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シュウの観察 その5

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「シュウ様ーっ!」


ひとしきり襲撃してきた魔物の殲滅が終わった頃に、フローラが大声でシュウの名を叫び駆けてきた。


「シュウ様。魔物のほうは片付きましたか?」


「ええ。それで村の損害の方は・・・」


「恐らく、これまでに見聞きしたところ大きな被害は出ていないものと見ています。とりあえず怪我人がいたら私が治療するので広間の方へ集めておくように伝えておきました。シュウ様の迅速なご活躍のお陰で、被害がこれだけで済みましたね」


「うーん・・・私以外にも戦った者がいるかのような感じはありますが、まぁ、村に被害が大きく出なかったのならそれで良いでしょう」


直に目で見たわけではないが、何となくグレース隊の活躍があったことを肌で実感していたシュウ。自分以外に戦っていた者がいるとして、何故姿を現さないのかと疑問があったが、村の人間の犠牲者がいないだろうことを知ると、ひとまずそれについては置いておくかと考えた。


「ところでシュウ様。そろそろ何かお召し物のほうを・・・」


ここでようやくシュウは自分が全裸であることに気付き、「キャーッ」と大きく悲鳴を上げた。


-----

一方、グレースはシュウに見つからない程度に距離を取った状態から、望遠鏡越しにシュウの肉体に釘付けになって呆けていた。


「ちょ、何をシュウの体をジロジロ見てるんすか。ホモなんすか?」


マートがドン引きしながら問うと、グレースは真剣な表情のまま答える。


「そんなんじゃない。見ろよあの無駄のない締まった体を。そしてあの」


「やっぱりホモじゃないか」


マースは呆れ返るが、グレースの目はシュウを捉えたままだ。

グレース達はシュウ達の観察をしているが、シュウが戦闘をしているところを見たのはこれが初めてだった。
元『光の戦士達』のメンバーであること、神官であること、徒手空拳による戦闘スタイルであることなど、詳細な経歴を調べ上げており、大まかな人物像は既に理解している・・・つもりだった。


「俺としたことが。やっぱりしっかり見て見ねぇとわからねぇもんだな。全く・・・」


グレースは今回の魔物の襲撃から殲滅するまでの僅かな時間の間に、これまでシュウに抱いていた印象を大きく変えていた。


「え、何が?」


グレースの独り言を聞いたマートが怪訝な顔をする。


「シュウのあの鍛え抜かれた体と身のこなしを見ただろ。あれは只者じゃない」


そう語るグレースは、いつもと同じようでいて少し興奮しているようにマートには見えた。


「まぁ、そりゃただの神官には見えねぇっすね。とはいえ、元勇者パーティーとして、魔王軍と前線で戦っていたんで当然っちゃ当然かもだけど・・・」


「そうじゃない」


「えっ」


「それだけじゃない。あの男・・・ただレベルの高い冒険者、ってわけじゃない。あれはもっと・・・長い時間をかけて研ぎ澄まされたダイヤみたいなものだ」


「は?」


そう言うグレースの目はどこか虚ろで、頬は紅潮し、息も荒い。これまでシュウのことを嫌悪感も露わに見ていた彼は、今ではまるで狂信しているアイドルを見ているような目をしている。
そんなグレースを見てマートは「やっぱりホモじゃないか」と思った。
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