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臆病者サーラ その19
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「なんだよサーラ・・・マジで俺とやるつもりか?」
剣士は正面から見据えて対峙するサーラに対し、僅かに内心動揺していた。意中の女が、自分以外の男のために、臆病だった自分を奮い立たせて立ち向かってくる。
サーラを再度パーティーに誘いこみ、今度こそ根気強くメンバーとして活躍できるまで待ちつつ、口説き落とそうと考えていた剣士からしてみれば、これほど屈辱的なことはない。
かつて自分が全力でサーラを口説こうとしたのに全く靡くことはなかったというのに、シュウと男としての格が違うのだというのを見せつけられたようで、とても悔しくて仕方が無かったのだ。
「シュウさんには何もさせない!」
そう言ってキッと睨みつけてくるサーラに、剣士は苛立ちを感じる。
自分が迫った時には全く靡かなかったくせに、何がサーラをそうさせるのか!と、強い逆恨みの感情を抱き始めていた。
「そうかよ・・・俺が何かするつもりなら、お前は俺に歯向かうのか?」
剣士は剣をゆっくりと上段に構える。
サーラはそれを見てハッとした。
剣士の構えは彼が得意とする戦闘スタイルに入るためのものであり、それを記憶していたサーラには「脅しじゃなくて俺は本気でやるぞ」というメッセージが伝わった。
「サーラ。確かにお前の剣の腕は凄いよ。練習通りに動けるなら、俺でも勝てるかわからないな。だが、俺のこの剣とお前が持つナマクラじゃあ勝負にならないんだぜ」
剣士の持つ剣はレア物の準一級品と呼べるもの。
対してまだ無名の剣士であるサーラの得物は、中の下と呼べれば良いレベルのものだった。
剣士の剣の付随能力のことを抜いても、まともに打ち合うだけで最初の一撃でサーラの剣は負けて折れてしまうだろう。
互いの得物の話を切り出したのは、剣士なりの警告だった。剣の腕に相当の開きが無ければ、抜き合えばサーラが圧倒的に不利。負けて同然だからだ。
それを理解しているサーラが冷静になり、引っ込んでくれればと思っていた。
「悪いことは言わねぇ。サーラは大人しく引っ込んでな。なに、そっちの色男にちょっとだけ痛い目に遭ってもらうだけだ。それ以上はしねぇさ」
剣士はシュウにちらりと視線を向けてそう言う。
勢いで剣を抜いておいて説得力の無い言葉である。
「シュウには何もさせない!」
真意を知ってか知らずか、サーラは全く退く様子なく変わらず剣士を睨みつける。
そこに剣士が知っている、かつて雑魚敵にすら怯えていた少女はいなかった。脅しは通じない、凄んでもビビらない。
とことんコケにされている状況に、剣士のプライドが大きく刺激された・・・そのタイミングで、ドッと酒場中が笑い声で満たされた。
「モテモテだなシュウ!」
「剣士様よぉ!とことんシュウに負けてるぜぇ!!」
狙い済ましたかのようにわざわざプライドを更に刺激するような野次を飛ばされ、放心していた剣士は一気に羞恥と怒りで顔を真っ赤にさせる。
「・・・そうかよ、そこまで言い切るならもう知らねぇぞ・・・」
剣士は感情のゲージが一気に振り切ったらしく、低い声でそう言うと一歩足を踏み出した。
後のことも、自分が何をしようとしているのかも深く考えずに、感情のみによって行動を起こそうとしていた。
剣士はこれまで何をやるにも順調で、自分の思うがままにやってこられたことが多かったので、挫折というものを知らなかった。故に煽り耐性が低いのだ。
「危ない!」
本気でサーラを斬ろうとしていることを察したシュウは、慌ててサーラの前に躍り出た・・・つもりだった。
「危ないです!」
ドンッ
「んぁっ」
だが、またもサーラに押しのけられ、無様に弾かれてしまう。
「はぁぁぁぁ!!」
サーラは叫ぶと、下段から一気に剣を振り上げた。
上段から振り下ろそうとしている剣士とは正面から打ち合う形になる。
スカンッ
二人の剣がぶつかり合う・・・と思ったその瞬間、剣士の持つ剣がサーラの太刀により真っ二つになってされていた。
剣士は正面から見据えて対峙するサーラに対し、僅かに内心動揺していた。意中の女が、自分以外の男のために、臆病だった自分を奮い立たせて立ち向かってくる。
サーラを再度パーティーに誘いこみ、今度こそ根気強くメンバーとして活躍できるまで待ちつつ、口説き落とそうと考えていた剣士からしてみれば、これほど屈辱的なことはない。
かつて自分が全力でサーラを口説こうとしたのに全く靡くことはなかったというのに、シュウと男としての格が違うのだというのを見せつけられたようで、とても悔しくて仕方が無かったのだ。
「シュウさんには何もさせない!」
そう言ってキッと睨みつけてくるサーラに、剣士は苛立ちを感じる。
自分が迫った時には全く靡かなかったくせに、何がサーラをそうさせるのか!と、強い逆恨みの感情を抱き始めていた。
「そうかよ・・・俺が何かするつもりなら、お前は俺に歯向かうのか?」
剣士は剣をゆっくりと上段に構える。
サーラはそれを見てハッとした。
剣士の構えは彼が得意とする戦闘スタイルに入るためのものであり、それを記憶していたサーラには「脅しじゃなくて俺は本気でやるぞ」というメッセージが伝わった。
「サーラ。確かにお前の剣の腕は凄いよ。練習通りに動けるなら、俺でも勝てるかわからないな。だが、俺のこの剣とお前が持つナマクラじゃあ勝負にならないんだぜ」
剣士の持つ剣はレア物の準一級品と呼べるもの。
対してまだ無名の剣士であるサーラの得物は、中の下と呼べれば良いレベルのものだった。
剣士の剣の付随能力のことを抜いても、まともに打ち合うだけで最初の一撃でサーラの剣は負けて折れてしまうだろう。
互いの得物の話を切り出したのは、剣士なりの警告だった。剣の腕に相当の開きが無ければ、抜き合えばサーラが圧倒的に不利。負けて同然だからだ。
それを理解しているサーラが冷静になり、引っ込んでくれればと思っていた。
「悪いことは言わねぇ。サーラは大人しく引っ込んでな。なに、そっちの色男にちょっとだけ痛い目に遭ってもらうだけだ。それ以上はしねぇさ」
剣士はシュウにちらりと視線を向けてそう言う。
勢いで剣を抜いておいて説得力の無い言葉である。
「シュウには何もさせない!」
真意を知ってか知らずか、サーラは全く退く様子なく変わらず剣士を睨みつける。
そこに剣士が知っている、かつて雑魚敵にすら怯えていた少女はいなかった。脅しは通じない、凄んでもビビらない。
とことんコケにされている状況に、剣士のプライドが大きく刺激された・・・そのタイミングで、ドッと酒場中が笑い声で満たされた。
「モテモテだなシュウ!」
「剣士様よぉ!とことんシュウに負けてるぜぇ!!」
狙い済ましたかのようにわざわざプライドを更に刺激するような野次を飛ばされ、放心していた剣士は一気に羞恥と怒りで顔を真っ赤にさせる。
「・・・そうかよ、そこまで言い切るならもう知らねぇぞ・・・」
剣士は感情のゲージが一気に振り切ったらしく、低い声でそう言うと一歩足を踏み出した。
後のことも、自分が何をしようとしているのかも深く考えずに、感情のみによって行動を起こそうとしていた。
剣士はこれまで何をやるにも順調で、自分の思うがままにやってこられたことが多かったので、挫折というものを知らなかった。故に煽り耐性が低いのだ。
「危ない!」
本気でサーラを斬ろうとしていることを察したシュウは、慌ててサーラの前に躍り出た・・・つもりだった。
「危ないです!」
ドンッ
「んぁっ」
だが、またもサーラに押しのけられ、無様に弾かれてしまう。
「はぁぁぁぁ!!」
サーラは叫ぶと、下段から一気に剣を振り上げた。
上段から振り下ろそうとしている剣士とは正面から打ち合う形になる。
スカンッ
二人の剣がぶつかり合う・・・と思ったその瞬間、剣士の持つ剣がサーラの太刀により真っ二つになってされていた。
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