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有名人魔物じじい
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フローラは追われる身である。
教会からも、そして本人は何故か理解できていないが白金の騎士団にも追われている。
街中を歩けば、誰もがすぐに自分に気付き、追手がやってきてもおかしくない・・・誰にも捕まらずにいるには、自意識過剰なくらい警戒して然るべきなのだ。
認識阻害の魔法については既に警告を受けている身なので、何となく使うことには抵抗がある。
だから魔物じじいとの買い出しのために町に出ることに、フローラは不安を抱いていた。例えばここで白金の騎士団や教会の追手が来たとしたら、すぐにでも町から出るつもりで逃げ出さないといけないだろう。
そうするとシュウと離れ離れになってしまう。合流には苦労することになるかもしれない。フローラはそれが不安で仕方が無かった。
だが
「魔物じじいと一緒なら、まず問題はないでしょう。少なくともこの町ではね」
心配するフローラに対し、シュウはそう言って笑ってみせた。
シュウが言うなら信じるしかないが、それでも魔物じじいがあらゆる権力者から守られている大人物とはいえ、白金の騎士団のように強い捜査権を持つのが来たらどうするのだろう・・・
どうしてもそんな不安が拭えなくて仕方が無かった。
しかし、実際に魔物じじいと歩いてみると、フローラの不安はある意味で杞憂に終わった。
「おい、魔物じじいだ・・・」
「珍しい・・・」
「また何か始めるのか・・・?」
街ゆく人は皆魔物じじいに注目し、フローラには目もくれない。
既に夜は更けており、通り過ぎる人の顔などろくに認識出来ないはずなのに魔物じじいは実に良く人の目を引いた。
(流石に有名人ってことね・・・)
魔物じじいを見て、ただ驚く人もいれば、何やら怯えて逃げ出す者もいる。
フローラは良い意味でも悪い意味でも、魔物じじいがこの町で有名なのを実感した。
「これと、これ・・・家に送っておいてくれ」
「へ、へいっ!」
アンドレアの町は夜も栄えているだけあって、夜に開いている店が多かった。
魔物じじいが買い出しに行くと言って「夜に?」とフローラは驚いたものだが、実際のところ買い出しは特に支障なく進んでいく。
食料品や研究材料など、この場では持っていけない量を即決で購入していき、後で家に配達するように頼んでいく・・・それを数軒繰り返していたが、使う金額があまりに大きくフローラは驚愕した。
(貴重な薬品や素材を値段も見ないで大量に買ってる・・・お金には固執しないけど、持っていないわけじゃないんだ・・・)
必要なのだから買うだけのこと。
欲しいものは即決で、金払いが異様に良い魔物じじいに、店側は平身低頭でまさに神様扱いで接客する。
これを数軒も繰り返していれば、そりゃ有名にもなるわとフローラは思った。
淡々と買い物を済ませていく魔物じじいに、ただついて行くだけのフローラ。
買うものがあると言っても、ほとんどはまとめ買いで後で家に届けさせるもの。フローラはほとんど物を持たされることなく、本当にただついてるだけも同然だった。
そうしていると、なんとなくフローラは魔物じじいの意図に気付く。
買い出し以外に自分に用事があるのではないかと。
そしてその時は来た。
「のぅフローラちゃん。ちょっと疲れたし、折角じゃから飯でも食っていかんか?」
買い出しがある程度終わると、魔物じじいが一軒の酒場を指さしてそう提案した。
魔物じじいは笑みを浮かべているが、何となく断りづらいような、有無を言わせぬ迫力があった。
「ええ、よろこんで」
フローラは怯むことなくニコリと笑みを作ってそれに答える。
やはり魔物じじいは二人で話したいことがあったのだなと、フローラは思った。
教会からも、そして本人は何故か理解できていないが白金の騎士団にも追われている。
街中を歩けば、誰もがすぐに自分に気付き、追手がやってきてもおかしくない・・・誰にも捕まらずにいるには、自意識過剰なくらい警戒して然るべきなのだ。
認識阻害の魔法については既に警告を受けている身なので、何となく使うことには抵抗がある。
だから魔物じじいとの買い出しのために町に出ることに、フローラは不安を抱いていた。例えばここで白金の騎士団や教会の追手が来たとしたら、すぐにでも町から出るつもりで逃げ出さないといけないだろう。
そうするとシュウと離れ離れになってしまう。合流には苦労することになるかもしれない。フローラはそれが不安で仕方が無かった。
だが
「魔物じじいと一緒なら、まず問題はないでしょう。少なくともこの町ではね」
心配するフローラに対し、シュウはそう言って笑ってみせた。
シュウが言うなら信じるしかないが、それでも魔物じじいがあらゆる権力者から守られている大人物とはいえ、白金の騎士団のように強い捜査権を持つのが来たらどうするのだろう・・・
どうしてもそんな不安が拭えなくて仕方が無かった。
しかし、実際に魔物じじいと歩いてみると、フローラの不安はある意味で杞憂に終わった。
「おい、魔物じじいだ・・・」
「珍しい・・・」
「また何か始めるのか・・・?」
街ゆく人は皆魔物じじいに注目し、フローラには目もくれない。
既に夜は更けており、通り過ぎる人の顔などろくに認識出来ないはずなのに魔物じじいは実に良く人の目を引いた。
(流石に有名人ってことね・・・)
魔物じじいを見て、ただ驚く人もいれば、何やら怯えて逃げ出す者もいる。
フローラは良い意味でも悪い意味でも、魔物じじいがこの町で有名なのを実感した。
「これと、これ・・・家に送っておいてくれ」
「へ、へいっ!」
アンドレアの町は夜も栄えているだけあって、夜に開いている店が多かった。
魔物じじいが買い出しに行くと言って「夜に?」とフローラは驚いたものだが、実際のところ買い出しは特に支障なく進んでいく。
食料品や研究材料など、この場では持っていけない量を即決で購入していき、後で家に配達するように頼んでいく・・・それを数軒繰り返していたが、使う金額があまりに大きくフローラは驚愕した。
(貴重な薬品や素材を値段も見ないで大量に買ってる・・・お金には固執しないけど、持っていないわけじゃないんだ・・・)
必要なのだから買うだけのこと。
欲しいものは即決で、金払いが異様に良い魔物じじいに、店側は平身低頭でまさに神様扱いで接客する。
これを数軒も繰り返していれば、そりゃ有名にもなるわとフローラは思った。
淡々と買い物を済ませていく魔物じじいに、ただついて行くだけのフローラ。
買うものがあると言っても、ほとんどはまとめ買いで後で家に届けさせるもの。フローラはほとんど物を持たされることなく、本当にただついてるだけも同然だった。
そうしていると、なんとなくフローラは魔物じじいの意図に気付く。
買い出し以外に自分に用事があるのではないかと。
そしてその時は来た。
「のぅフローラちゃん。ちょっと疲れたし、折角じゃから飯でも食っていかんか?」
買い出しがある程度終わると、魔物じじいが一軒の酒場を指さしてそう提案した。
魔物じじいは笑みを浮かべているが、何となく断りづらいような、有無を言わせぬ迫力があった。
「ええ、よろこんで」
フローラは怯むことなくニコリと笑みを作ってそれに答える。
やはり魔物じじいは二人で話したいことがあったのだなと、フローラは思った。
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