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忠告? その3
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フローラは言葉を失った。
シュウが八方美人なところがある性格であることそのものは、実のところ十分理解していたからだ。
シュウはそういう星の元に生まれたのかとにかく女性に対して良いように振る舞い、フラグを乱立している。
元同じパーティーメンバーの女達が良い例で、気を揉んだことも一度や二度ではなかった。
だが、それはシュウが無意識のうちにそうしているもので、恋人ポジションになし崩し的に着こうとしているフローラの心がけ次第でどうにか出来ると思っていた。
何しろ体の関係を持っているのだ。シュウは肌を重ねた相手を無碍に扱うことはしない・・・少なくとも他の女よりはアドバンテージがあるはず、そう考えていた。
しかし魔物じじいの発言は、そんなフローラの思惑を撃ち壊すものだ。
「どうあってもシュウの心を独り占めは出来ないと思ったほうが良い。あれはそういう男だ」
シュウはとんでもない浮気者だぞ、と取れる発言だ。
だがフローラは激昂することなく、魔物じじいの話を静かに聞いていた。なんとなく魔物じじいの雰囲気から「これから大事な話をするぞ」という意図が感じられたからである。
「思ったより冷静じゃな。うんうん、やはりそれくらいの胆力がないとのぅ」
魔物じじいはそう言って微笑を浮かべると、クイッと酒を口に運ぶ。
自分の反応を試すためにあえて挑発するような言い回しをしていたのだな・・・ちょっと嫌な性格だ、とフローラは思った。
コンッと、音がするほど強めにコップをテーブルに置くと、魔物じじいは話を続けた。
「結論を言うと、シュウは一人でも多くの人から愛されたいと思っておる。昔からそうじゃったが、今日話してみてわかった。今でもちっとも変わっておらん」
「・・・え?」
「親に愛されなかったことの反動かのう。回復魔法の腕を磨いたのも、神官なんぞになったのも、途方もないほど面倒くさいようなことに首を突っ込んでしまうのも、全ては周りから愛されたいが故の行動じゃ。そして・・・恐らくはフローラちゃんと一緒にいるのも、その一つじゃろう」
「・・・」
「しかも、じゃ。面倒なことにシュウはそのことに自分自身まるで気付いておらん。利己的な言動もあるが、ありゃ恐らく無意識のうちに出てる照れ隠しみたいなもんじゃ。本質は人に愛されるためには自己犠牲をもいとわん、誰にもかれにも優しくする、気を持たせる、実に情緒不安定のある意味面倒な性格な奴じゃよ。まぁ言うなれば・・・『無自覚な偽善者』ということだ」
「そ、そこまでおっしゃることはないんじゃないでしょうか!」
流石にシュウのことを偽善者呼ばわりされると、フローラはつい我慢できず異議を申し立てた。
「貴方はシュウ様と親しいと思っていました。なのに、そこまで言うなんて!」
シュウは魔物じじいのことを人格者とまで言っていた。フローラの嫉妬心を煽るほど魔物じじいのことを慕っているのだ。それなのに当の魔物じじいはシュウのことをこうまで悪し様に言うなど、あんまりではないかとフローラは怒りを感じていた。
「儂だってこんなことは良いたくない。だが、シュウのことを知っておかねばいずれ傷つくのはフローラちゃんじゃ。その結果シュウの元を去ることになれば、シュウも傷つく。儂はもうそんなアイツを見たくはない」
そう言った魔物じじいの表情は、少し悲し気に曇っていた。
そこでフローラは察する。
かつてシュウと別れたクローザという女にも、同じことがあったのだと。
「フローラちゃんがシュウの傍にいても、あやつはそれ以外の人間の愛も求めてしまう。それも無意識のうちにじゃ。いずれフローラちゃんが気疲れして、愛想をつかしてしまう日が来るかもしれん」
ちびっと酒に口をつけ、伏し目がちに言った魔物じじいに対し、フローラははっきりと言った。
「そんなことには絶対になりません」
シュウが八方美人なところがある性格であることそのものは、実のところ十分理解していたからだ。
シュウはそういう星の元に生まれたのかとにかく女性に対して良いように振る舞い、フラグを乱立している。
元同じパーティーメンバーの女達が良い例で、気を揉んだことも一度や二度ではなかった。
だが、それはシュウが無意識のうちにそうしているもので、恋人ポジションになし崩し的に着こうとしているフローラの心がけ次第でどうにか出来ると思っていた。
何しろ体の関係を持っているのだ。シュウは肌を重ねた相手を無碍に扱うことはしない・・・少なくとも他の女よりはアドバンテージがあるはず、そう考えていた。
しかし魔物じじいの発言は、そんなフローラの思惑を撃ち壊すものだ。
「どうあってもシュウの心を独り占めは出来ないと思ったほうが良い。あれはそういう男だ」
シュウはとんでもない浮気者だぞ、と取れる発言だ。
だがフローラは激昂することなく、魔物じじいの話を静かに聞いていた。なんとなく魔物じじいの雰囲気から「これから大事な話をするぞ」という意図が感じられたからである。
「思ったより冷静じゃな。うんうん、やはりそれくらいの胆力がないとのぅ」
魔物じじいはそう言って微笑を浮かべると、クイッと酒を口に運ぶ。
自分の反応を試すためにあえて挑発するような言い回しをしていたのだな・・・ちょっと嫌な性格だ、とフローラは思った。
コンッと、音がするほど強めにコップをテーブルに置くと、魔物じじいは話を続けた。
「結論を言うと、シュウは一人でも多くの人から愛されたいと思っておる。昔からそうじゃったが、今日話してみてわかった。今でもちっとも変わっておらん」
「・・・え?」
「親に愛されなかったことの反動かのう。回復魔法の腕を磨いたのも、神官なんぞになったのも、途方もないほど面倒くさいようなことに首を突っ込んでしまうのも、全ては周りから愛されたいが故の行動じゃ。そして・・・恐らくはフローラちゃんと一緒にいるのも、その一つじゃろう」
「・・・」
「しかも、じゃ。面倒なことにシュウはそのことに自分自身まるで気付いておらん。利己的な言動もあるが、ありゃ恐らく無意識のうちに出てる照れ隠しみたいなもんじゃ。本質は人に愛されるためには自己犠牲をもいとわん、誰にもかれにも優しくする、気を持たせる、実に情緒不安定のある意味面倒な性格な奴じゃよ。まぁ言うなれば・・・『無自覚な偽善者』ということだ」
「そ、そこまでおっしゃることはないんじゃないでしょうか!」
流石にシュウのことを偽善者呼ばわりされると、フローラはつい我慢できず異議を申し立てた。
「貴方はシュウ様と親しいと思っていました。なのに、そこまで言うなんて!」
シュウは魔物じじいのことを人格者とまで言っていた。フローラの嫉妬心を煽るほど魔物じじいのことを慕っているのだ。それなのに当の魔物じじいはシュウのことをこうまで悪し様に言うなど、あんまりではないかとフローラは怒りを感じていた。
「儂だってこんなことは良いたくない。だが、シュウのことを知っておかねばいずれ傷つくのはフローラちゃんじゃ。その結果シュウの元を去ることになれば、シュウも傷つく。儂はもうそんなアイツを見たくはない」
そう言った魔物じじいの表情は、少し悲し気に曇っていた。
そこでフローラは察する。
かつてシュウと別れたクローザという女にも、同じことがあったのだと。
「フローラちゃんがシュウの傍にいても、あやつはそれ以外の人間の愛も求めてしまう。それも無意識のうちにじゃ。いずれフローラちゃんが気疲れして、愛想をつかしてしまう日が来るかもしれん」
ちびっと酒に口をつけ、伏し目がちに言った魔物じじいに対し、フローラははっきりと言った。
「そんなことには絶対になりません」
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