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危ない二人

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「拷問ですか・・・?」


物騒な単語を発したシュウに、フローラはキョトンとして訊ねる。


「ええ。以前、拷問のエキスパートという方と交流したことがありまして、拷問の魅力についていろいろと教えていただいたことがあるのです。相手が嫌がることをし、心を追い詰め、頑固な口を割らせる駆け引き・・・非常に興味深いものがありました」


やや興奮気味に語るシュウを目にして「コイツ変態だ!」とトールは叫びたかったが、フローラのバインドは口も抑え込んでいるのでそれは不可能だった。
この元神官はどんな人脈を持って拷問のエキスパートと交流があったんだよとツッコミも入れたかったが、一言すら発することが出来ない。


「その話を聞いて以来、機会があれば試してみたいと思ったのですよ。ですが、私は神官で勇者パーティーメンバーと言う身・・・この望みは叶わないものだとばかり考えていましたが・・・」


ここでパチリとシュウとトールの目が合った。合ってしまった。


「襲撃者を嗾けられた以上は、黒幕の名を聞きださないといけませんね。私の望みも叶うし、一石二鳥です」


シュウのサディスティックな性格と、知的好奇心、そして黒幕の聞き取りという名分が合わさって、シュウはトールを嬉々として拷問にかけることに決めた。
トールは命を奪おうとしてきた相手なので、シュウが何をしたところで因果応報なので心も痛まない。

やられたらやり返す。
舐められたら終わり。

街の悪ガキだった頃から、悪意には悪意、力には力でお返しするのがシュウの流儀だ。例外なのは、自分を追放した元仲間の『光の戦士達』くらいだろう。

だからシュウもトールに対しては容赦しない。
命を奪わないだけマシだろう?とすらシュウは考えている。


「拷問とかをするのに丁度良さそうなお部屋がありましたよ」


好きなように使って良い、と言われたことを良いことに、しれっとフローラが適当な部屋を見つけてくる。シュウも怖いが、可愛い顔して拷問とかいう物騒なものに躊躇せず加担しようとするフローラも恐ろしい。


(俺は・・・とんでもない奴らに捕まったのかもしれん!)


興味本位で拷問したがるシュウに、それを窘めることもせずしれっと手助けするフローラ。
元神官と聖女とリサーチしていたのに、まるで想像しえなかったほどの邪悪な二人組に、優秀な殺し屋であるはずのトールは圧倒的なまでの恐怖を感じていた。

トールは体に力を込める。
ここで本気にならなければ、この後には恐ろしいことが待っていると。
自分の底に眠る全ての力を出し切ってでも、この状況を打破せねばと死ぬ気で全身に力を込め・・・


「あっ」


フローラが驚愕する。
聖女であるフローラの強力なバインドを、トールが力づくで突破しようとしたからだ。否、もうほとんど魔法の拘束から抜け出ていた。


「ほぉ、フローラのバインドを力づくで突破しますか。下がりなさいフローラ」


シュウが表情を引き締め、戦闘体勢を取る。
体が中ば自由になったトールは、キッとシュウを見据え・・・


「えっ・・・」


飛び掛かるでもなく、即座に地面に平伏して土下座をしたのだった。


「ごめんなさい!何でも話します。だから痛くしないで!」
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