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依存するサーラ その2

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そして、シュウがいなくなった現在に時は戻る。


シュウと離れてから何日も時間が経過し、本来摂取し続けなければならない『シュウ成分』を切らしたサーラは、元の臆病な性格に戻ってしまっていた。
彼女を奮い立たせていたのは、シュウの言葉、視線、存在だ。シュウがいなくては、サーラはちっとも頑張れないのだ。

実のところ、サーラは「臆病者の役立たず」と言われた頃から本質では何も変わっていない。ただ勇気を得るだけの、無茶が出来るだけのエネルギーをシュウから貰っていただけなのだ。

シュウから得られるものもなく、ここに来てゾンビの大群という脅威に直面したサーラの精神は限界に達してしまった。
シュウがいなくとも何とかしてみせる、とギリギリまで勇気を振り絞って戦ってきたが、今となってはもうその勇気は枯渇して、再び湧き上がる気配は全くない。

ここにいるのはもう『剣神』と呼ばれたサーラではなかった。ただ剣を持っただけの臆病者である。



「ちょっと!一体どうしたんすか・・・」


震えて動けないでいるサーラを見て、アリエスは呆然とする。
サーラがシュウに懸想していることは、明らかに他メンバーと距離感の違う態度から何となく察してはいたが、それでもまさかシュウがいなくては何も出来ないところまで依存しているなどとはアリエスは思ってもみなかった。


「シュウ先輩に勇気を貰っていた?これからまた貰いに行くんでしょうが!今だけは踏ん張らないと死ぬッスよ!?」


「・・・駄目だ。もう駄目なんだ。アタシなんてシュウがいなきゃ何も出来ないクソ雑魚ナメクジなんだよ!」


「それさっき聞いたッス!いい加減に立ち上がるッス!」


アリエスが叫ぶが、サーラはイヤイヤと首を横に振って戦うことを放棄する。
いつも強気な態度でいたサーラの変貌ぶりにアリエスは絶句した。その強気な態度も臆病な性格を克服するための裏返しでしかなかったのだが、それを理解していたのは彼女と距離が近かったシュウ、そして細かくパーティーメンバーを観察していたアイラくらいなので知らないのも無理はない。


「アタシはもう・・・戦えない!怖い!敵が怖いんだよぉ!!」


泣き叫ぶようにそう言い放ったサーラに、アリエスは溜め息をついてから落ち着かせるように言い聞かせた。


「わかりました。もう戦わなくていいッスから。とりあえず立ちましょう」


座り込んでいては、レーナ達の攻撃魔法で撃ち漏らした敵が万が一襲って来ても即座に対応できない。アリエスはサーラを戦闘員ではなく、保護すべき一人の民間人だと思って対応することに決めた。
しばし間を置きながら、ゆっくりとサーラが立ち上がると、ソッと落ち着かせるようにアリエスが肩を抱く。


「ここは私達が終わらせるから、私から離れないようにして大人しくしてるッス」


アリエスの言葉に、サーラはコクリと頷く。


(シュウ先輩なら、こうするよね)


アリエスの頭には、今この場にはいない敬愛するシュウのことが浮かんでいた。
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