297 / 452
歪んだお嬢様
しおりを挟む
突如として始まったセレスティアによる野盗狩りは、結果として野盗の全員死亡で幕を閉じた。
降伏も謝罪も意に介さず斬り伏せた、一方的な殺戮だ。
「お嬢。後のことは任せておいてくだせぇ」
「お願いしますわね」
騎士の言葉に甘え、セレスティアは剣についた血を拭い、サッと馬でその場を去った。一人の犯罪者を斬って捨てたばかりだが、何の感慨も持っていない。
騎士も慣れたもので、それについて特に何も思うことはない。
セレスティア・アドネイドは領地に蔓延る悪を許さぬ性格だが、特に男の為す悪をストイックなまでに許容しない。それは父クレウスを敬愛するあまりに、男に求める理想が高くなったことと関係している。
男に設けたハードルが高くなった分、要求を満たさぬ男・・・特に人の道を外れたような悪人に対する当たりはキツイ。強い嫌悪感すら抱いている。
それが自分の家が治める領地に蔓延る犯罪者達ともなれば、一人とて残しておきたくないとすらセレスティアは考えていた。
黒くてカサカサ素早く動く部屋の気持ち悪い生き物を
法の裁きに任せても、野盗達は処刑または鉱山などでの強制労働だっただろう。
強制労働は一応刑期が設けられるが、過酷な状況での労働故に大体は数年で死ぬという実質処刑に近い罰だ。
だが、セレスティアはそれすら認めない。
情けない男、それも犯罪者など領地には一時も長くいさせるべきではないと思っている。
少年だとて同じこと。家業であったとしても野盗として活動したのなら、もう許容することはできない。更生の余地などないと考える。
だから野盗達は取り締まりの際、抵抗してきたことにして年齢問わず全員を殺した。
もし女が野盗の中にいたのなら、それらは法を裁きに任せたであろう。
「・・・情けない」
セレスティアは、斬り捨てた野盗達の死体を見下ろして呟いた。
一人は子を殺された怒りに任せて襲い掛かってきたが、それ以外の野盗は辺境伯騎士団だとわかるや否や投降しようとしたり、逃走を図った。セレスティアからすれば、とことん落胆させられた相手だ。
弱い者にはどこまでも図に乗り、強者には即座に平伏す。
本当に父クレウスと同じ男なのかと信じられなくなるほどの、実に情けない生き物だ。
「やはりシュウ様・・・私にはあの方しかいませんわね」
シュウを結婚相手と認めてくれるのはいつになるのだろう。
クレウス達の審査が終わるまでは、セレスティアは待つことしかできない。
「あらやだ・・・気持ちがくすぶってきましたわ。また発散しないと・・・」
セレスティアは、今しがた滅ぼした野盗団以外に目ぼしい『狩り』の相手がいないか探そうと思った。
セレスティアにとって犯罪に走った男など、ストレス発散の相手でしかない。
セレスティア・アドネイドは、実に歪んだ危ないお嬢様だったが、大義名分さえあれば喜んで力による行使に出るシュウとはある意味似たところがあるかもしれなかった。
降伏も謝罪も意に介さず斬り伏せた、一方的な殺戮だ。
「お嬢。後のことは任せておいてくだせぇ」
「お願いしますわね」
騎士の言葉に甘え、セレスティアは剣についた血を拭い、サッと馬でその場を去った。一人の犯罪者を斬って捨てたばかりだが、何の感慨も持っていない。
騎士も慣れたもので、それについて特に何も思うことはない。
セレスティア・アドネイドは領地に蔓延る悪を許さぬ性格だが、特に男の為す悪をストイックなまでに許容しない。それは父クレウスを敬愛するあまりに、男に求める理想が高くなったことと関係している。
男に設けたハードルが高くなった分、要求を満たさぬ男・・・特に人の道を外れたような悪人に対する当たりはキツイ。強い嫌悪感すら抱いている。
それが自分の家が治める領地に蔓延る犯罪者達ともなれば、一人とて残しておきたくないとすらセレスティアは考えていた。
黒くてカサカサ素早く動く部屋の気持ち悪い生き物を
法の裁きに任せても、野盗達は処刑または鉱山などでの強制労働だっただろう。
強制労働は一応刑期が設けられるが、過酷な状況での労働故に大体は数年で死ぬという実質処刑に近い罰だ。
だが、セレスティアはそれすら認めない。
情けない男、それも犯罪者など領地には一時も長くいさせるべきではないと思っている。
少年だとて同じこと。家業であったとしても野盗として活動したのなら、もう許容することはできない。更生の余地などないと考える。
だから野盗達は取り締まりの際、抵抗してきたことにして年齢問わず全員を殺した。
もし女が野盗の中にいたのなら、それらは法を裁きに任せたであろう。
「・・・情けない」
セレスティアは、斬り捨てた野盗達の死体を見下ろして呟いた。
一人は子を殺された怒りに任せて襲い掛かってきたが、それ以外の野盗は辺境伯騎士団だとわかるや否や投降しようとしたり、逃走を図った。セレスティアからすれば、とことん落胆させられた相手だ。
弱い者にはどこまでも図に乗り、強者には即座に平伏す。
本当に父クレウスと同じ男なのかと信じられなくなるほどの、実に情けない生き物だ。
「やはりシュウ様・・・私にはあの方しかいませんわね」
シュウを結婚相手と認めてくれるのはいつになるのだろう。
クレウス達の審査が終わるまでは、セレスティアは待つことしかできない。
「あらやだ・・・気持ちがくすぶってきましたわ。また発散しないと・・・」
セレスティアは、今しがた滅ぼした野盗団以外に目ぼしい『狩り』の相手がいないか探そうと思った。
セレスティアにとって犯罪に走った男など、ストレス発散の相手でしかない。
セレスティア・アドネイドは、実に歪んだ危ないお嬢様だったが、大義名分さえあれば喜んで力による行使に出るシュウとはある意味似たところがあるかもしれなかった。
0
お気に入りに追加
201
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について
ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに……
しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。
NTRは始まりでしか、なかったのだ……
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)
幻田恋人
恋愛
夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。
でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。
親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。
童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。
許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…
僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる