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レウス司教の災難 その2
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『魔族殲滅派』は、長きに渡る魔族との戦争を繰り広げている人類側で、最も勢いのある派閥である。戦争が長引いている分、魔族へのヘイトが溜まっている人間も多いので、憎き魔族を根絶やしにしたいという考えが主流になるのは当然といえば当然だ。
『魔族殲滅派』は一時バロウがその躍進に貢献していた『魔族共生派』によっての減速に伴い、その勢力を回復させていたが、それでもいつまた他の派閥が殲滅派を追撃してくるかわからず、ヤキモキしていたところに現れた希望の星が勇者ライル率いる『光の戦士達』だった。
『光の戦士達』は今、世界最強と噂される冒険者パーティーで、長らく実現することが出来なかった魔族の王・・・魔王を討伐することが出来る可能性を持つ、唯一の希望であると期待されている。
魔王を倒せば魔族達の勢いは大きく減速し、戦局に大きな影響が出るは必然。
そこで殲滅派が誘導し、総力戦に持ち込んででも魔族を畳みかければ、多少の犠牲は出ても人類は魔族に完全勝利することが出来る---。
そのときライル達だけでなく殲滅派の重鎮達も、英雄として永遠に名を刻むことになるだろう。
殲滅派の多くは、利益よりもその名誉を欲してやまない人間が多い。冒険者ギルド長のバースもその一人だ。
冒険者ギルドは冒険者を集い、派遣することにより発生する仲介料を主な収入源としている。ならば対魔族戦が永遠に続き、ひたすら戦地に冒険者を派遣し続けていた方が利益になるはずだが、バースはギルドの利益よりも自身の名誉に固執した。
『戦争を終わらせた栄誉あるギルド長』
バースが求めたのはこの肩書であり、ギルドの利益は二の次だったのだ。
こうなるとギルドの他の幹部は面白くはない。魔王を倒して戦争が終わったとて、満足するのはギルド長のバースだけ。冒険者ギルドは戦争が終わることで冒険者の手が余り、一気に減収に傾くは必須なのだ。
バースが自身の名誉が得られればそれで満足して終わりだろうが、冒険者ギルドを運営していかねばならない幹部たちにしてみれば、新たな収入源を見つけたり運営方式の大幅な転換を迫られたりと負担ばかりが増えて良いことは何もない。
減収ともなれば、幹部たちに流れて来る金も大きく減ることにもなる。
故に冒険者ギルドの幹部の中には、『戦争維持派』にこっそり属している者もおり、勇者ライルの躍進を快く思わない者も大勢いた。
バースはそんな幹部たちにいつ揚げ足を取られるかもわからぬ状況に追われており、いい加減そろそろライル達に結果を出してほしいと思っていたのだ。
殲滅派の幹部の多くがバースのような立ち位置にいる者であるが、皆がライルに期待していた。
それもライルはまだ実行すら確定していない『魔王城強襲計画』により戦況が大きく変わることになるだろうことをほのめかす発言をバースなどにしていたため、なおの事期待感は大きかった。
・・・なのに、その肝心のライルが魔王城を攻略どころか、どこかに勝手に出かけてしまったのである。
失望というより、殲滅派の幹部連中は混乱した。戦争終結目前の大事な局面で、お前一体何してるんだよ?と。
そんな幹部たちのヘイトは、一斉にレウスに向けられることになる。
この中でライルに最も近い立場にいたのが、ライルが無名の頃から親しくしていたレウスだった。『光の戦士達』の動向は、何から何まで細かく報告するくらいだったのから。
だからこそ、レウスがライル達の監督をサボり行方を眩まされてしまったことが、幹部たちの怒りを買った。
ある意味とばっちりと言えなくもない、レウスの災難である。
『魔族殲滅派』は一時バロウがその躍進に貢献していた『魔族共生派』によっての減速に伴い、その勢力を回復させていたが、それでもいつまた他の派閥が殲滅派を追撃してくるかわからず、ヤキモキしていたところに現れた希望の星が勇者ライル率いる『光の戦士達』だった。
『光の戦士達』は今、世界最強と噂される冒険者パーティーで、長らく実現することが出来なかった魔族の王・・・魔王を討伐することが出来る可能性を持つ、唯一の希望であると期待されている。
魔王を倒せば魔族達の勢いは大きく減速し、戦局に大きな影響が出るは必然。
そこで殲滅派が誘導し、総力戦に持ち込んででも魔族を畳みかければ、多少の犠牲は出ても人類は魔族に完全勝利することが出来る---。
そのときライル達だけでなく殲滅派の重鎮達も、英雄として永遠に名を刻むことになるだろう。
殲滅派の多くは、利益よりもその名誉を欲してやまない人間が多い。冒険者ギルド長のバースもその一人だ。
冒険者ギルドは冒険者を集い、派遣することにより発生する仲介料を主な収入源としている。ならば対魔族戦が永遠に続き、ひたすら戦地に冒険者を派遣し続けていた方が利益になるはずだが、バースはギルドの利益よりも自身の名誉に固執した。
『戦争を終わらせた栄誉あるギルド長』
バースが求めたのはこの肩書であり、ギルドの利益は二の次だったのだ。
こうなるとギルドの他の幹部は面白くはない。魔王を倒して戦争が終わったとて、満足するのはギルド長のバースだけ。冒険者ギルドは戦争が終わることで冒険者の手が余り、一気に減収に傾くは必須なのだ。
バースが自身の名誉が得られればそれで満足して終わりだろうが、冒険者ギルドを運営していかねばならない幹部たちにしてみれば、新たな収入源を見つけたり運営方式の大幅な転換を迫られたりと負担ばかりが増えて良いことは何もない。
減収ともなれば、幹部たちに流れて来る金も大きく減ることにもなる。
故に冒険者ギルドの幹部の中には、『戦争維持派』にこっそり属している者もおり、勇者ライルの躍進を快く思わない者も大勢いた。
バースはそんな幹部たちにいつ揚げ足を取られるかもわからぬ状況に追われており、いい加減そろそろライル達に結果を出してほしいと思っていたのだ。
殲滅派の幹部の多くがバースのような立ち位置にいる者であるが、皆がライルに期待していた。
それもライルはまだ実行すら確定していない『魔王城強襲計画』により戦況が大きく変わることになるだろうことをほのめかす発言をバースなどにしていたため、なおの事期待感は大きかった。
・・・なのに、その肝心のライルが魔王城を攻略どころか、どこかに勝手に出かけてしまったのである。
失望というより、殲滅派の幹部連中は混乱した。戦争終結目前の大事な局面で、お前一体何してるんだよ?と。
そんな幹部たちのヘイトは、一斉にレウスに向けられることになる。
この中でライルに最も近い立場にいたのが、ライルが無名の頃から親しくしていたレウスだった。『光の戦士達』の動向は、何から何まで細かく報告するくらいだったのから。
だからこそ、レウスがライル達の監督をサボり行方を眩まされてしまったことが、幹部たちの怒りを買った。
ある意味とばっちりと言えなくもない、レウスの災難である。
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