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歪んだお嬢様

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突如として始まったセレスティアによる野盗狩りは、結果として野盗の全員死亡で幕を閉じた。
降伏も謝罪も意に介さず斬り伏せた、一方的な殺戮だ。


「お嬢。後のことは任せておいてくだせぇ」


「お願いしますわね」


騎士の言葉に甘え、セレスティアは剣についた血を拭い、サッと馬でその場を去った。一人の犯罪者を斬って捨てたばかりだが、何の感慨も持っていない。
騎士も慣れたもので、それについて特に何も思うことはない。


セレスティア・アドネイドは領地に蔓延る悪を許さぬ性格だが、特に男の為す悪をストイックなまでに許容しない。それは父クレウスを敬愛するあまりに、男に求める理想が高くなったことと関係している。

男に設けたハードルが高くなった分、要求を満たさぬ男・・・特に人の道を外れたような悪人に対する当たりはキツイ。強い嫌悪感すら抱いている。
それが自分の家が治める領地に蔓延る犯罪者達ともなれば、一人とて残しておきたくないとすらセレスティアは考えていた。
黒くてカサカサ素早く動く部屋の気持ち悪い生き物を

法の裁きに任せても、野盗達は処刑または鉱山などでの強制労働だっただろう。
強制労働は一応刑期が設けられるが、過酷な状況での労働故に大体は数年で死ぬという実質処刑に近い罰だ。

だが、セレスティアはそれすら認めない。
情けない男、それも犯罪者など領地には一時も長くいさせるべきではないと思っている。
少年だとて同じこと。家業であったとしても野盗として活動したのなら、もう許容することはできない。更生の余地などないと考える。
だから野盗達は取り締まりの際、抵抗してきたことにして年齢問わず全員を殺した。
もし女が野盗の中にいたのなら、それらは法を裁きに任せたであろう。


「・・・情けない」


セレスティアは、斬り捨てた野盗達の死体を見下ろして呟いた。
一人は子を殺された怒りに任せて襲い掛かってきたが、それ以外の野盗は辺境伯騎士団だとわかるや否や投降しようとしたり、逃走を図った。セレスティアからすれば、とことん落胆させられた相手だ。

弱い者にはどこまでも図に乗り、強者には即座に平伏す。
本当に父クレウスと同じ男なのかと信じられなくなるほどの、実に情けない生き物だ。


「やはりシュウ様・・・私にはあの方しかいませんわね」


シュウを結婚相手と認めてくれるのはいつになるのだろう。
クレウス達の審査が終わるまでは、セレスティアは待つことしかできない。


「あらやだ・・・気持ちがくすぶってきましたわ。また発散しないと・・・」


セレスティアは、今しがた滅ぼした野盗団以外に目ぼしい『狩り』の相手がいないか探そうと思った。
セレスティアにとって犯罪に走った男など、ストレス発散の相手でしかない。

セレスティア・アドネイドは、実に歪んだ危ないお嬢様だったが、大義名分さえあれば喜んで力による行使に出るシュウとはある意味似たところがあるかもしれなかった。
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