289 / 452
シュウの観察 その5
しおりを挟む
「シュウ様ーっ!」
ひとしきり襲撃してきた魔物の殲滅が終わった頃に、フローラが大声でシュウの名を叫び駆けてきた。
「シュウ様。魔物のほうは片付きましたか?」
「ええ。それで村の損害の方は・・・」
「恐らく、これまでに見聞きしたところ大きな被害は出ていないものと見ています。とりあえず怪我人がいたら私が治療するので広間の方へ集めておくように伝えておきました。シュウ様の迅速なご活躍のお陰で、被害がこれだけで済みましたね」
「うーん・・・私以外にも戦った者がいるかのような感じはありますが、まぁ、村に被害が大きく出なかったのならそれで良いでしょう」
直に目で見たわけではないが、何となくグレース隊の活躍があったことを肌で実感していたシュウ。自分以外に戦っていた者がいるとして、何故姿を現さないのかと疑問があったが、村の人間の犠牲者がいないだろうことを知ると、ひとまずそれについては置いておくかと考えた。
「ところでシュウ様。そろそろ何かお召し物のほうを・・・」
ここでようやくシュウは自分が全裸であることに気付き、「キャーッ」と大きく悲鳴を上げた。
-----
一方、グレースはシュウに見つからない程度に距離を取った状態から、望遠鏡越しにシュウの肉体に釘付けになって呆けていた。
「ちょ、何をシュウの体をジロジロ見てるんすか。ホモなんすか?」
マートがドン引きしながら問うと、グレースは真剣な表情のまま答える。
「そんなんじゃない。見ろよあの無駄のない締まった体を。そしてあの」
「やっぱりホモじゃないか」
マースは呆れ返るが、グレースの目はシュウを捉えたままだ。
グレース達はシュウ達の観察をしているが、シュウが戦闘をしているところを見たのはこれが初めてだった。
元『光の戦士達』のメンバーであること、神官であること、徒手空拳による戦闘スタイルであることなど、詳細な経歴を調べ上げており、大まかな人物像は既に理解している・・・つもりだった。
「俺としたことが。やっぱりしっかり見て見ねぇとわからねぇもんだな。全く・・・」
グレースは今回の魔物の襲撃から殲滅するまでの僅かな時間の間に、これまでシュウに抱いていた印象を大きく変えていた。
「え、何が?」
グレースの独り言を聞いたマートが怪訝な顔をする。
「シュウのあの鍛え抜かれた体と身のこなしを見ただろ。あれは只者じゃない」
そう語るグレースは、いつもと同じようでいて少し興奮しているようにマートには見えた。
「まぁ、そりゃただの神官には見えねぇっすね。とはいえ、元勇者パーティーとして、魔王軍と前線で戦っていたんで当然っちゃ当然かもだけど・・・」
「そうじゃない」
「えっ」
「それだけじゃない。あの男・・・ただレベルの高い冒険者、ってわけじゃない。あれはもっと・・・長い時間をかけて研ぎ澄まされたダイヤみたいなものだ」
「は?」
そう言うグレースの目はどこか虚ろで、頬は紅潮し、息も荒い。これまでシュウのことを嫌悪感も露わに見ていた彼は、今ではまるで狂信しているアイドルを見ているような目をしている。
そんなグレースを見てマートは「やっぱりホモじゃないか」と思った。
ひとしきり襲撃してきた魔物の殲滅が終わった頃に、フローラが大声でシュウの名を叫び駆けてきた。
「シュウ様。魔物のほうは片付きましたか?」
「ええ。それで村の損害の方は・・・」
「恐らく、これまでに見聞きしたところ大きな被害は出ていないものと見ています。とりあえず怪我人がいたら私が治療するので広間の方へ集めておくように伝えておきました。シュウ様の迅速なご活躍のお陰で、被害がこれだけで済みましたね」
「うーん・・・私以外にも戦った者がいるかのような感じはありますが、まぁ、村に被害が大きく出なかったのならそれで良いでしょう」
直に目で見たわけではないが、何となくグレース隊の活躍があったことを肌で実感していたシュウ。自分以外に戦っていた者がいるとして、何故姿を現さないのかと疑問があったが、村の人間の犠牲者がいないだろうことを知ると、ひとまずそれについては置いておくかと考えた。
「ところでシュウ様。そろそろ何かお召し物のほうを・・・」
ここでようやくシュウは自分が全裸であることに気付き、「キャーッ」と大きく悲鳴を上げた。
-----
一方、グレースはシュウに見つからない程度に距離を取った状態から、望遠鏡越しにシュウの肉体に釘付けになって呆けていた。
「ちょ、何をシュウの体をジロジロ見てるんすか。ホモなんすか?」
マートがドン引きしながら問うと、グレースは真剣な表情のまま答える。
「そんなんじゃない。見ろよあの無駄のない締まった体を。そしてあの」
「やっぱりホモじゃないか」
マースは呆れ返るが、グレースの目はシュウを捉えたままだ。
グレース達はシュウ達の観察をしているが、シュウが戦闘をしているところを見たのはこれが初めてだった。
元『光の戦士達』のメンバーであること、神官であること、徒手空拳による戦闘スタイルであることなど、詳細な経歴を調べ上げており、大まかな人物像は既に理解している・・・つもりだった。
「俺としたことが。やっぱりしっかり見て見ねぇとわからねぇもんだな。全く・・・」
グレースは今回の魔物の襲撃から殲滅するまでの僅かな時間の間に、これまでシュウに抱いていた印象を大きく変えていた。
「え、何が?」
グレースの独り言を聞いたマートが怪訝な顔をする。
「シュウのあの鍛え抜かれた体と身のこなしを見ただろ。あれは只者じゃない」
そう語るグレースは、いつもと同じようでいて少し興奮しているようにマートには見えた。
「まぁ、そりゃただの神官には見えねぇっすね。とはいえ、元勇者パーティーとして、魔王軍と前線で戦っていたんで当然っちゃ当然かもだけど・・・」
「そうじゃない」
「えっ」
「それだけじゃない。あの男・・・ただレベルの高い冒険者、ってわけじゃない。あれはもっと・・・長い時間をかけて研ぎ澄まされたダイヤみたいなものだ」
「は?」
そう言うグレースの目はどこか虚ろで、頬は紅潮し、息も荒い。これまでシュウのことを嫌悪感も露わに見ていた彼は、今ではまるで狂信しているアイドルを見ているような目をしている。
そんなグレースを見てマートは「やっぱりホモじゃないか」と思った。
0
お気に入りに追加
200
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について
ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに……
しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。
NTRは始まりでしか、なかったのだ……
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる