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臆病者サーラ その9
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サーラがシュウとのサシ飲みを前にしてテンパっている中、かつての自分の師である女剣士とのやり取りが頭の中でリフレインしていた。
「サーラ。これは私が教えるものの中で、剣以上に大切なことなんだけどな」
そう言って女剣士が教えたのは、『酒の飲み方』だった。
「酒は飲んでも飲まれるな。酒で失敗するやつはいくらでもいる。どれだけ腕が立つ剣士だって、酒に飲まれて無防備になったところをブスリ・・・なんて例は後を絶たない。ましてサーラのような上物の女なら、悪意を持って酒を飲ませてくるやつだっている。だからサーラ、お前には酒に飲まれない飲み方を教える」
「えっと・・・アタシにはまだ早いと思うんだけど・・・」
このときのサーラはまだ十代前半だった。
冒険者間では特に決まりがあるわけではないが、酒を飲んで良い年齢は15歳以上が相場といった感じだ。
「剣も酒も手に取って早すぎるなんてことはないと私は思うね。むしろどちらも自分の身を守るため覚えることに、早すぎるなんてことはない」
「そんなに危ないものなら、アタシお酒なんて飲まない」
サーラの反論に、女剣士は笑顔を引っ込めて真剣な顔になって言った。
「確かにそりゃ無難だが、世の中には食事だけと言っておきながら、女の飲み物とかにこっそりお酒を混ぜてくる悪い男だっているのさ。酒に耐性がなければ、それだけで男の食い物になっちまう可能性がある。いいから酒は覚えておきな」
「ええっと・・・わかった」
「それにな。酒も悪いものばかりじゃねぇよ。飲んでて楽しいものってのもあるけど、何よりうまく使えるようになれば、これ以上なく頼もしい武器にだってなるのさ。ま、剣と同じだな」
「武器・・・?」
「そうさ。いずれサーラにだって意中の男が出来るかもしれねぇ。まぁサーラは器量良しだから酒になんか頼らなくても大丈夫かもしれねぇが」
そう言いつつ、女剣士がサーラに教えたのは、酒で意中の男を落とす方法だった。
なんてことはない、悪い男が酒で女を篭絡して来ようとするのと同じことだ。
「まぁ、あれこれ言ったけど、お前みたいな美人に誘われりゃあ大概の男は無下にできねぇさ。サシ飲みにさえ誘い込めばこっちのもんだ。しこたま飲ませて酔わせてから、ちょいと誘えば多分ホモじゃなければノってくると思うぜ。サーラも『この人だけはどうしてもモノにしたい』って男が見つかったら、試してみるといいさ」
こんな知識、使わない日があるならそれに越したはない・・・
サーラはそう思っていたが、気が付いたら教えてもらっていた通りにシュウをサシ飲みに誘いこんでしまっていた。
それも自分の悩みの相談をダシにして、である。
サーラはシュウの善意に付け込んで浅はかな真似をしてしまったと、自己嫌悪に陥っていた。
しかもシュウを酔わせたところで、経験したこともない情事に誘うなど小心の自分には出来るはずもないことに冷静になってから気が付いたのである。
「・・・サーラ?」
サーラの様子がおかしいことに疑問を抱いたシュウが、心配そうに顔を覗き込む。
意中のシュウに顔を覗きこまれていることの恥ずかしさも相まって、サーラの思考は停止寸前に追い込まれ、このままどうなってしまうのかと思った・・・そのときだった。
「ん?あそこにいるのは・・・サーラじゃないか?」
近くのテーブルについた他の客が、サーラの姿を見かけてそう言った。
「あ・・・」
サーラはその声に反応して目を向け、そして表情が固まる。
サーラの目に映ったのは、かつて自分が属していた冒険者パーティーのメンバーだったのだ。
「サーラ。これは私が教えるものの中で、剣以上に大切なことなんだけどな」
そう言って女剣士が教えたのは、『酒の飲み方』だった。
「酒は飲んでも飲まれるな。酒で失敗するやつはいくらでもいる。どれだけ腕が立つ剣士だって、酒に飲まれて無防備になったところをブスリ・・・なんて例は後を絶たない。ましてサーラのような上物の女なら、悪意を持って酒を飲ませてくるやつだっている。だからサーラ、お前には酒に飲まれない飲み方を教える」
「えっと・・・アタシにはまだ早いと思うんだけど・・・」
このときのサーラはまだ十代前半だった。
冒険者間では特に決まりがあるわけではないが、酒を飲んで良い年齢は15歳以上が相場といった感じだ。
「剣も酒も手に取って早すぎるなんてことはないと私は思うね。むしろどちらも自分の身を守るため覚えることに、早すぎるなんてことはない」
「そんなに危ないものなら、アタシお酒なんて飲まない」
サーラの反論に、女剣士は笑顔を引っ込めて真剣な顔になって言った。
「確かにそりゃ無難だが、世の中には食事だけと言っておきながら、女の飲み物とかにこっそりお酒を混ぜてくる悪い男だっているのさ。酒に耐性がなければ、それだけで男の食い物になっちまう可能性がある。いいから酒は覚えておきな」
「ええっと・・・わかった」
「それにな。酒も悪いものばかりじゃねぇよ。飲んでて楽しいものってのもあるけど、何よりうまく使えるようになれば、これ以上なく頼もしい武器にだってなるのさ。ま、剣と同じだな」
「武器・・・?」
「そうさ。いずれサーラにだって意中の男が出来るかもしれねぇ。まぁサーラは器量良しだから酒になんか頼らなくても大丈夫かもしれねぇが」
そう言いつつ、女剣士がサーラに教えたのは、酒で意中の男を落とす方法だった。
なんてことはない、悪い男が酒で女を篭絡して来ようとするのと同じことだ。
「まぁ、あれこれ言ったけど、お前みたいな美人に誘われりゃあ大概の男は無下にできねぇさ。サシ飲みにさえ誘い込めばこっちのもんだ。しこたま飲ませて酔わせてから、ちょいと誘えば多分ホモじゃなければノってくると思うぜ。サーラも『この人だけはどうしてもモノにしたい』って男が見つかったら、試してみるといいさ」
こんな知識、使わない日があるならそれに越したはない・・・
サーラはそう思っていたが、気が付いたら教えてもらっていた通りにシュウをサシ飲みに誘いこんでしまっていた。
それも自分の悩みの相談をダシにして、である。
サーラはシュウの善意に付け込んで浅はかな真似をしてしまったと、自己嫌悪に陥っていた。
しかもシュウを酔わせたところで、経験したこともない情事に誘うなど小心の自分には出来るはずもないことに冷静になってから気が付いたのである。
「・・・サーラ?」
サーラの様子がおかしいことに疑問を抱いたシュウが、心配そうに顔を覗き込む。
意中のシュウに顔を覗きこまれていることの恥ずかしさも相まって、サーラの思考は停止寸前に追い込まれ、このままどうなってしまうのかと思った・・・そのときだった。
「ん?あそこにいるのは・・・サーラじゃないか?」
近くのテーブルについた他の客が、サーラの姿を見かけてそう言った。
「あ・・・」
サーラはその声に反応して目を向け、そして表情が固まる。
サーラの目に映ったのは、かつて自分が属していた冒険者パーティーのメンバーだったのだ。
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