追放の破戒僧は女難から逃げられない

はにわ

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なんでだよ

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グレースは人の心・・・特に恋心を弄ぶ人間を許せない。
人助けで無駄に好意を抱かせフラグをばら蒔きそれを放置するのも、仲間と必要以上に懇意になって好意を抱かせるのも、ましてそこまでしておいて知らんぷりなどというのも、何もかもグレースの思う最低な男としての特性だった。
その無駄にしているモテ度を他の人間に分けてやってほしい・・・そうとすら考えている。


「あっ・・・」


グレースと付き合いが長く、彼の小説好きを良く知るマートはすぐに察した。
「また現実と小説がごっちゃになってるな」と。

グレースは隊員達から坊ちゃん、お坊ちゃんなどと呼ばれることが多いが、理由は童顔であること、若くして隊の長であること、それと女性経験が無いことが挙げられるのだが、それ以外にも「物語と現実をごっちゃにして考える子供っぽい所がある」というのも含まれている。

グレースは仕事が出来れば剣を腕も立ち、度胸も人一倍ある優秀な戦士なのだが、如何せんこういった部分があった。


「元聖女フローラは良しとしよう。それでは中途半端にされてきた剣士サーラ達はどうする?可哀想ではないか!」


ダンッと壁を叩きつけてグレースが叫ぶ。
一応はシュウ達に見つからないようにとの隠密行動中なのに、我を忘れて大きな音を立てている。それだけグレースは自我を失いかけていた。


「どうどう、落ち着いて。まぁ、モテる人ってのはそういうものですから・・・それも含めてシュウさんがスゲーって話じゃないですか」


「凄くない!駄目だ!」


ちっ、めんどくせーなとマートは思った。
ビクス達は「もう戻っていいかな?」と呆れ返っている。


「はぁ、それで・・・シュウが許せない人間だとして、どーすんすかい?」


グレースに合わせてシュウにさん付けしていたマートは「もういいかな」と思ってさん付けするのをやめる。
グレースのシュウに対する好感度が大いに下がったと思われる以上、敬意を表しているとまたグレースが不機嫌になりそうだからだ。

だが、グレースの反応はマート達の予想斜め上だった。


「シュウ様を正しい方向に修正してやる!」


「「「なんでだよっ!!」」」


訳の分からないことを言い出すグレースに、マート達は思わず声をハモらせてツッコミを入れてしまう。
だが、当のグレースは握りこぶしを作って大真面目に力説した。


「道を踏み外すには惜しい人だ。見捨てるというのは早計というものだ」


思い込みで真顔でそう言うグレースを見て、マートは「この人はもう駄目かもしれない」と思った。
こうしてグレースは訳の分からない方向へ拗れていきつつ、シュウ達の動向を文字通り見守り続けることになる。

このグレースの決意から数日後・・・これまでシュウを崇拝するかのような内容から一変、彼の女癖(?)の悪さを糾弾し、しかもそれを修正していこうという旨の報告書がクレウスの元に届き、彼は大いに困惑した。
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