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臆病者サーラ その11

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「はっ・・・サーラが臆病者のままなのは、俺達先輩のせいってか・・・言うねぇ」


頭に血が上っていた男達だったが、それでも魔法使いのほうは流石に職業柄いくらか冷静になることが出来たらしく、怒りで体を一歩乗り出そうとする剣士を手で制しながらそう言った。


「確かに彼女はいくらか剣術そのものは出来るようだけどね。待っていればいずれ使い物になるようになるなんて考えは、捨てたほうがいいよ。そんな期待を抱いたところで、裏切られるだけなんだから。俺達がどれだけ待ったと思ってるんだ」


ビシッと人差し指でサーラを指しながら、魔法使いは言った。
サーラは当時のことを思い出して申し訳ない気持ちになり、泣きそうな顔になる。

しかしシュウは表情も変えずに反論した。


「待った、ですか。才能があるとわかっている初心者の仲間が開花するのを、ただ待っていただけなのですか?フォローして上げることはしなかったのですか?」


小馬鹿にしたように言うシュウに、今度は剣士が食って掛かる。


「俺達は冒険者だぞ!冒険者だったら人に頼らねぇで自分の力で戦えるようになるべきだろうが!というかそれすらできねぇなら冒険者になんてなるべきじゃねぇだろ!」


剣士の言うことももっともなので。さーらは恥ずかし気に顔を俯かせる。
だがシュウはそれにも更に反論する。


「独り立ちできない後輩をフォローして上げるのが仲間であり、先輩がすべきことでしょう。パーティーというのはそういうものです」


「だ~か~ら~・・・」


シュウの反論に、剣士はうんざりしたように言う。


「フォローしても仕切れねぇほどに、そのサーラって女はポンコツなんだって!戦えない剣士に何の価値があるんだよ。お前だって実際にそいつを連れまわしてみろよ。きっと愛想つかすぜ」


俺達と同じようにな、と言って剣士はチラリとサーラに目を向ける。
重ね重ね蔑む視線をぶつけられ、サーラは身を小さくして縮こまる。


「愚かな」


「・・・なに?」


心底呆れたように呟かれたシュウの言葉に、男達は眉を顰めた。


「サーラさんが替えが無いほどに希少な存在であることに、気付いていないのですか?」


「・・・何がだ?胸が大きいのは認めるが」


「大きなおっぱいだけじゃないですよ、サーラさんの素晴らしいところは」


「なに・・・?」


シュウがついつられてサーラの胸を褒める発言をしたので、サーラは顔を赤くして「えっ?」と聞き返そうになる。だがシュウは依然として表情を変えずに話を続けるので、とりあえず突っ込まないでおいた。


「実際にサーラさんの鍛錬を見たことがあるのでしょう?剣術です。私の見立てでは、千人に一人いるかいないかの逸材だと思いますよ。それこそ、何か月、何年かけてでも根気強く開花を待つくらいの価値はあるほどにね」


シュウはそう言って、サーラにニコリと微笑みかけた。


「は・・・?」


呆然とする男達に、シュウはもう一度はっきりと言った。


「私は旅を重ね、いろいろな冒険者と出会ってきましたが、サーラほど圧倒的な才能を感じる剣士はそういませんね。恐らく、貴方がたは二度とサーラほどの才ある者を見つけることは出来ないでしょう。惜しいことをしたと思いますよ」


「・・・!」


シュウの言葉に男達よりも、サーラ自身が驚き、そして言葉を失った。
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