264 / 452
失敗した勇者 その8
しおりを挟む
ゾンビとは人、魔物問わず、死体のまま蘇り、動くものを指す。
その存在は極めて目撃例が少なく、古くから遭遇した冒険者達も
「生前の記憶をそのまま引き継いでいた」「生前とはまるで別人だった」「そもそも意思の疎通が出来そうになかった」「動物のようだった」「腐ってた」
などなど目撃談も様々であり、その情報はあやふやで実在するかも怪しまれているレベルだ。
現実に間違いなく存在しているのに、どうしてこうも情報があやふやなのかと言うと、やはり知らず知らずのうちに『死体が動く』ことに対しての忌避感が働くのではないかと誰かが言った。
だから間違いなく存在するのに、目撃例もあるのに、人々はゾンビのついての認識を曖昧にしてしまう。「存在するかもわからない」とあえてあやふやな存在にしてしまうことで、ゾンビという存在から目を背けてきたのだ。
ゾンビはそれだけ嫌われているといっていい存在だが、そのせいかいつの間にかゾンビに関して裏付けの取れていない間違った噂が流れるようになっていた。
「噛まれた人間はゾンビの仲間になってしまう」「ゾンビは病原菌により誕生するもの。近づけばいずれその人間もゾンビになる」「語彙力を失う」
八割は誇張、もしくは嘘とされている噂だが、「近づくとゾンビになる」といった類の噂だけはとにかく広く出回り、昔から根強く言われて信じられていた。
ゾンビが出現したという冒険者の目撃談があれば、家ごと捨ててその地から離れると言った話がたびたび聞かれるほどだ。
もちろん、ゾンビに噛まれたり近くにいるだけで仲間になってしまう、といったものは何の根拠もない迷信だ。そんなことがあるのならこの世にはもっと増殖したゾンビがいてもおかしくない。
冒険者ギルドもそれはデマであるとして噂の払拭をしているが、ゾンビに対する強い忌避感からか、そういった噂はまだまだ消え去っていないのが現状だ。田舎なら尚更だった。
だから、いつしか冒険者の間でも「ゾンビ」を見かけても軽々しくそれを口にするなと冒険者ギルドから通達が出るようになった。ゾンビと相対することのある冒険者ではない無知な一般人は、ゾンビの名を聞くだけで混乱して思いも寄らぬ行動に出ることがあるからだ。
折角栄えた町も、ゾンビの噂一つで廃墟になる・・・
為政者や商人にとってこれほど恐ろしい話はないのだ。
「・・・えっ?」
アイラからその話を聞いたライル達は、サッと顔を青ざめさせた。
今ライル達がいる村は、田舎故にゾンビについての正しい知識はほとんどない。近づけばゾンビになり、ゾンビに近づいたライル達もまた既にゾンビになりかけている・・・そのような認識になっていた。
「おいぃぃぃぃぃ!!」
呆然とするライル達の元へ、大声を上げながら御者が走ってくる。既にゾンビについての噂が流れているのを知ってか、怒り心頭である様子だった。
バキィッ
御者はライルの元へ辿り着くなり、問答無用で殴りかかった。
「ゾンビにことについて話すなと言ったのに、話したようだな?!」
「ちょ、ちょっと落ち着いて!」
悪いことをしたと自覚しているライルは、殴られても仕方がないととりあえず御者を宥めるが、御者は構わずライルを何度も殴りつける。
原因はライルの失言であるが故に、呆れ返っているレーナ達はそれを止めるでもなく眺めているだけだったが、ひとしきり殴った後で御者は息も絶え絶えに言った。
「この村はもう駄目だ。人が皆出て行ってしまうし、経済的損失は計り知れん・・・お前には賠償してもらうことになるな」
「え」
その存在は極めて目撃例が少なく、古くから遭遇した冒険者達も
「生前の記憶をそのまま引き継いでいた」「生前とはまるで別人だった」「そもそも意思の疎通が出来そうになかった」「動物のようだった」「腐ってた」
などなど目撃談も様々であり、その情報はあやふやで実在するかも怪しまれているレベルだ。
現実に間違いなく存在しているのに、どうしてこうも情報があやふやなのかと言うと、やはり知らず知らずのうちに『死体が動く』ことに対しての忌避感が働くのではないかと誰かが言った。
だから間違いなく存在するのに、目撃例もあるのに、人々はゾンビのついての認識を曖昧にしてしまう。「存在するかもわからない」とあえてあやふやな存在にしてしまうことで、ゾンビという存在から目を背けてきたのだ。
ゾンビはそれだけ嫌われているといっていい存在だが、そのせいかいつの間にかゾンビに関して裏付けの取れていない間違った噂が流れるようになっていた。
「噛まれた人間はゾンビの仲間になってしまう」「ゾンビは病原菌により誕生するもの。近づけばいずれその人間もゾンビになる」「語彙力を失う」
八割は誇張、もしくは嘘とされている噂だが、「近づくとゾンビになる」といった類の噂だけはとにかく広く出回り、昔から根強く言われて信じられていた。
ゾンビが出現したという冒険者の目撃談があれば、家ごと捨ててその地から離れると言った話がたびたび聞かれるほどだ。
もちろん、ゾンビに噛まれたり近くにいるだけで仲間になってしまう、といったものは何の根拠もない迷信だ。そんなことがあるのならこの世にはもっと増殖したゾンビがいてもおかしくない。
冒険者ギルドもそれはデマであるとして噂の払拭をしているが、ゾンビに対する強い忌避感からか、そういった噂はまだまだ消え去っていないのが現状だ。田舎なら尚更だった。
だから、いつしか冒険者の間でも「ゾンビ」を見かけても軽々しくそれを口にするなと冒険者ギルドから通達が出るようになった。ゾンビと相対することのある冒険者ではない無知な一般人は、ゾンビの名を聞くだけで混乱して思いも寄らぬ行動に出ることがあるからだ。
折角栄えた町も、ゾンビの噂一つで廃墟になる・・・
為政者や商人にとってこれほど恐ろしい話はないのだ。
「・・・えっ?」
アイラからその話を聞いたライル達は、サッと顔を青ざめさせた。
今ライル達がいる村は、田舎故にゾンビについての正しい知識はほとんどない。近づけばゾンビになり、ゾンビに近づいたライル達もまた既にゾンビになりかけている・・・そのような認識になっていた。
「おいぃぃぃぃぃ!!」
呆然とするライル達の元へ、大声を上げながら御者が走ってくる。既にゾンビについての噂が流れているのを知ってか、怒り心頭である様子だった。
バキィッ
御者はライルの元へ辿り着くなり、問答無用で殴りかかった。
「ゾンビにことについて話すなと言ったのに、話したようだな?!」
「ちょ、ちょっと落ち着いて!」
悪いことをしたと自覚しているライルは、殴られても仕方がないととりあえず御者を宥めるが、御者は構わずライルを何度も殴りつける。
原因はライルの失言であるが故に、呆れ返っているレーナ達はそれを止めるでもなく眺めているだけだったが、ひとしきり殴った後で御者は息も絶え絶えに言った。
「この村はもう駄目だ。人が皆出て行ってしまうし、経済的損失は計り知れん・・・お前には賠償してもらうことになるな」
「え」
0
お気に入りに追加
200
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について
ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに……
しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。
NTRは始まりでしか、なかったのだ……
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる