202 / 456
釣りあわぬ恋
しおりを挟む
アドネイド辺境伯家に仕えるグレースは、二十代半ばでありながらも平均男性よりも低めの身長、そして童顔のために、実年齢よりも遥かに若く見られることが多い。
だが、中身は実戦経験豊富な屈強な戦士で、才能もずば抜けており、最終的には騎士団長まで出世するのではと有望視されている。
そんなグレースが率いるは曲者揃いだが、隠密に長けたグレース小隊。
シュウを追跡、そして対象であるシュウに内密で護衛させるにも適任といえた。
「グレース。しかと頼むぞ」
グレースが命令通りに出発の準備をしようとしていると、人目を忍ぶようにクレウスがやってきてそう言った。
「しっかりとシュウとやらの人間性を確かめ、ティアにふさわしい男がどうかを調査するのだ。ほんの小さな欠点でも見逃すな。余さず記録するように」
目を充血させながら、視線で射殺さんばかりに見つめられながらクレウスに言われ、グレースは苦笑いを浮かべる。
「もしもその男に問題がないとするならば・・・」
渋面しながら言いかけて止まるクレウスに、グレースは恐る恐る訊ねた。
「お嬢様との結婚を・・・お認めになるのですか?」
シュウには既に相手がいるのに?との疑問が沸くが、セレスティアとウィンクの様子を見るに、どうにかしてでも強硬するのだろうなとグレースは思った。
だが、グレースの問いにクレウスは首を小さく横に振った。
「いや、最後は私自ら拷問・・・ではなく、尋問・・・でもなくて、試験を課そうと思う。ウィンクはああ言うが、やはりティアに結婚はまだ二十年は適齢まで早いと思うのだ。早婚で失敗しないように、私は念入りに吟味しようと思う。アドネイド家の一員として受け入れる以上は、厳しい選定があって然るべき。私自らの念入りの吟味の過程でもし間違って死んでしまっても、まぁそれは仕方がないことだ」
最後の最後で不穏な発言があったが、それでもクレウスはセレスティアの結婚にはちっとも前向きではない。その意思を確認したグレースは、わずかに口元を綻ばせた。
グレースは身分違いに恋と自覚しながらも、実はセレスティアに懸想していた。
許されることではないが、心情としてはクレウスに非常に近く、彼女にまだ結婚相手など見つかってほしくないと思っていたのだ。
だからクレウスがセレスティアの結婚を暗に絶対認めない旨を発言したことに、グレースは内心安堵していた。
しかし・・・
「だが、ティアの人を見る目は決して悪くない。だからティアが認めたという、そのシュウという男が気になるのも確かだ」
「え・・・」
ポツリと漏らすように言ったクレウスのその言葉に、グレースはギョッとした。
「私の厳しい吟味にも耐えられるような本物の男なら、あるいは・・・」
「お、お館様・・・?」
ぶつぶつと言うクレウスに、思わずグレースは問いかけようとするが
「まぁなに、全てはこれからだ。時間が経って頭が冷えれば、ウィンクやティアとて考えが変わるかもしれん。いや、そうなってくれ・・・そうなってほしい・・・」
クレウスはそう独り言を呟きながら、フラフラと歩いていってしまった。
グレースは愕然とした。
絶対に認めるはずもないだろうクレウスが、何となくシュウという男を遠からず認めることになる--- クレウスを見ていて、どうにもそんな予感がして拭えなかったのだ。
だが、中身は実戦経験豊富な屈強な戦士で、才能もずば抜けており、最終的には騎士団長まで出世するのではと有望視されている。
そんなグレースが率いるは曲者揃いだが、隠密に長けたグレース小隊。
シュウを追跡、そして対象であるシュウに内密で護衛させるにも適任といえた。
「グレース。しかと頼むぞ」
グレースが命令通りに出発の準備をしようとしていると、人目を忍ぶようにクレウスがやってきてそう言った。
「しっかりとシュウとやらの人間性を確かめ、ティアにふさわしい男がどうかを調査するのだ。ほんの小さな欠点でも見逃すな。余さず記録するように」
目を充血させながら、視線で射殺さんばかりに見つめられながらクレウスに言われ、グレースは苦笑いを浮かべる。
「もしもその男に問題がないとするならば・・・」
渋面しながら言いかけて止まるクレウスに、グレースは恐る恐る訊ねた。
「お嬢様との結婚を・・・お認めになるのですか?」
シュウには既に相手がいるのに?との疑問が沸くが、セレスティアとウィンクの様子を見るに、どうにかしてでも強硬するのだろうなとグレースは思った。
だが、グレースの問いにクレウスは首を小さく横に振った。
「いや、最後は私自ら拷問・・・ではなく、尋問・・・でもなくて、試験を課そうと思う。ウィンクはああ言うが、やはりティアに結婚はまだ二十年は適齢まで早いと思うのだ。早婚で失敗しないように、私は念入りに吟味しようと思う。アドネイド家の一員として受け入れる以上は、厳しい選定があって然るべき。私自らの念入りの吟味の過程でもし間違って死んでしまっても、まぁそれは仕方がないことだ」
最後の最後で不穏な発言があったが、それでもクレウスはセレスティアの結婚にはちっとも前向きではない。その意思を確認したグレースは、わずかに口元を綻ばせた。
グレースは身分違いに恋と自覚しながらも、実はセレスティアに懸想していた。
許されることではないが、心情としてはクレウスに非常に近く、彼女にまだ結婚相手など見つかってほしくないと思っていたのだ。
だからクレウスがセレスティアの結婚を暗に絶対認めない旨を発言したことに、グレースは内心安堵していた。
しかし・・・
「だが、ティアの人を見る目は決して悪くない。だからティアが認めたという、そのシュウという男が気になるのも確かだ」
「え・・・」
ポツリと漏らすように言ったクレウスのその言葉に、グレースはギョッとした。
「私の厳しい吟味にも耐えられるような本物の男なら、あるいは・・・」
「お、お館様・・・?」
ぶつぶつと言うクレウスに、思わずグレースは問いかけようとするが
「まぁなに、全てはこれからだ。時間が経って頭が冷えれば、ウィンクやティアとて考えが変わるかもしれん。いや、そうなってくれ・・・そうなってほしい・・・」
クレウスはそう独り言を呟きながら、フラフラと歩いていってしまった。
グレースは愕然とした。
絶対に認めるはずもないだろうクレウスが、何となくシュウという男を遠からず認めることになる--- クレウスを見ていて、どうにもそんな予感がして拭えなかったのだ。
0
お気に入りに追加
199
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる