282 / 452
困る死霊使い
しおりを挟む
ライル達が宿屋で話していたそのとき、一匹のコウモリが彼らの近くに止まっていた。
ライル達が会話を切り上げると、コウモリはそのタイミングに合わせて飛び去り、闇夜に姿を溶け込ませる。
コウモリは長く長く飛んで村を出て、やがて遠く離れた森にいる一人の少年の腕に止まった。
その少年はディオンだった。
ディオンは逃走したが、後のライル達の動向を監視するためにコウモリのゾンビを使役し、ライル達の近くに潜ませておいたのである。
そしてコウモリが見た情報を、今ディオンは聞きだしたのだが・・・
「あいつら!身内のトラブルを僕のせいにして片付けたな!?たかが人間の冒険者達の仲違いのために、わざわざ高貴な僕が策など弄するわけがないだろうがっっ!!!!」
これまでとことんライル達にコケにされていたディオンは、ライル達が自分をダシにしてパーティーの崩壊を防いだことをコウモリに聞いて更に激怒した。
「くっ・・・!どうしてたかが人間風情にここまでコケにされることになったんだ!僕はただひっそりと死霊術の練習がしたいだけだったのに・・・!」
ディオンは人間界の侵略に興味もなければ、恨みもない。
彼は死霊術を純粋に高めるべく練習していた。しかも場所は極力他人に迷惑をかけないところを選んでいた。人間への配慮というよりは、目立つことを嫌った故のことであるし、ディオンに人間を尊重する意思は特にない。
知らぬ人間が迷い込み、死霊術の練習の碁聖になってしまっても何とも思わない。
しかし、実際には万に匹敵するゾンビ達が集っていたわりには、地域住民達への直接的被害は少ないほうだったのだ。
しかも練習もそこそこ回数を重ね、満足したと思ったら場所をまた変えるつもりでもいた。あまりゾンビを長い間滞在し続け、魔物の集団を討伐しようと本格的に軍を出されるようになれば、また面倒なことになるからだ。
死霊術を解いて放っておけば、ゾンビはそのうちに腐り地に帰る。
最低限のゾンビだけ手元に残し、身軽になってディオンはまだ別の地で気が向いたときに死霊術の練習に励む。
ディオンからすれば、自分の好きな死霊術の練習をしつつ、周囲にも気を遣っているつもりだった。
こうして各地を転々とし、気ままに旅を繰り返す。
これがディオンのスタイルで、今回もぼちぼちまた違う場所へ移動しようか・・・
そんなことを考えていたのだが、ライルが来てそれをぶち壊しにした。
「僕を侮辱したアイツを許すことはできん・・・関わり合いたくはないが、このままというのも癪だな・・・何より・・・」
ディオンはチラリと目を向けたそこには、鎖で雁字搦めにされ、大木に括りつけられたレイの姿があった。
周囲にはレイを抑えつけようとして、暴れる彼女に無惨に散らされたゾンビ達の残骸が転がっている。
「アイツに関わってから、彼女がおかしくなってしまった」
ディオンは頭を押さえながら、深く溜め息をついた。
ライル達が会話を切り上げると、コウモリはそのタイミングに合わせて飛び去り、闇夜に姿を溶け込ませる。
コウモリは長く長く飛んで村を出て、やがて遠く離れた森にいる一人の少年の腕に止まった。
その少年はディオンだった。
ディオンは逃走したが、後のライル達の動向を監視するためにコウモリのゾンビを使役し、ライル達の近くに潜ませておいたのである。
そしてコウモリが見た情報を、今ディオンは聞きだしたのだが・・・
「あいつら!身内のトラブルを僕のせいにして片付けたな!?たかが人間の冒険者達の仲違いのために、わざわざ高貴な僕が策など弄するわけがないだろうがっっ!!!!」
これまでとことんライル達にコケにされていたディオンは、ライル達が自分をダシにしてパーティーの崩壊を防いだことをコウモリに聞いて更に激怒した。
「くっ・・・!どうしてたかが人間風情にここまでコケにされることになったんだ!僕はただひっそりと死霊術の練習がしたいだけだったのに・・・!」
ディオンは人間界の侵略に興味もなければ、恨みもない。
彼は死霊術を純粋に高めるべく練習していた。しかも場所は極力他人に迷惑をかけないところを選んでいた。人間への配慮というよりは、目立つことを嫌った故のことであるし、ディオンに人間を尊重する意思は特にない。
知らぬ人間が迷い込み、死霊術の練習の碁聖になってしまっても何とも思わない。
しかし、実際には万に匹敵するゾンビ達が集っていたわりには、地域住民達への直接的被害は少ないほうだったのだ。
しかも練習もそこそこ回数を重ね、満足したと思ったら場所をまた変えるつもりでもいた。あまりゾンビを長い間滞在し続け、魔物の集団を討伐しようと本格的に軍を出されるようになれば、また面倒なことになるからだ。
死霊術を解いて放っておけば、ゾンビはそのうちに腐り地に帰る。
最低限のゾンビだけ手元に残し、身軽になってディオンはまだ別の地で気が向いたときに死霊術の練習に励む。
ディオンからすれば、自分の好きな死霊術の練習をしつつ、周囲にも気を遣っているつもりだった。
こうして各地を転々とし、気ままに旅を繰り返す。
これがディオンのスタイルで、今回もぼちぼちまた違う場所へ移動しようか・・・
そんなことを考えていたのだが、ライルが来てそれをぶち壊しにした。
「僕を侮辱したアイツを許すことはできん・・・関わり合いたくはないが、このままというのも癪だな・・・何より・・・」
ディオンはチラリと目を向けたそこには、鎖で雁字搦めにされ、大木に括りつけられたレイの姿があった。
周囲にはレイを抑えつけようとして、暴れる彼女に無惨に散らされたゾンビ達の残骸が転がっている。
「アイツに関わってから、彼女がおかしくなってしまった」
ディオンは頭を押さえながら、深く溜め息をついた。
0
お気に入りに追加
200
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について
ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに……
しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。
NTRは始まりでしか、なかったのだ……
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる