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臆病者サーラ その7

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「ふぇ!?」


シュウに指摘されたサーラの口から、思わず変な声が出た。


「何となく、です。覚えがないのでしたら申し訳ありません。私は剣術にはそこまで明るくはないのですが、どうにもサーラの剣には迷いのようなものが感じられてならなかったのです」


「・・・!」


サーラは驚愕していた。
シュウに指摘されたこともそうだが、何より「シュウは心の内面まで自分を見ていてくれている」という事実に対する驚愕だった。

サーラは確かに迷っていた。
自分には剣の才能があると言われるが、実戦でそれを生かすことが出来ないのなら何の意味もない。
役立たずであることが露呈し、『光の戦士たち』から追放される日も遠くないかもしれない・・・というか、その公算が高いほどだ。

冒険者を目指すことはやめようか、そういった迷いが心の中に生じ、それを振り払うために、いつしか鍛錬に乗じて半ばやけくそになって剣を振り続けるようになっていた。
心が乱れているのに、見る人が見ないとわからない程度にしか剣筋が乱れないのは、やはりそれだけサーラの剣術が卓越しているからだったが、しかしそれでもシュウは気付いた。
そしてこれまでも迷いのある太刀筋で鍛錬をしていたのだが、サーラに対して迷いがあるのではないかと指摘してきたのは、彼が初めてだった。


(あぁ・・・やっぱり・・・!)


サーラはこの事実にすら運命を感じた。

シュウはやはり自分のことを理解してくれている。この男になら、心も体もゆだねても良い・・・
サーラはシュウの知らぬところで、そのような重い決断なぞを勝手に下していた。

普段後ろ向きな思考なのに、シュウのことについてはどうにも前向き思考気味になるのは、深く強い愛故だろうか。


ちなみに、シュウはサーラのことを特別鋭く観察していたわけではない。
元々武術の心得があるだけにどうしても体の動きの観察には敏感で、サーラの動きに若干・・・ほんの若干の乱れがあることを嗅ぎ取ったに過ぎない。
胸に気がいかないよう、特に他のところの観察に集中したということもあるが・・・


「迷い・・・確かに、私にはあります」


サーラは、これまで自分に剣を教えてくれた女剣士にすら打ち明けなかったことを口にした。
つい話してしまった・・・といった風ではない。明確にシュウにはこの話をしようと決意してのことだった。


「やはり、そうでしたか」


シュウは若干表情を引き締め、頷いた。


「無理にとは言いませんが、もし良かったら私で良ければ話」
「話、聞いてくれますか!?聞いてくださいッッ!!」


シュウが言葉を紡いだそれにかぶせるように、サーラは食い気味に話しを聞いてくれと言って迫った。
あまりに予想外かつ勢いあるリアクションで迫られたシュウは、冷や汗をかきながら思わず仰け反る。

サーラはここぞとばかりにシュウとの仲を深めようとしていたが、シュウは「何か思っていた展開と違うなぁ」と首を傾げたい気持ちになっていた。
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