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変な人ばかり
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「依頼を出した人間についてはわかりました。それで・・・トールについて他にはわかりましたか?」
襲撃の黒幕についてはあくまで淡泊な反応で終わり、他に興味の湧いて来たトールについてシュウは質問をした。
「トールは元来臆病な性格で争いごとは大の苦手でしたガ、駆け落ち相手のメイド・・・今のトールの妻がいろいろとやらかしたお陰デ剣で生計を立てねばならなくナリ、剣の道に進みマス」
やっぱり面白いじゃないか、とシュウは興味深げに頷いて聞き入った。
「『痛み』を極度に嫌イ、先の先で攻撃して制することデ、『痛み』を経験するコトなく渡り合ってきましタ。妻のやらかしのお陰で冒険者ギルドは永久出禁になってオリ、正確な評価は出来ませんが、恐らく総合的な実力はA級くらいあるようデス。近接戦闘能力だけナラ、間違いなくS級デショウ」
「フローラの拘束魔法の罠を仕掛けておいたのは、大正解だったということですね・・・」
正面から戦っては、正直なところ勝ち目があるとは思えないなとシュウは苦笑いを浮かべる。
魔物じじいの忠告があったので一応襲撃を警戒するようになったのだが、それがトールの襲撃を跳ね除けることに繋がったのである。
魔物じじいの言葉が無ければ、追われる身とて流石に不可侵の領域である魔物じじいの家で荒事が起きるとは考えなかったであろう。シュウは魔物じじいに感謝の念を抱かずにはいられない。
「というか、この人の奥さんはとても酷い悪妻ですね。なんだか少し可哀想な気がしてきました・・・」
トールのことを聞いたフローラは、あまりの壮絶な内容に憐憫の目を床に横たわっているトールに向ける。
トールの悪妻を非難してはいるが、シュウを謀略により借金漬けにし、実質自分の所有物にしてしまった自分のことなど棚に上げていた。
「イえ、実際のところはそうでもないカモしれません。トールという男・・・『痛み』を怖がってはいまスが、自覚が無いだけで実のところ大の『マゾ』のようデス。痛みを怖がっているのは恐らくその裏返しですネ。酷い目には何度も遭っていますが、妻にはむしろトールの方が依存しているようデス」
「えぇ・・・」
「人の愛にはいろいろな形がありマスね・・・」
ヒきながらトールを見下ろすフローラとは逆に、魔物であるのに何だか人間のような言葉をしみじみと語るオーガ君。
シュウが横たわっているトールを見下ろすと、トールは涎を垂らしながら幸せそうに白目を剥いて息を荒くしていた。
なるほど、確かにマゾなのかもしれない・・・シュウはそう考えていたが・・・
「・・・」
余りに恍惚そうにしているトールを見て、「そ、そんなに気持ち良いのか?」とちょっぴりだけ興味を抱いたシュウを、それに直感で気付いたフローラがどうにか引き戻したのだった。
今、この空間には変な奴しかいなかった。
襲撃の黒幕についてはあくまで淡泊な反応で終わり、他に興味の湧いて来たトールについてシュウは質問をした。
「トールは元来臆病な性格で争いごとは大の苦手でしたガ、駆け落ち相手のメイド・・・今のトールの妻がいろいろとやらかしたお陰デ剣で生計を立てねばならなくナリ、剣の道に進みマス」
やっぱり面白いじゃないか、とシュウは興味深げに頷いて聞き入った。
「『痛み』を極度に嫌イ、先の先で攻撃して制することデ、『痛み』を経験するコトなく渡り合ってきましタ。妻のやらかしのお陰で冒険者ギルドは永久出禁になってオリ、正確な評価は出来ませんが、恐らく総合的な実力はA級くらいあるようデス。近接戦闘能力だけナラ、間違いなくS級デショウ」
「フローラの拘束魔法の罠を仕掛けておいたのは、大正解だったということですね・・・」
正面から戦っては、正直なところ勝ち目があるとは思えないなとシュウは苦笑いを浮かべる。
魔物じじいの忠告があったので一応襲撃を警戒するようになったのだが、それがトールの襲撃を跳ね除けることに繋がったのである。
魔物じじいの言葉が無ければ、追われる身とて流石に不可侵の領域である魔物じじいの家で荒事が起きるとは考えなかったであろう。シュウは魔物じじいに感謝の念を抱かずにはいられない。
「というか、この人の奥さんはとても酷い悪妻ですね。なんだか少し可哀想な気がしてきました・・・」
トールのことを聞いたフローラは、あまりの壮絶な内容に憐憫の目を床に横たわっているトールに向ける。
トールの悪妻を非難してはいるが、シュウを謀略により借金漬けにし、実質自分の所有物にしてしまった自分のことなど棚に上げていた。
「イえ、実際のところはそうでもないカモしれません。トールという男・・・『痛み』を怖がってはいまスが、自覚が無いだけで実のところ大の『マゾ』のようデス。痛みを怖がっているのは恐らくその裏返しですネ。酷い目には何度も遭っていますが、妻にはむしろトールの方が依存しているようデス」
「えぇ・・・」
「人の愛にはいろいろな形がありマスね・・・」
ヒきながらトールを見下ろすフローラとは逆に、魔物であるのに何だか人間のような言葉をしみじみと語るオーガ君。
シュウが横たわっているトールを見下ろすと、トールは涎を垂らしながら幸せそうに白目を剥いて息を荒くしていた。
なるほど、確かにマゾなのかもしれない・・・シュウはそう考えていたが・・・
「・・・」
余りに恍惚そうにしているトールを見て、「そ、そんなに気持ち良いのか?」とちょっぴりだけ興味を抱いたシュウを、それに直感で気付いたフローラがどうにか引き戻したのだった。
今、この空間には変な奴しかいなかった。
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