追放の破戒僧は女難から逃げられない

悪い男狩り

シュウが脇目もふらずに歩いていったのは、周囲と打って変わって人通りがなく、狭くて薄暗い路地だった。
その狭い路地を早歩きで進んでいき、袋小路になっているところでシュウ達は一人の少女が三人の男に囲まれている場面に遭遇した。


「子猫ちゃん、もう逃げられないぜ」


「一緒にご飯行こうって誘っただけなのに、逃げ出すなんて傷ついちゃったなぁ～俺」


「オ、女！ツ、捕マエタ！」


見るからにガラの悪い男達は、自分達より遥か年下である十代半ばと思わしき少女を取り囲んでいる。哀れ少女は恐怖に支配されているのか、言葉を発することも出来ず震えて壁を背にしている。

シュウは少女が男達から逃げているのを目撃し、こうなることがわかっていたので追って来たのである。
厄介事を拾ってはストレス発散も兼ねてひと暴れ・・・シュウの悪癖が出てしまったのだが、もちろんシュウ本人は意識していないお節介の部分もある。


「こんな人気の無いところに逃げ出すってことは、子猫ちゃんは俺達とそういう遊びがしたいのかな？」


「そういうことっしょ？ここまで気を持たせて違うなんて言ったら、俺傷ついちゃうなぁ～」


「オ、女！人イナイトコデ、ヤル！」


リーダー格と思わしきいかにも悪そうな男、やけに傷つきやすい男、言葉が不自由な男それぞれが少女に迫る。


「んじゃ、君の期待通りにさせてもらうってことで」


「あんまり抵抗なんてされたら傷ついちゃうぞ～」


「オ、女！無理矢理ヤル！」


リーダー格の男が少女を服に手をかけ、力任せに引き裂いた。
「ひっ」と小さな悲鳴を上げることしか出来ず、目に涙を溜めている少女。

ここまで来ればもう言い逃れは出来ず、男達の容疑は確定である。


「やぁ、お兄さん方。女性とイチャつくのも良いですが、男性とヤる強烈な一発というのもオツなものですよ。私が教えてあげましょう」


「「「あっ？」」」


ゴスッ


男達がシュウの声に反応し振り向いた瞬間、言葉の不自由な男が上段回し蹴りを頭に受けていた。


「ア・・・」


顎が外れ、歯が折れ、口をだらんと開けた男は地面に倒れ伏し、そのまま動かなくなる。


「な、なんだてめぇ！一発って、そういうプレイか？」


「んなわけないでしょ。お前、何者・・・ぶっ！？」


次に傷つきやすい男が顔面に一発、ストレートパンチを浴びる。
鼻を陥没させて白目を剥き、そのまま地面に倒れた。


「ちっ！てめぇ！！」


リーダー格の男はいつの間にか抜いたのか、手にナイフを持ってフローラに向けて駆けだしていた。
彼の狙いは人質を取ることだ。それはナイフ一本で勝てる相手ではないことを察したからなのだが、その察しの良さが更なる不幸を産む。


「あ、そっちには行かないほうが」


リーダー格の男の行動の結果がどうなるかわかっているシュウは、警告のためにそう言ったのだが・・・


「イヤーッ！」


メキメキ、ボキン

シュウの言葉も空しく、リーダー格の男はフローラの肉体強化魔法を使った抵抗に遭い、腕があらぬ方向へ折れ曲がってしまった。


「」

パタン・・・

言葉を発することも出来ず、泡を吹いてリーダー格の男は倒れ伏す。
こうして暴漢たちは一瞬にして制圧されたのであった。


「やれやれ・・・まぁ、女性を人質に取ろうとする下衆に相応しい仕打ちでしょうか」


二度と使い物にならなそうに折れ曲がった腕を見て、溜め息をつきながらシュウは言う。


「もう・・・私に触ろうとするなんて許せません」


フローラがプリプリ怒りながら、倒れた男を足蹴にする。
その拍子で男の着ている服がずれて肌が一部露わになったのだが、そこでシュウ達は思いがけないものを目にすることになった。


「えっ、これは・・・」


男の肌にあるもの・・・それは聖神教会の神官に刻まれる『聖紋』であった。