相手は、ドレーク帝国第4皇子ルドルフであった。かつて帝都でレウス司教がシュウ達の断罪の鑑賞会を開催した際、現場にいた男である。
(な、なんで帝国の第4皇子がこんなところに来るんだ!?)
表向きでは歓迎しつつも、突如に現れたルドルフに対してマルスは大きく焦っていた。自分が相手をするには雲の上過ぎる相手である上に、ルドルフがやってくる理由が全く理解できないからだ。
そして、この場での対応に間違いがあると後々自分の立場を脅かすことになるので、マルスからしてみればルドルフは疫病神みたいなものであった。
「なに、少しばかり用件があっただけのこと。それより私はお忍びで来ているので、あまり派手な歓待も困るのだ」
ルドルフは涼しい顔でそう言った。
寒気がするほどの美男子であり、お茶を用意したシスターもうっとりと見惚れている。
(ちっ)
マルスはシスターのその様子を見て、内心舌打ちしたい気持ちだった。マルスは端正な顔立ちをした男が大嫌いだ。
不摂生で弛んだ体、吹き出物が多い顔・・・マルスは自分の容姿にコンプレックスを抱いているからだ。
マルスは金で手に入れた力で欲しい女は無理矢理にでも抱いてきたが、その実、本当の意味で相手の心を手に入れたことはない。それは自分の容姿が理由であるとしか、マルスは考えたことがなかった。
そうした卑屈な思考、それに反した傲慢な言動が人を寄せ付けない理由なのだが、それがわかっていない。それを指摘する者すらいない。
寂しさのあまり権力を使って女を抱いても抱いても寂しい気持ちが拭えず、その裏返しで更に海水を飲み続けるかのように歪んだ感情に任せて情事を繰り返しているのだ。
無論、そうすることで人心はどんどんマルスから離れていき、負のスパイラルに陥っていく。
ルドルフのような男は違うよなぁ、などとマルスは考える。
自分が逆立ちしても手に入れられないものを、その容姿だけで容易く手に入れることが出来る。
大した苦労もなく女が寄ってきて、いくらか失敗して一時的に女が離れたとしても、心の持ちよう一つですぐに戻ってくる。美しいことはそれだけで有利なのだ。
(そう・・・シュウもそうだったなぁ・・・)
マルスはシュウのことを思い出す。
閉じているのか開いているのかわからない細い目ではあったが、男の前な顔立ちで体はスラリとしていた。
シスターもそうだが、マルスに与しない人間の心を掴み、人気があった。恋人だっていた。
自分が持っていないものを持っていた。
だからこそ余計に敵意を持っている。
(あぁ~、ムカつくぜ。この男は、イケメンであることに加えて皇族だしな)
皇族・・・そう、皇族・・・
って、皇族・・・!
マルスはここで唐突に思考の海から這い上がった。
相手は皇族。
ワンミスで自分の首が飛ぶようなこの状況で、気が付いたら卑屈な考えに浸ってしまっていたと、今更になって気が付いた。
「・・・というわけで、今の私は公人としての訪問をしているわけではない。だから、この教会で目についたものだって特に口外するつもりはない」
会話の途中で意識が戻ったが、どうやら繋げられるところにいるようだとマルスは胸を撫で下ろす。
教会の不都合な部分を見られて気にかけられていることなど、気にも留めていなかった。
だから、この後にルドルフに持ちかけられた話は、マルスの心臓を鷲掴みにするほどの衝撃を与えた。
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