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色のアンドレア

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「すごい人ですね・・・」


夕暮れ時、アンドレアに足を踏み入れたフローラは、周囲を見回して感嘆の声を上げた。
帝都を含め多くの街では暗くになるにつれて街の人通りは少なくなるが、アンドレアではなお人の通りが活発で、それがフローラにはとても斬新だった。


「変わってませんね・・・・」


シュウは物憂げに目を細め、ゆっくりと街を見回しながら呟いた。


「冒険者や商人が行き交うこの町は風俗産業が盛んなのです。帝都より出店規制が緩いので、むしろ帝都より多いかもしれません。噂を聞きつけて全国・・・いえ、周辺国からもそういった店で出稼ぎを目的にして来る女性が多く、それ故に高級店ともなればキャストの質が極めて高い。レベルの高い女性とおたのしみしたくて金を持った男がこれまた周辺各地から訪れ、金を落とす。こうしてこの町は潤っているのです。アンドレアは『夜の街』と言っても過言ではないでしょう」


(こんなときじゃなければ、一回くらいは遊んでみたいものだが)と、シュウは一瞬心の中で思ったが、流石に口にはしない。フローラが怖いからだ。


「なるほど。道理で通行人にそわそわしている男の人が多いと思いました」


フローラが納得したように頷きながら言った。
彼女が言うように、通行人には男がとても多い。彼らはどこかを目指しているというよりは、通路の端で立っている煽情的な服装をしている娼婦と思わしき女を見定めながらふらふらと歩いていると言った感じだ。
そしてこれだと思った女に話かけ、二、三、会話をしてから二人してどこかへ消えていく。そんな光景がそこかしこで見られた。


「立ちんぼも昔より増えましたね。元より出稼ぎ目的で来ている人もいますが、この町で博打や詐欺、男で金を失った女性が止むにやまれず街に立つ・・・なんていうパターンもあります。そして、そういう女性をターゲットにした商売もまたあるんですよ。ある人は逃げ、ある人はそのままハマっていく・・・まぁ、男性も似たようなことがあるんですが・・・とにかく良くも悪くも、この町は『人の欲』で成り立っているのです」


「そういった場所もあるとは聞いてはいましたが、実際に見るには初めてです・・・」


フローラは聖女として様々な地へお役目で回っていたが、悪影響があってはいけないとこういった色街には護衛や側近が近づけさせてはくれなかったのだ。
帝都にも色町はあるが、規模も活気もアンドレアとは比較にならぬほど小さい。
故にフローラは初めて見る光景、感じる空気に、少しばかり興奮を覚えていた。


「華やかではありますが、こういったところ特有の悪い部分もまたいろいろありまして・・・あぁ、ほらあそこにもまた・・・」


話している途中、シュウは何かを見つけたようで、呆れたように溜め息をついた。


「シュウ様・・・?」


「正直あまり目立ちたくはありませんが、目にしてしまった以上放っておくのもねぇ・・・フローラ、ついてきてくれますか?」


シュウの言葉に、フローラは彼が何かトラブルを見つけたことを察する。
なんだかんだでそういったものを見てしまうと放ってはおけない・・・目立つわけにはいかないというこの状況で、それでもどうしても首を突っ込まずにはいられない。
フローラはシュウのそんな面倒な性格も好きなのだと、改めて認識して「フフッ」と小さく笑みを漏らした。
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