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魔物じじい その4

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「そ、そんなことよりもっ!!」


嫌な方向に話を転がされているシュウは、そう言って強引に話をぶった切った。


ダンッ


シュウが懐から取り出したのは、スライムを閉じ込めている小瓶だ。
パッと見はただの液体だが、肉眼で見えないほど小さな核があり、これが人体に憑りつくと、長い時間をかけて成長し宿主の体力を奪う。そしてやがては死に至らしめるという、魔物でありながらある種の病原菌のようなものだ。

スープどころか飲み水にすら簡単に混ぜることが出来るというこのスライムは、実に脅威的な暗殺手段となり得る。
暗殺対象に摂取させるは容易な上、超がつく遅効性である上に定期的に摂取させる必要がない。そして死因は衰弱死なので、毒ではなく病死にしか見えない

これが出回るようになれば、世界中の要人が怪しまれることなく暗殺、そうでなくても体調不良によりその地位を追われることになってしまう。そう、かつてのバロウ伯爵のように。

世界に混沌をもたらしかねないこのスライムの存在をシュウは危険視しており、スライムを魔物じじいに見せ、対策を考えるためにシュウ達はリスクを承知でここまで来たのである。


「ほう、これはスライムか」


小瓶の中のスライムを見た魔物じじいの目の色が変わった。
小瓶の中身はパッと見はただの水なのだが、一目でスライムであると魔物じじいは気がついたのだ。


「スライムだが、核が見えんほど小さいのぅ。弱っている?・・・いや、


「流石です!魔物じじい」


説明せずとも、パッと見ただけで理解した魔物じじいにシュウは感嘆の声を上げる。
一方でフローラは異常に理解の早い魔物じじいにドン引きしていた。


「このスライムのことで相談があるのです」


シュウは「やっと昔の女のことから話が逸らせるぞ」と内心喜びながら、このスライムのことについて起きたことを全て話した。
全ての話を聞き終えた魔物じじいは、茶をすすりながら渋面して言う。


「その被害者となっていた人らを、そのまま連れてきてくれれば検証がより捗ったんだがのぅ。他にもそういう人おらんのか?」


冗談めいた様子ではなく、素で言ってそうなところにフローラは「この人のどこが人格者なのだろう」と思ってしまった。


「とはいえ、人工の魔物か。過去、そういった禁忌に手をつけた話は枚挙に暇がないほどにあるが、うまくいったという話は聞いたことがなかった。まぁ研究のしがいはあるな」


魔物じじいがニタリと笑って小瓶をチラリとみると、何となく中身のスライムが悲鳴を上げている・・・ように見えた。


「ねっとりしっぽり、手取り足取り腰取り(?)、きっちり穴という穴(?)まで調べ上げてやるわい」


舌なめずりしながら言う魔物じじいは、間違いなくシュウの魔物探求の師匠なのだなと、とフローラは思った。
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