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泥船を漕いでゆけ
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ライルが宿屋で大変なことになっていたその頃、レーナは村の酒場でチビチビと安酒を飲んでいた。
田舎村では元より安酒以外にそうそう置いていないが、今のレーナの経済状況では気軽に高い酒など頼めたものではない。
帝都にいた頃は毎日でも好きな店で好きな酒が飲めるほど羽振りが良かったが、帝都を出てシュウ追跡の旅に出てからというものの、どうにもパーティーの状況が安定しないので迂闊に散財が出来たものではない。
何しろ現在進行形で商人から莫大な損害賠償を請求されている状況なのだ。
レーナは基本的に楽観的な思考を持つが、流石に餓えるかどうかの可能性がチラついてくると慎重にならざるを得ない。
「アイツ、あそこまで馬鹿だったとは・・・」
レーナはぼやき、チビッと酒を口にする。
運が無い。
ただそれだけでは説明がつかないほどのライルの失態によるパーティーの状態の悪化に、レーナは嘆き酒を口にせずにはいられない。
わかってはいたが、シュウがいなくなってから目に見えてライルは暴走し、それを諫めることが出来なくなっている。
シュウがいたときもライルの思いつきや勢いで行動することも多々あったが、それでも何となく良い風に最後は収まっていた。
だが、それもシュウがいたからこそなのだとレーナは痛感した。
兄貴分としてライルを巧みにコントロールしてきたからこそ、『光の戦士達』は破竹の勢いで上り詰めることが出来たのである。
大きな泥船--
今の『光の戦士達』を表す言葉として、今これほどふさわしいものはないだろうとレーナは思った。
間違いなく沈み始めている。浮上できるビジョンがまるで見当たらない。
これまでいくつもの冒険者パーティーを渡り歩いてきたレーナは、現状の『光の戦士達』と同じようなことになり、最後には消滅した例をいくつも見て来た。
それは人間関係だったり、リーダーの暴走だったり、金銭トラブルだったり・・・原因は様々だったが、今のパーティーはその全てを抱えている。
「逃げる・・・」
ふと、さっさと見切りをつけてパーティーを抜けようかという考えがレーナの頭を過ぎる。
それはシュウ追放に加担した自分の決断が間違っていたことを認めることになり、抵抗のある選択ではあったが、それでも誰もが「それは正しい」と言う選択だろう。
レーナもこれまでいくつもの沈みゆくパーティーから、逃げるようにして抜けてきたことが何度もあった。
なんてことはない、今回もそうするだけだ・・・
そう考えるが、その念をレーナは頭から追い払う。
(駄目だ。私の悪い癖だ)
レーナはこれまでいろいろな男と関係を持って来た。何となくそんな気になれば、後のことは考えずに寝た。
関係を持ったことで、パーティーの人間関係の崩壊に繋がるような結果になったことは一度や二度ではない。
そうして自分が原因で崩壊したパーティーから、無責任に抜け出てきたことも数えきれない。
そんなことを繰り返せば悪名が流れ、誰からも敬遠されるが普通だが、レーナの魔法使いとしての才能は抜きん出ていた。だからどれだけのパーティーをクラッシュさせようと、勧誘が途切れたことがない。
だからレーナは所属したパーティーに何が起ころうが、どれだけ消えようが意に介さなかった。
だが、『光の戦士達』は違った。
レーナにしては珍しく長期での所属となっているパーティー。故に彼女からしても思いの外、思い入れが深かった。
決して潰したいとは思わない。むしろ潰さないためなら何でもしたいとすら考えるようになっていた。
だから離れることは駄目だ。
ここで逃げたら、物凄く後悔することになる気がすると、レーナはそう考える。
レーナ自身は認めようとはしないが、シュウの追放に加担したことだって、心の底では物凄く後悔しているのだ。
田舎村では元より安酒以外にそうそう置いていないが、今のレーナの経済状況では気軽に高い酒など頼めたものではない。
帝都にいた頃は毎日でも好きな店で好きな酒が飲めるほど羽振りが良かったが、帝都を出てシュウ追跡の旅に出てからというものの、どうにもパーティーの状況が安定しないので迂闊に散財が出来たものではない。
何しろ現在進行形で商人から莫大な損害賠償を請求されている状況なのだ。
レーナは基本的に楽観的な思考を持つが、流石に餓えるかどうかの可能性がチラついてくると慎重にならざるを得ない。
「アイツ、あそこまで馬鹿だったとは・・・」
レーナはぼやき、チビッと酒を口にする。
運が無い。
ただそれだけでは説明がつかないほどのライルの失態によるパーティーの状態の悪化に、レーナは嘆き酒を口にせずにはいられない。
わかってはいたが、シュウがいなくなってから目に見えてライルは暴走し、それを諫めることが出来なくなっている。
シュウがいたときもライルの思いつきや勢いで行動することも多々あったが、それでも何となく良い風に最後は収まっていた。
だが、それもシュウがいたからこそなのだとレーナは痛感した。
兄貴分としてライルを巧みにコントロールしてきたからこそ、『光の戦士達』は破竹の勢いで上り詰めることが出来たのである。
大きな泥船--
今の『光の戦士達』を表す言葉として、今これほどふさわしいものはないだろうとレーナは思った。
間違いなく沈み始めている。浮上できるビジョンがまるで見当たらない。
これまでいくつもの冒険者パーティーを渡り歩いてきたレーナは、現状の『光の戦士達』と同じようなことになり、最後には消滅した例をいくつも見て来た。
それは人間関係だったり、リーダーの暴走だったり、金銭トラブルだったり・・・原因は様々だったが、今のパーティーはその全てを抱えている。
「逃げる・・・」
ふと、さっさと見切りをつけてパーティーを抜けようかという考えがレーナの頭を過ぎる。
それはシュウ追放に加担した自分の決断が間違っていたことを認めることになり、抵抗のある選択ではあったが、それでも誰もが「それは正しい」と言う選択だろう。
レーナもこれまでいくつもの沈みゆくパーティーから、逃げるようにして抜けてきたことが何度もあった。
なんてことはない、今回もそうするだけだ・・・
そう考えるが、その念をレーナは頭から追い払う。
(駄目だ。私の悪い癖だ)
レーナはこれまでいろいろな男と関係を持って来た。何となくそんな気になれば、後のことは考えずに寝た。
関係を持ったことで、パーティーの人間関係の崩壊に繋がるような結果になったことは一度や二度ではない。
そうして自分が原因で崩壊したパーティーから、無責任に抜け出てきたことも数えきれない。
そんなことを繰り返せば悪名が流れ、誰からも敬遠されるが普通だが、レーナの魔法使いとしての才能は抜きん出ていた。だからどれだけのパーティーをクラッシュさせようと、勧誘が途切れたことがない。
だからレーナは所属したパーティーに何が起ころうが、どれだけ消えようが意に介さなかった。
だが、『光の戦士達』は違った。
レーナにしては珍しく長期での所属となっているパーティー。故に彼女からしても思いの外、思い入れが深かった。
決して潰したいとは思わない。むしろ潰さないためなら何でもしたいとすら考えるようになっていた。
だから離れることは駄目だ。
ここで逃げたら、物凄く後悔することになる気がすると、レーナはそう考える。
レーナ自身は認めようとはしないが、シュウの追放に加担したことだって、心の底では物凄く後悔しているのだ。
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