294 / 456
シュウの観察 その10
しおりを挟む
グレース隊によるシュウの観察はより熱を帯びていった。
もはやシュウという一人の人間についての徹底解明すると言わんばかりの情熱で、彼の全てを見逃すまいといったほどだった。
そんなグレース隊はシュウの治療魔法に目を付けた。
シュウが神官として『光の戦士達』に属していたとき、最後こそはあまり出番は無かったが最初は回復役として活躍していたことは資料で確認していた。
シュウの治療の能力のレベルは本職の回復術師や聖女のそれには劣るだろう程度の認識でいたのだが、それが覆る出来事が起こる。
シュウ達が街で滞在したとき、シュウの目の前で転んで怪我をした女児の傷を魔法で癒したのだが、グレース隊は「どれほどの治療能力があるのか」を確認するために、シュウ達がその場を去った後で女児に傷跡を見せてくれと迫った。
「お嬢ちゃん、良かったら今怪我したところを僕に見せてくれないかなぁ?(はぁはぁ)」
「ひっ・・・!」
あまりに切羽詰まって恐怖さえ感じるほどの勢いで迫られ、女児はパニックになりそうだったがどうにか宥めて治療痕を見せてもらうグレース隊。
「こ、これは・・・!」
グレース隊の回復術師を務める隊員は、治療痕を見て驚愕した。
「これは・・・恐るべきほどに高度な治療魔法の腕だ。普通は怪我を治療しても、どうしても大なり小なりその跡が残るもんだ。だがこの治療痕にはそれがほとんど見られない。これは・・・治療魔法の技術革新とさえ言えるレベルだぞ・・・?聖女ならともかく、どうして一介の神官が・・・」
回復術師の隊員は、目を充血させ興奮気味に女児の治療痕を見つめながら語る。
「神は二物を与えずと言うが、シュウ様はまさに二も三も授かった奇跡の人ということか・・・」
ついにシュウを堂々と様付けするようになったグレースは、惚けた表情で言った。
「不思議だとは思っていた。どうして神官とはいえ、一介の神官程度と聖女が駆け落ちをしたのかと。個人的な結びつきだけでなく、シュウの治療魔法の腕からするに他に何か事情があるのかも・・・」
「関係ないだろ。身分差があるから駆け落ちするんだろ」
「そういうことじゃなくて、もしかしたらシュウは神官以上の隠された権力を持っていたんじゃないかとだな・・・。むしろ、あれだけの治療の腕があれば冒険者なんてリスキーな仕事しなくても十分暮らしていけるのに、神官程度で収まっているというのが不自然なんだ」
「能力があるやつが必ずしも評価されるとは限らないだろ」
「いやでもこの治療のレベルの高さはそんなものでは」
「「貴様ら!そこを動くな!!」」
シュウの治療魔法についてあれこれ勝手に盛り上がるグレース隊のところへ、女児に如何わしいことを迫っていると通報を受けた自警団がやってきた。
中折れ帽を被った強面ばかりの男達が、興奮しながら女児に迫っている図にしか見えなかったから仕方が無かった。
「シュウ様・・・底知れぬ力を持ち、どこまでもミステリアスなお人だ・・・!知りたい・・・もっと知りたい!」
グレースは自警団から全力疾走で逃げながら、恍惚とした表情でそう叫んでいた。
もはやシュウという一人の人間についての徹底解明すると言わんばかりの情熱で、彼の全てを見逃すまいといったほどだった。
そんなグレース隊はシュウの治療魔法に目を付けた。
シュウが神官として『光の戦士達』に属していたとき、最後こそはあまり出番は無かったが最初は回復役として活躍していたことは資料で確認していた。
シュウの治療の能力のレベルは本職の回復術師や聖女のそれには劣るだろう程度の認識でいたのだが、それが覆る出来事が起こる。
シュウ達が街で滞在したとき、シュウの目の前で転んで怪我をした女児の傷を魔法で癒したのだが、グレース隊は「どれほどの治療能力があるのか」を確認するために、シュウ達がその場を去った後で女児に傷跡を見せてくれと迫った。
「お嬢ちゃん、良かったら今怪我したところを僕に見せてくれないかなぁ?(はぁはぁ)」
「ひっ・・・!」
あまりに切羽詰まって恐怖さえ感じるほどの勢いで迫られ、女児はパニックになりそうだったがどうにか宥めて治療痕を見せてもらうグレース隊。
「こ、これは・・・!」
グレース隊の回復術師を務める隊員は、治療痕を見て驚愕した。
「これは・・・恐るべきほどに高度な治療魔法の腕だ。普通は怪我を治療しても、どうしても大なり小なりその跡が残るもんだ。だがこの治療痕にはそれがほとんど見られない。これは・・・治療魔法の技術革新とさえ言えるレベルだぞ・・・?聖女ならともかく、どうして一介の神官が・・・」
回復術師の隊員は、目を充血させ興奮気味に女児の治療痕を見つめながら語る。
「神は二物を与えずと言うが、シュウ様はまさに二も三も授かった奇跡の人ということか・・・」
ついにシュウを堂々と様付けするようになったグレースは、惚けた表情で言った。
「不思議だとは思っていた。どうして神官とはいえ、一介の神官程度と聖女が駆け落ちをしたのかと。個人的な結びつきだけでなく、シュウの治療魔法の腕からするに他に何か事情があるのかも・・・」
「関係ないだろ。身分差があるから駆け落ちするんだろ」
「そういうことじゃなくて、もしかしたらシュウは神官以上の隠された権力を持っていたんじゃないかとだな・・・。むしろ、あれだけの治療の腕があれば冒険者なんてリスキーな仕事しなくても十分暮らしていけるのに、神官程度で収まっているというのが不自然なんだ」
「能力があるやつが必ずしも評価されるとは限らないだろ」
「いやでもこの治療のレベルの高さはそんなものでは」
「「貴様ら!そこを動くな!!」」
シュウの治療魔法についてあれこれ勝手に盛り上がるグレース隊のところへ、女児に如何わしいことを迫っていると通報を受けた自警団がやってきた。
中折れ帽を被った強面ばかりの男達が、興奮しながら女児に迫っている図にしか見えなかったから仕方が無かった。
「シュウ様・・・底知れぬ力を持ち、どこまでもミステリアスなお人だ・・・!知りたい・・・もっと知りたい!」
グレースは自警団から全力疾走で逃げながら、恍惚とした表情でそう叫んでいた。
0
お気に入りに追加
199
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる