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シュウの観察
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ライル達があれこれ揉めていたその頃、シュウとフローラの二人は特に障害にぶつかることもなく、順調に目的地に向かって歩みを進めていた・・・
かに見えた。
「行けーっ!そのまま行けっ!!ケンタウロスケアルッッッ!!」
シュウ達がいるのは通りがかったとある街にある栄えた競馬場。
大声援に包まれたそこでは、丁度レースが行われていた。
「良いぞ!そのままだ!逃げきれっっ!!」
シュウはそこで馬券を握り締め、(何故か裸の)他の客に交じりながらあらんかぎりの声を絞り出し、馬場に向けて声援を送っていた。
普段そこまで大声を上げることのないシュウにしては、あまり聞くことのない大声だった。それだけシュウは今、レースに夢中になっていた。
「いけっ!そこだっ!・・・ああっ!?馬鹿なっ!!」
自分が賭け、応援していた馬が抜かれ、シュウは衝撃に打ちのめされて呆然とする。
シュウは賭けに負けたのだった。それもそこそこの金をかけていた。
生気のない顔をしたシュウは、馬券を握りしめたままヘロヘロと膝をつく。
「シュウ様、元気を出してください」
がっかりしているシュウに、フローラが心配して声をかけた。
「まさかあんな他の馬より遥かに小さい体の馬に一着を取られてしまうなんて・・・おかしいでしょう物理的に!あああ・・・勝つと思ったのにケンタウロスケアル・・・」
シュウは賭けていた馬の名を呟きながら、悔し気に地面を殴る。
が、そんな怒りは持続せず、次はみるみるうちに顔面を蒼白にさせた。
「路銀のほうを・・・だいぶ使ってしまいました。その、なんと言ったら良いか・・・」
冷静になってシュウは、自分が大金をスッてしまい、この後の旅路に影響が出るような失敗をしてしまったことに気付く。
だが、そんなシュウにフローラは優しく微笑みかけた。
「大丈夫ですシュウ様。私も興味がありまして、シュウ様と違う馬に賭けていたのです。そうしたら的中しました。配当も大きいようなので、路銀に困ることは無さそうです」
「えっっ?あ、本当だ。アキバオーに賭けたんですね・・・って、あの小さい馬に賭けていたんですかっ!?」
レースが始まる前、パドックを見ながら「勝つ馬の見定め方」を競馬常連客として得意気にフローラに高説していたシュウは、恥ずかし気に顔を伏せる。
路銀はどうにかなったが、プライドが大きく傷ついた。
そんなシュウ達を望遠鏡で眺めているのは、当主の命令で彼を観察している騎士グレース。
グレースは隊を率いてシュウの常に当人達に見つからないように距離を置きながら、昼夜問わず観察を続けていた。
「何だアイツは。とても追われている身とは思えないな」
呆れたように言うグレースに、同じように望遠鏡で観察している部下のマースが答える。
「道中、酒場とかでも賭けポーカーやっている客がいたら、そこに交じったりしてますよね。どうも賭け事で好きで我慢が出来ないという、ギャンブル狂ですな」
グレースが理解できんとばかりに頭を振る。
「理解できん。そんなことしている場合じゃないだろう」
「わかっているけどやめられない。そういうものなんですよ。そこで理性がきちんと働くのが必然なら、ギャンブルで借金をする人間はいないでしょう。生活が、命が掛かっていても、やりたいやつはやります。それがきっとアイツです」
「そんなやつがお嬢様の想い人なのか・・・なんて嘆かわしい。唾棄すべき人間だ」
グレースは自身の想い人であり、仕えるべき人であるセレスティアの顔を思い浮かべながら嘆いた。
そんなグレースにマートは咳払いをしてから言った。
「一応言っておきますが、我がグレース隊にもギャンブルで痛い目にあった者はおります。ついでに破産経験のある者も」
「えっ」
「あとご領主様も昔は大変帝都のカジノに入れ込んでいた時期があったとか。奥方様にしこたまお仕置きされて、どうにか今は我慢出来ているようですが」
「・・・」
「唾棄すべき人間・・・と言ったことは、聞かなかったことにしておきますね」
「・・・うん」
かに見えた。
「行けーっ!そのまま行けっ!!ケンタウロスケアルッッッ!!」
シュウ達がいるのは通りがかったとある街にある栄えた競馬場。
大声援に包まれたそこでは、丁度レースが行われていた。
「良いぞ!そのままだ!逃げきれっっ!!」
シュウはそこで馬券を握り締め、(何故か裸の)他の客に交じりながらあらんかぎりの声を絞り出し、馬場に向けて声援を送っていた。
普段そこまで大声を上げることのないシュウにしては、あまり聞くことのない大声だった。それだけシュウは今、レースに夢中になっていた。
「いけっ!そこだっ!・・・ああっ!?馬鹿なっ!!」
自分が賭け、応援していた馬が抜かれ、シュウは衝撃に打ちのめされて呆然とする。
シュウは賭けに負けたのだった。それもそこそこの金をかけていた。
生気のない顔をしたシュウは、馬券を握りしめたままヘロヘロと膝をつく。
「シュウ様、元気を出してください」
がっかりしているシュウに、フローラが心配して声をかけた。
「まさかあんな他の馬より遥かに小さい体の馬に一着を取られてしまうなんて・・・おかしいでしょう物理的に!あああ・・・勝つと思ったのにケンタウロスケアル・・・」
シュウは賭けていた馬の名を呟きながら、悔し気に地面を殴る。
が、そんな怒りは持続せず、次はみるみるうちに顔面を蒼白にさせた。
「路銀のほうを・・・だいぶ使ってしまいました。その、なんと言ったら良いか・・・」
冷静になってシュウは、自分が大金をスッてしまい、この後の旅路に影響が出るような失敗をしてしまったことに気付く。
だが、そんなシュウにフローラは優しく微笑みかけた。
「大丈夫ですシュウ様。私も興味がありまして、シュウ様と違う馬に賭けていたのです。そうしたら的中しました。配当も大きいようなので、路銀に困ることは無さそうです」
「えっっ?あ、本当だ。アキバオーに賭けたんですね・・・って、あの小さい馬に賭けていたんですかっ!?」
レースが始まる前、パドックを見ながら「勝つ馬の見定め方」を競馬常連客として得意気にフローラに高説していたシュウは、恥ずかし気に顔を伏せる。
路銀はどうにかなったが、プライドが大きく傷ついた。
そんなシュウ達を望遠鏡で眺めているのは、当主の命令で彼を観察している騎士グレース。
グレースは隊を率いてシュウの常に当人達に見つからないように距離を置きながら、昼夜問わず観察を続けていた。
「何だアイツは。とても追われている身とは思えないな」
呆れたように言うグレースに、同じように望遠鏡で観察している部下のマースが答える。
「道中、酒場とかでも賭けポーカーやっている客がいたら、そこに交じったりしてますよね。どうも賭け事で好きで我慢が出来ないという、ギャンブル狂ですな」
グレースが理解できんとばかりに頭を振る。
「理解できん。そんなことしている場合じゃないだろう」
「わかっているけどやめられない。そういうものなんですよ。そこで理性がきちんと働くのが必然なら、ギャンブルで借金をする人間はいないでしょう。生活が、命が掛かっていても、やりたいやつはやります。それがきっとアイツです」
「そんなやつがお嬢様の想い人なのか・・・なんて嘆かわしい。唾棄すべき人間だ」
グレースは自身の想い人であり、仕えるべき人であるセレスティアの顔を思い浮かべながら嘆いた。
そんなグレースにマートは咳払いをしてから言った。
「一応言っておきますが、我がグレース隊にもギャンブルで痛い目にあった者はおります。ついでに破産経験のある者も」
「えっ」
「あとご領主様も昔は大変帝都のカジノに入れ込んでいた時期があったとか。奥方様にしこたまお仕置きされて、どうにか今は我慢出来ているようですが」
「・・・」
「唾棄すべき人間・・・と言ったことは、聞かなかったことにしておきますね」
「・・・うん」
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