追放の破戒僧は女難から逃げられない

臆病者サーラ その３

「あっ・・・」


こっそりパーティーを抜けようか。
そっちに考えが傾いていたそんなタイミングで、これから仲間となるシュウがやってきたことにより、サーラは出鼻をくじかれたようで怯んでしまう。

シュウはそんなサーラに怪訝な目を向けるわけでもなく、ただ優しい笑みを浮かべている。
ライルとは違う印象を持つ男だとサーラは思った。ライルのみならず、ギルドで出会った冒険者の男の多くは、サーラに対してどこか邪な目線を向けてきたからだ。

ライルに至っては結構露骨と言えば露骨だった。顔を見ているようで、チラチラと胸元を見てくるのだ。
そういった視線は、見ている当人以上に見られる側はわかるものであるが、ライルは「気付かれるようわざとやっているのか？」と思うくらいには、頻繁にサーラの胸に目を向けていた。
サーラにというよりは、サーラの胸に話しかけているのでは？と思うくらいだ。

とはいえ実際のところサーラの胸は平均より割と大きい。抜きん出た美貌も相まって、実に良く下心のある男の目を引くのである。
「男なんてそんなもんよ」
かつて剣を教えてくれた女剣士は、サーラが自分に向けてくる男の目線に困っていると相談するとそう言った。
格のある女として見られていることの勲章みたいなものだと思いなと言われたが、気の弱いサーラにそのような割り切りが出来るはずもなく、そんな視線を向けられることに嫌気すらさしていた。


「サーラ。君には期待しているよ」


サーラを勧誘したライルはそのように言っていたが、それは果たしてサーラに対して何を期待しているのか？女としての機能にしか期待していないのではないか？

サーラは自分の悪評が出回っていることを知っている。
ライルはそれを知っていながらにして敢えてサーラを勧誘し、折を見て手籠めにでもしようとしているのではないか？サーラがそう疑心暗鬼になるくらいには、ライルの下心はその目線でミエミエだった。

『光の戦士達』に入団したばかりだが、早くも抜けようかと考えてしまったのには、そんなライルのことも原因に含まれていたりする。

しかし、シュウは違った。
全然サーラに対してそのような目を向けないのだ。

とはいえ実際には胸に目が行かないわけでもないのだが、シュウは本人に露骨に気付かれるようなヘマをしない。
レイスからの言いつけがあるので、パーティーメンバーとの性的接触はNGなのだから、そちら方面のスキャンダルは何があっても避けなければならないからだ。

だがそんなシュウの態度は、サーラには好感的に映った。下心溢れすぎているライルが酷過ぎたというのもあるのかもしれない。

なんとなくだが、サーラはパーティーを抜け出すのを止めた。
思えばこの時から少しずつシュウに惹かれていたのかもしれない。


ちなみにライルの好感度は言わずもがな、この段階で最下層に落ちかけている。