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恨む者 その2
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シュウに恨みを持つ者、マルス。
聖神教会アンドレア支部司教マルスは、隣国の富豪の三男として生まれた。
我儘放題に育ったために手の付けようがない有様だったので、追い出されるようにして聖神教会に放り出される。
一応実子であるためにマルスの実家は彼が教会からすらも追放されないよう、多額の寄付を送るようになったため、マルスは教会でも他の教徒と比べ忖度されるようになったのだが、これがいけなかった。マルスは教会で心を改めるばかりか、教会を自分の王国だと思うようになったのだ。
後輩いびりは当たり前。気に入ったシスターには手を出す始末。どんな問題を起こしても罰は軽く、多少のことなら揉み消されてしまうからどうにも止めようがなかった。
更に増長し、歪んだ万能感で好き放題やるマルスは、その実家の財力を笠に着て教徒の中に配下を作り、教会内で大きな派閥を構成した。
これがシュウが経験した、教会内の風紀が乱れていた時期である。
だが、そんなマルスの天下はある日終わりを迎えることになる。
それはシュウのせいだった。
後輩として入ったシュウは、最初こそマルスの支配下にあり虐げられていたが、やがて反抗するようになったのだ。
暴力で言うことを聞かせようとした先輩には、力で返す。マルスの金と数での支配を、単純な暴力で抗った。
元より喧嘩自慢で天賦の才があった上、格闘術を独学で学ぶようになったシュウには教会はおろか町のゴロツキですら敵わず、次第にマルスの派閥はシュウ一人を屈服させることすら出来ないようになる。
それどころか後輩いびりもシスターへの手出しも、シュウに睨まれてやりづらくなったのだ。
マルスは顔を潰されたと思い、ある日徒党を組んでシュウを力でねじ伏せようと呼びつけたが、盛大に返り討ちに遭った。
そのときにマルス自身も前歯を折られたりとボコボコにされ、心身ともに傷を負ったのだが、マルスがショックを受けたのはその後だった。
なんとシュウが類稀な回復術の使い手であることが評価され、帝都の支部へと異動になったのである。
帝都は聖神教会の本部のある場所であり、聖神教会の神官にとって極めて名誉なことであった。
マルスは聖神教会の敬虔な信者でもなければ、神官職に真面目に打ち込んでいたわけでもない。だが、身勝手にも敗北感に打ちひしがれたマルスは、歪んだ復讐心を持つようになる。
自分の築き上げた王国を潰されたこと、
心にも体にも傷を負わされたこと、
そして自分を差し置いて帝都へ異動になったこと。
これらの恨みを晴らすため、マルスは実家の財力とコネを惜しみなく使い、教会内で出世を繰り返し、若くして司教にまで上り詰めた。教会内での地位を自身の権力でもって蹴落とし、シュウを社会的に抹殺するためである。
だが当のシュウは神官職を辞したため、社会的に抹殺することは叶わなかった。
故に、今度は肉体的な報復をしようと考えていた。
聖神教会アンドレア支部司教マルスは、隣国の富豪の三男として生まれた。
我儘放題に育ったために手の付けようがない有様だったので、追い出されるようにして聖神教会に放り出される。
一応実子であるためにマルスの実家は彼が教会からすらも追放されないよう、多額の寄付を送るようになったため、マルスは教会でも他の教徒と比べ忖度されるようになったのだが、これがいけなかった。マルスは教会で心を改めるばかりか、教会を自分の王国だと思うようになったのだ。
後輩いびりは当たり前。気に入ったシスターには手を出す始末。どんな問題を起こしても罰は軽く、多少のことなら揉み消されてしまうからどうにも止めようがなかった。
更に増長し、歪んだ万能感で好き放題やるマルスは、その実家の財力を笠に着て教徒の中に配下を作り、教会内で大きな派閥を構成した。
これがシュウが経験した、教会内の風紀が乱れていた時期である。
だが、そんなマルスの天下はある日終わりを迎えることになる。
それはシュウのせいだった。
後輩として入ったシュウは、最初こそマルスの支配下にあり虐げられていたが、やがて反抗するようになったのだ。
暴力で言うことを聞かせようとした先輩には、力で返す。マルスの金と数での支配を、単純な暴力で抗った。
元より喧嘩自慢で天賦の才があった上、格闘術を独学で学ぶようになったシュウには教会はおろか町のゴロツキですら敵わず、次第にマルスの派閥はシュウ一人を屈服させることすら出来ないようになる。
それどころか後輩いびりもシスターへの手出しも、シュウに睨まれてやりづらくなったのだ。
マルスは顔を潰されたと思い、ある日徒党を組んでシュウを力でねじ伏せようと呼びつけたが、盛大に返り討ちに遭った。
そのときにマルス自身も前歯を折られたりとボコボコにされ、心身ともに傷を負ったのだが、マルスがショックを受けたのはその後だった。
なんとシュウが類稀な回復術の使い手であることが評価され、帝都の支部へと異動になったのである。
帝都は聖神教会の本部のある場所であり、聖神教会の神官にとって極めて名誉なことであった。
マルスは聖神教会の敬虔な信者でもなければ、神官職に真面目に打ち込んでいたわけでもない。だが、身勝手にも敗北感に打ちひしがれたマルスは、歪んだ復讐心を持つようになる。
自分の築き上げた王国を潰されたこと、
心にも体にも傷を負わされたこと、
そして自分を差し置いて帝都へ異動になったこと。
これらの恨みを晴らすため、マルスは実家の財力とコネを惜しみなく使い、教会内で出世を繰り返し、若くして司教にまで上り詰めた。教会内での地位を自身の権力でもって蹴落とし、シュウを社会的に抹殺するためである。
だが当のシュウは神官職を辞したため、社会的に抹殺することは叶わなかった。
故に、今度は肉体的な報復をしようと考えていた。
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