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臆病者サーラ その18
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それは一瞬の出来事。
魔法使いインディーの放った火炎魔法は、射線上にあるありとあらゆる物を焼き払う強力なものだった。
人のいる建物で使うには最新の注意が要るし、いくら冷静さに欠いていた状態だったとしても、それを殺すつもりのない人間に向かって打つなどあってはならないほどのものである。
それを知るサーラは、ただただ必死でシュウに向かって放たれたそれを何とかしなくてはと思った。
そしてサーラが無心の内に取っていた行動は・・・
「・・・す、すげぇ・・・」
「え、マジ・・・?」
「嘘だろ・・・あんな娘が」
紫電一閃。
サーラは一瞬にして抜刀すると、なんと向かい来る火炎を斬り裂いたのである。
斬り裂かれた炎は一瞬にして勢いを失い、散り散りに周囲を舞って消えた。「おいおい、あれやべぇんじゃねぇか?」と一部のギャラリーが危惧していたインディーの必殺の攻撃魔法は、結果としてギャラリーの何人かが散った火の粉で少しばかり肌を焼き、「熱っ!」と声を上げるかどうか程度で収まってしまった。
「な・・・」
これに驚いたのは魔法を放ったインディー、そしてけしかけた剣士だった。
大きな問題になろうとも、沽券にかけて自分達のコケにしたシュウに対して一矢報いようと放った必殺の魔法が、自分達がかつて無能と侮ったサーラによって無効化されてしまったのだ。
それも炎を斬り裂くという脳筋的な方法で。
「おや、そこの剣士も大したことはありませんでしたが、魔法使いの方も同様にボンクラのようですね」
シュウはサーラの偉業に対して動揺している様子もなく、先ほどまでと同じように・・・いや、心なしか侮るような笑みを浮かべてそう言った。
渾身の魔法を無効化されたインディーはすっかり呆然としてしまい突っ立っているだけだったが、剣士はシュウの挑発に反応して我に返った。
「ちっ、この役立たずが!」
剣士はインディーを詰った後に持っていた剣を鞘から抜き、剣先をシュウに向ける。
「こればかりは使うまいと思っていたが、俺をここまで怒らせたのが悪いんだからな、細目野郎!」
「むっ」
細目野郎と言われて少し傷ついたシュウは、今度は少しばかり痛い目に遭わせてやろうかと、打撃を撃つべく身構えた・・・が。
「危ない!」
「あんっ」
剣を構えたサーラが、シュウを押しのけるようにして前に出る。
あまりの速度と勢いに、思わずシュウは甘い声を上げてなすが儘にされるしかなかった。
剣士が持つ剣はダンジョンで見つけた高ランクの剣であり、一振りするだけで真空刃が放たれるという特殊能力が付随されている。
それを知らぬ者ならば、間合いの外からその真空刃で切り刻まれてしまうその剣を恐ろしさを知っているサーラは、シュウを庇うようにして立ち、剣士と対峙した。
魔物すら・・・まして同じ人間の冒険者となど正面から向き合って戦うことなど出来なかったはずのサーラが、今はシュウのために恐怖を克服し、果敢に敵に挑むようになっていた。
「シュウさんには手を出させない!」
かつて怯えていて雑魚の魔物とすら戦えなかった弱いサーラが、今では自分と違う男のために剣を持って立ちはだかっているのを見て、剣士は怒りで顔を歪ませた。
-----
「おいシュウ。アンタいつの間にか守られている側になってるじゃないのさ。先輩として良いとこ見せるつもりだったんじゃないのかい?」
当事者であるはずなのに、何となく入り込めなくて後ろに引っ込んでいる立ち位置になってしまっているシュウに対して、酒場の女将がそう横から言った。
「・・・いや、唐突にスイッチ入り過ぎなんですよ・・・」
女将の言葉に若干傷ついていたシュウは、そう返すことしか出来なかった。
魔法使いインディーの放った火炎魔法は、射線上にあるありとあらゆる物を焼き払う強力なものだった。
人のいる建物で使うには最新の注意が要るし、いくら冷静さに欠いていた状態だったとしても、それを殺すつもりのない人間に向かって打つなどあってはならないほどのものである。
それを知るサーラは、ただただ必死でシュウに向かって放たれたそれを何とかしなくてはと思った。
そしてサーラが無心の内に取っていた行動は・・・
「・・・す、すげぇ・・・」
「え、マジ・・・?」
「嘘だろ・・・あんな娘が」
紫電一閃。
サーラは一瞬にして抜刀すると、なんと向かい来る火炎を斬り裂いたのである。
斬り裂かれた炎は一瞬にして勢いを失い、散り散りに周囲を舞って消えた。「おいおい、あれやべぇんじゃねぇか?」と一部のギャラリーが危惧していたインディーの必殺の攻撃魔法は、結果としてギャラリーの何人かが散った火の粉で少しばかり肌を焼き、「熱っ!」と声を上げるかどうか程度で収まってしまった。
「な・・・」
これに驚いたのは魔法を放ったインディー、そしてけしかけた剣士だった。
大きな問題になろうとも、沽券にかけて自分達のコケにしたシュウに対して一矢報いようと放った必殺の魔法が、自分達がかつて無能と侮ったサーラによって無効化されてしまったのだ。
それも炎を斬り裂くという脳筋的な方法で。
「おや、そこの剣士も大したことはありませんでしたが、魔法使いの方も同様にボンクラのようですね」
シュウはサーラの偉業に対して動揺している様子もなく、先ほどまでと同じように・・・いや、心なしか侮るような笑みを浮かべてそう言った。
渾身の魔法を無効化されたインディーはすっかり呆然としてしまい突っ立っているだけだったが、剣士はシュウの挑発に反応して我に返った。
「ちっ、この役立たずが!」
剣士はインディーを詰った後に持っていた剣を鞘から抜き、剣先をシュウに向ける。
「こればかりは使うまいと思っていたが、俺をここまで怒らせたのが悪いんだからな、細目野郎!」
「むっ」
細目野郎と言われて少し傷ついたシュウは、今度は少しばかり痛い目に遭わせてやろうかと、打撃を撃つべく身構えた・・・が。
「危ない!」
「あんっ」
剣を構えたサーラが、シュウを押しのけるようにして前に出る。
あまりの速度と勢いに、思わずシュウは甘い声を上げてなすが儘にされるしかなかった。
剣士が持つ剣はダンジョンで見つけた高ランクの剣であり、一振りするだけで真空刃が放たれるという特殊能力が付随されている。
それを知らぬ者ならば、間合いの外からその真空刃で切り刻まれてしまうその剣を恐ろしさを知っているサーラは、シュウを庇うようにして立ち、剣士と対峙した。
魔物すら・・・まして同じ人間の冒険者となど正面から向き合って戦うことなど出来なかったはずのサーラが、今はシュウのために恐怖を克服し、果敢に敵に挑むようになっていた。
「シュウさんには手を出させない!」
かつて怯えていて雑魚の魔物とすら戦えなかった弱いサーラが、今では自分と違う男のために剣を持って立ちはだかっているのを見て、剣士は怒りで顔を歪ませた。
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「おいシュウ。アンタいつの間にか守られている側になってるじゃないのさ。先輩として良いとこ見せるつもりだったんじゃないのかい?」
当事者であるはずなのに、何となく入り込めなくて後ろに引っ込んでいる立ち位置になってしまっているシュウに対して、酒場の女将がそう横から言った。
「・・・いや、唐突にスイッチ入り過ぎなんですよ・・・」
女将の言葉に若干傷ついていたシュウは、そう返すことしか出来なかった。
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