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怒り
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「ちっ・・・馬鹿が。先走りやがってこれからどうしてくれるんだ」
マルスが戻ってから十数分後・・・ボコボコに顔を腫らしたダレウスが床の上で正座し、それを拳に僅かに血を付着させたマルスが見下ろしていた。
結局、ダレウスは覚悟を決めてトールに独断で依頼したことを白状したわけだが、当然これにマルスが激昂。ひらすらダレウスを殴りつけていたが、息が切れて体が動かなくなってからようやく折檻が終わった。
ダレウスの先走りは今に始まったことではないが、結果さえ伴えばなぁなぁで許して貰えてはいた。
トールならば失敗することはない。だから今回も大丈夫だろうと考えていたダレウスの目論見は、いつまで待っても結果報告が来ない今となっては失敗したと考えたほうが自然だろう。
自分の意向を無視した挙句、手駒にしようと考えていたトールを失ったかもしれないこの状況に、マルスは怒りを抑えることが出来なかった。
マルスとて折角自分の手の届く範囲にシュウがいるこの状況を、ただただ指を咥えて見ているだけのつもりはなかった。トールのような優秀な仕事人を何人も集め、万全を期してから取り掛かるつもりだったのだ。
魔物じじいの家には警護がついているのは知っていたが、それについては他にも人を多数動員してかく乱でもしようかと考えていた。
時間をかけてコツコツと準備していこうと思ったのに、まさかの部下の愚行によりそれが台無しになったのだから、癇癪持ちのマルスでなくても殴りつけたくもなるだろう。
「お言葉ですが、トールは優秀な男です。しくじったとは限りません・・・」
ジャガイモのような顔になるまで顔を腫らしながらも、苦し紛れにそう言うダレウスに対して、マルスは深く溜め息をついた。
「さっき様子見のために、一人魔物じじいの所へ商人を装って遣わした。そしたらシュウ達らしき者が出てきたようだ。どうやらお前の作戦は失敗だよ」
無慈悲な現実を突きつけられ、ダレウスは押し黙るしかなかった。
「優秀な戦力を失ったばかりか、余計な警戒までさせるようになってしまっただろうし、本当に裏目も裏目に出たって感じだな。本当どうしてくれようか?なぁ、ダレウス」
鼻息荒く、血走った目でダレウスを見据えるマルス。
だが、内心ダレウスもマルスに怒りを感じていた。マルスの私怨のために、あれこれ精神をすり減らされている自分の身にもなってみろと言いたかった。さっさとシュウとの因縁を終わらせ、ダレウスも楽になりなかったのだ。
マルスもダレウスも悶々と苛立ちを募らせていたそのとき、一人の神官が血相を変えて執務室の扉を開いた。
「大変です!て、帝都から客人がっ!!」
「ぁ?」
「皇族です!皇族が・・・お忍びでやってこられました・・・!」
「な、なにぃ!?」
唐突なる客人に、今度はマルスが顔面を蒼白にした。
マルスが戻ってから十数分後・・・ボコボコに顔を腫らしたダレウスが床の上で正座し、それを拳に僅かに血を付着させたマルスが見下ろしていた。
結局、ダレウスは覚悟を決めてトールに独断で依頼したことを白状したわけだが、当然これにマルスが激昂。ひらすらダレウスを殴りつけていたが、息が切れて体が動かなくなってからようやく折檻が終わった。
ダレウスの先走りは今に始まったことではないが、結果さえ伴えばなぁなぁで許して貰えてはいた。
トールならば失敗することはない。だから今回も大丈夫だろうと考えていたダレウスの目論見は、いつまで待っても結果報告が来ない今となっては失敗したと考えたほうが自然だろう。
自分の意向を無視した挙句、手駒にしようと考えていたトールを失ったかもしれないこの状況に、マルスは怒りを抑えることが出来なかった。
マルスとて折角自分の手の届く範囲にシュウがいるこの状況を、ただただ指を咥えて見ているだけのつもりはなかった。トールのような優秀な仕事人を何人も集め、万全を期してから取り掛かるつもりだったのだ。
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「お言葉ですが、トールは優秀な男です。しくじったとは限りません・・・」
ジャガイモのような顔になるまで顔を腫らしながらも、苦し紛れにそう言うダレウスに対して、マルスは深く溜め息をついた。
「さっき様子見のために、一人魔物じじいの所へ商人を装って遣わした。そしたらシュウ達らしき者が出てきたようだ。どうやらお前の作戦は失敗だよ」
無慈悲な現実を突きつけられ、ダレウスは押し黙るしかなかった。
「優秀な戦力を失ったばかりか、余計な警戒までさせるようになってしまっただろうし、本当に裏目も裏目に出たって感じだな。本当どうしてくれようか?なぁ、ダレウス」
鼻息荒く、血走った目でダレウスを見据えるマルス。
だが、内心ダレウスもマルスに怒りを感じていた。マルスの私怨のために、あれこれ精神をすり減らされている自分の身にもなってみろと言いたかった。さっさとシュウとの因縁を終わらせ、ダレウスも楽になりなかったのだ。
マルスもダレウスも悶々と苛立ちを募らせていたそのとき、一人の神官が血相を変えて執務室の扉を開いた。
「大変です!て、帝都から客人がっ!!」
「ぁ?」
「皇族です!皇族が・・・お忍びでやってこられました・・・!」
「な、なにぃ!?」
唐突なる客人に、今度はマルスが顔面を蒼白にした。
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