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魔物じじい その3 ~昔の女~
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「えっと・・・あはは・・・」
魔物じじいの不躾な一言に、流石のシュウも引き攣った笑みを浮かべて返答に窮する。
フローラは魔物じじいの前で完全に硬直し、一言も発せないでいた。
(今・・・何ですって?)
フローラは立場上、いろいろな人間に会って来た。
自己紹介の最中に腰を折られることも慣れている。だから魔物じじいの態度も別段どうと言うことではなかった。
しかし、彼の一言はフローラとて聞き流せなかった。
「新しい女」
その言葉がどうしてもフローラの頭の中でリフレインしてしまっていた。
魔物じじいが新しい女という言葉を発したということは、以前のシュウの女についても知っていることになる。
フローラは聖女時代、その権力を使ってシュウの身辺調査をしていた。彼を射止めるための情報が少しでも欲しかったからである。
フローラが知りたかったのは、特にシュウの女性関係だった。どのような女が好みであったか、どういった付き合いをしていたのか、それを知ればシュウを射止めようとする上で、有利に立ち回ることが出来ると考えていたのだ。
だが、アンドレア出身であるということは突き止められたものの、それ以上のことについて大して調べ上げることは出来なかった。
シュウが大人物なら多少は違ったのだろうが、あくまで彼はいち神官でしかない。だから仕方がないと言えば仕方がないのだが、アンドレアにいた時代の彼のプライベートを知ることが出来ずに、モヤモヤしていたことをフローラは思い出した。
かつての女についての情報が出てこないのなら、もしかしてシュウは司教命令でレーナと付き合う以外は、女性と付き合ったことがないのでは?そんな期待を抱いてはいたのだが、まさか魔物じじいの口から欲しい情報があっさり出て来るとは、フローラにしてみれば予想だにしない僥倖であった。
「女の趣味変わったか?前のとは違って、今回のは御淑やかな子だの。表向きは」
「あ~、えっと・・・」
魔物じじいの遠慮ない発言に、シュウは冷や汗が止まらない。気が気でない。
だが、フローラはというと興味津々と言った風に、魔物じじいの発言に全神経を集中させて耳を傾けていた。
発言の内容そのものに集中しているために、失礼な物言いをしたことなどについてはどうでも良かった。
「あの・・・魔物じじい・・・どうかその辺で・・・」
シュウはどうにか話を終わらせようとするが、魔物じじいは遠い目をしながら虚空を見上げ、思い出すように続けてしまう。
「クローザと言ったかな、前の女。あれはこんな礼儀の正しい子じゃなかったな。体つきもどちらかというと正反対で・・・」
「ま、魔物じじい!どうかその辺で!!」
半泣きのシュウが、魔物じじいの発言を遮ってやめさせる。
シュウと言えど、昔の女の話を今の女(?)であるフローラの前でされることには、流石に耐えられなかった。
フローラは「フフッ、安心してくださいシュウ様。以前の女性のことは気にしていませんから」と口にするが、内心は前の女の名が出たことでソワソワしていた。
(帝都を離れてしまっているし、今の私ではクローザさんについてもう調べることは出来ないかしら・・・)
クローザについて調べてみたい、どうにか方法がないかとフローラは考えていたが、この後その必要もなくなることなど、このときの彼女が知るはずもなかった。
魔物じじいの不躾な一言に、流石のシュウも引き攣った笑みを浮かべて返答に窮する。
フローラは魔物じじいの前で完全に硬直し、一言も発せないでいた。
(今・・・何ですって?)
フローラは立場上、いろいろな人間に会って来た。
自己紹介の最中に腰を折られることも慣れている。だから魔物じじいの態度も別段どうと言うことではなかった。
しかし、彼の一言はフローラとて聞き流せなかった。
「新しい女」
その言葉がどうしてもフローラの頭の中でリフレインしてしまっていた。
魔物じじいが新しい女という言葉を発したということは、以前のシュウの女についても知っていることになる。
フローラは聖女時代、その権力を使ってシュウの身辺調査をしていた。彼を射止めるための情報が少しでも欲しかったからである。
フローラが知りたかったのは、特にシュウの女性関係だった。どのような女が好みであったか、どういった付き合いをしていたのか、それを知ればシュウを射止めようとする上で、有利に立ち回ることが出来ると考えていたのだ。
だが、アンドレア出身であるということは突き止められたものの、それ以上のことについて大して調べ上げることは出来なかった。
シュウが大人物なら多少は違ったのだろうが、あくまで彼はいち神官でしかない。だから仕方がないと言えば仕方がないのだが、アンドレアにいた時代の彼のプライベートを知ることが出来ずに、モヤモヤしていたことをフローラは思い出した。
かつての女についての情報が出てこないのなら、もしかしてシュウは司教命令でレーナと付き合う以外は、女性と付き合ったことがないのでは?そんな期待を抱いてはいたのだが、まさか魔物じじいの口から欲しい情報があっさり出て来るとは、フローラにしてみれば予想だにしない僥倖であった。
「女の趣味変わったか?前のとは違って、今回のは御淑やかな子だの。表向きは」
「あ~、えっと・・・」
魔物じじいの遠慮ない発言に、シュウは冷や汗が止まらない。気が気でない。
だが、フローラはというと興味津々と言った風に、魔物じじいの発言に全神経を集中させて耳を傾けていた。
発言の内容そのものに集中しているために、失礼な物言いをしたことなどについてはどうでも良かった。
「あの・・・魔物じじい・・・どうかその辺で・・・」
シュウはどうにか話を終わらせようとするが、魔物じじいは遠い目をしながら虚空を見上げ、思い出すように続けてしまう。
「クローザと言ったかな、前の女。あれはこんな礼儀の正しい子じゃなかったな。体つきもどちらかというと正反対で・・・」
「ま、魔物じじい!どうかその辺で!!」
半泣きのシュウが、魔物じじいの発言を遮ってやめさせる。
シュウと言えど、昔の女の話を今の女(?)であるフローラの前でされることには、流石に耐えられなかった。
フローラは「フフッ、安心してくださいシュウ様。以前の女性のことは気にしていませんから」と口にするが、内心は前の女の名が出たことでソワソワしていた。
(帝都を離れてしまっているし、今の私ではクローザさんについてもう調べることは出来ないかしら・・・)
クローザについて調べてみたい、どうにか方法がないかとフローラは考えていたが、この後その必要もなくなることなど、このときの彼女が知るはずもなかった。
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