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釣りあわぬ恋
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アドネイド辺境伯家に仕えるグレースは、二十代半ばでありながらも平均男性よりも低めの身長、そして童顔のために、実年齢よりも遥かに若く見られることが多い。
だが、中身は実戦経験豊富な屈強な戦士で、才能もずば抜けており、最終的には騎士団長まで出世するのではと有望視されている。
そんなグレースが率いるは曲者揃いだが、隠密に長けたグレース小隊。
シュウを追跡、そして対象であるシュウに内密で護衛させるにも適任といえた。
「グレース。しかと頼むぞ」
グレースが命令通りに出発の準備をしようとしていると、人目を忍ぶようにクレウスがやってきてそう言った。
「しっかりとシュウとやらの人間性を確かめ、ティアにふさわしい男がどうかを調査するのだ。ほんの小さな欠点でも見逃すな。余さず記録するように」
目を充血させながら、視線で射殺さんばかりに見つめられながらクレウスに言われ、グレースは苦笑いを浮かべる。
「もしもその男に問題がないとするならば・・・」
渋面しながら言いかけて止まるクレウスに、グレースは恐る恐る訊ねた。
「お嬢様との結婚を・・・お認めになるのですか?」
シュウには既に相手がいるのに?との疑問が沸くが、セレスティアとウィンクの様子を見るに、どうにかしてでも強硬するのだろうなとグレースは思った。
だが、グレースの問いにクレウスは首を小さく横に振った。
「いや、最後は私自ら拷問・・・ではなく、尋問・・・でもなくて、試験を課そうと思う。ウィンクはああ言うが、やはりティアに結婚はまだ二十年は適齢まで早いと思うのだ。早婚で失敗しないように、私は念入りに吟味しようと思う。アドネイド家の一員として受け入れる以上は、厳しい選定があって然るべき。私自らの念入りの吟味の過程でもし間違って死んでしまっても、まぁそれは仕方がないことだ」
最後の最後で不穏な発言があったが、それでもクレウスはセレスティアの結婚にはちっとも前向きではない。その意思を確認したグレースは、わずかに口元を綻ばせた。
グレースは身分違いに恋と自覚しながらも、実はセレスティアに懸想していた。
許されることではないが、心情としてはクレウスに非常に近く、彼女にまだ結婚相手など見つかってほしくないと思っていたのだ。
だからクレウスがセレスティアの結婚を暗に絶対認めない旨を発言したことに、グレースは内心安堵していた。
しかし・・・
「だが、ティアの人を見る目は決して悪くない。だからティアが認めたという、そのシュウという男が気になるのも確かだ」
「え・・・」
ポツリと漏らすように言ったクレウスのその言葉に、グレースはギョッとした。
「私の厳しい吟味にも耐えられるような本物の男なら、あるいは・・・」
「お、お館様・・・?」
ぶつぶつと言うクレウスに、思わずグレースは問いかけようとするが
「まぁなに、全てはこれからだ。時間が経って頭が冷えれば、ウィンクやティアとて考えが変わるかもしれん。いや、そうなってくれ・・・そうなってほしい・・・」
クレウスはそう独り言を呟きながら、フラフラと歩いていってしまった。
グレースは愕然とした。
絶対に認めるはずもないだろうクレウスが、何となくシュウという男を遠からず認めることになる--- クレウスを見ていて、どうにもそんな予感がして拭えなかったのだ。
だが、中身は実戦経験豊富な屈強な戦士で、才能もずば抜けており、最終的には騎士団長まで出世するのではと有望視されている。
そんなグレースが率いるは曲者揃いだが、隠密に長けたグレース小隊。
シュウを追跡、そして対象であるシュウに内密で護衛させるにも適任といえた。
「グレース。しかと頼むぞ」
グレースが命令通りに出発の準備をしようとしていると、人目を忍ぶようにクレウスがやってきてそう言った。
「しっかりとシュウとやらの人間性を確かめ、ティアにふさわしい男がどうかを調査するのだ。ほんの小さな欠点でも見逃すな。余さず記録するように」
目を充血させながら、視線で射殺さんばかりに見つめられながらクレウスに言われ、グレースは苦笑いを浮かべる。
「もしもその男に問題がないとするならば・・・」
渋面しながら言いかけて止まるクレウスに、グレースは恐る恐る訊ねた。
「お嬢様との結婚を・・・お認めになるのですか?」
シュウには既に相手がいるのに?との疑問が沸くが、セレスティアとウィンクの様子を見るに、どうにかしてでも強硬するのだろうなとグレースは思った。
だが、グレースの問いにクレウスは首を小さく横に振った。
「いや、最後は私自ら拷問・・・ではなく、尋問・・・でもなくて、試験を課そうと思う。ウィンクはああ言うが、やはりティアに結婚はまだ二十年は適齢まで早いと思うのだ。早婚で失敗しないように、私は念入りに吟味しようと思う。アドネイド家の一員として受け入れる以上は、厳しい選定があって然るべき。私自らの念入りの吟味の過程でもし間違って死んでしまっても、まぁそれは仕方がないことだ」
最後の最後で不穏な発言があったが、それでもクレウスはセレスティアの結婚にはちっとも前向きではない。その意思を確認したグレースは、わずかに口元を綻ばせた。
グレースは身分違いに恋と自覚しながらも、実はセレスティアに懸想していた。
許されることではないが、心情としてはクレウスに非常に近く、彼女にまだ結婚相手など見つかってほしくないと思っていたのだ。
だからクレウスがセレスティアの結婚を暗に絶対認めない旨を発言したことに、グレースは内心安堵していた。
しかし・・・
「だが、ティアの人を見る目は決して悪くない。だからティアが認めたという、そのシュウという男が気になるのも確かだ」
「え・・・」
ポツリと漏らすように言ったクレウスのその言葉に、グレースはギョッとした。
「私の厳しい吟味にも耐えられるような本物の男なら、あるいは・・・」
「お、お館様・・・?」
ぶつぶつと言うクレウスに、思わずグレースは問いかけようとするが
「まぁなに、全てはこれからだ。時間が経って頭が冷えれば、ウィンクやティアとて考えが変わるかもしれん。いや、そうなってくれ・・・そうなってほしい・・・」
クレウスはそう独り言を呟きながら、フラフラと歩いていってしまった。
グレースは愕然とした。
絶対に認めるはずもないだろうクレウスが、何となくシュウという男を遠からず認めることになる--- クレウスを見ていて、どうにもそんな予感がして拭えなかったのだ。
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