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闇討ち

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シュウ達が白金の騎士団の追跡を振り切ってから丸一日が経過した。
二人はトラヌドッグと別れ、徒歩と乗り合い馬車で目的地を目指す。
移動を全て乗り合い馬車にすれば、体に負担はない上に早く目的地に着くことが出来るが、追跡の手が迫っていることを考えると同じ馬車にずっと乗り続けていることにはリスクがあるとシュウは判断した。

フローラの認識阻害の魔法で正体を偽るにしても、魔法使用時はずっと意識を保っていないと魔法の効果が表れない。
馬車に乗り続けて魔法の使い続けで衰弱してついうとうとしようものなら、ただちに魔法の効果が立ち消え、正体を隠していたことがバレてしまうのだ。
そうなればシュウ達そのものを特に知らない人間からもお尋ね者か何か不審者と思われ、憲兵への通報があってもおかしくはない。

結局、肉体的な負担については妥協して、シュウ達は適度に乗り合い馬車を使う程度に留め、時間をかけてでも安全な方法での移動を続けていた。




「間違いない、二人はあの宿にいるようだ」


そしてそんな二人には、既に追跡の魔の手が追い付いていた。

シュウ達は道中、そこそこの規模の町で宿を取ったが、帝都からの追跡者である『光と影』が二人を捕捉した。
シュウの元上司である司教レウスによって雇われた闇ギルドの連中である。

以前、レウスの依頼で手痛い失敗を晒してしまい、後の無い『光と影』は本気の追跡部隊を編制してシュウ達の行方を追っていた。
そしてついにシュウ達が宿泊している宿を人影もない真夜中に包囲するところまで追い詰めたのである。


「目標はシュウとフローラ。どちらも始末しろ」


『光と影』に出されたオーダーは実にシンプルだった。
以前のように余計なオプションは付けない。それに足をすくわれて作戦が失敗する可能性があるからだ。

シュウとフローラの余計な行いに怒り狂い、あれこれ問題に悩み心の余裕のないレウスは、ただただシュウ達の死だけを望んでいた。それ故に指令も欲目をかかずシンプルなものになったのだ。

『光と影』も多額の前金を受け取っているだけでなく、一度失敗しているだけに本気の度合いは凄まじい。

今、シュウ達のいる宿屋は総勢25人の暗殺者が包囲している。
それも暗殺者はどれもが一流の戦闘技術を持っており、元勇者パーティーのシュウ、そして元聖女であるフローラを持ってしても生還は絶望的だ。

従来ならばこれほどの暗殺者の動員となると、上位貴族ですらも簡単には捻出できないほどの金がかかるが、一流の闇ギルドである『光と影』の沽券にかけてのリベンジであるために、このようなオーバークオリティの布陣となっている。

シュウ達はまさに絶体絶命の危機にあった。


「斥候から連絡。二人は間違いなく宿屋にいるようだ。今現在、の真っ最中らしい」


一人のエージェントの報告に、それを聞いた男達は呆れ顔になった。


「追われているのに随分と余裕だな」


「イラつくし、今すぐ爆破魔法で宿屋ごと跡形もなく吹き飛ばすか?」


炎魔法に長けている暗殺者が指揮を執っている男・・・ジャッカルに言った。


「いや、それでは目立つうえに確実に仕留めたという確証が持ちづらい。それに、聖女は寝ているとき・・・もしくは無防備になりがちなときほど強力な防御魔法が発動しているとレウス司教が言っていた。ならば、恐らく不意打ちよりも直接至近距離から猛毒付きのナイフで刺してやるのが確実だろう。何なら防御魔法が発動している状態のまま簀巻きにして水に沈めてやってもいい。このまま爆破したいというのは個人的には賛成なんだが」


「わかった。じゃあ、魔法使い達はバックアップに徹する」


「ああ。それと目撃者は一人残らず始末しろ。いつも通りに、面倒ないように確実に、だ」


「わかった」


『光と影』のエージェント達の打ち合わせが終わり、さてこれから行くか・・・
そうジャッカルが思ったときだった。


「ぐつ!?」


先ほどまでジャッカルと話していた魔法使いが、突然呻いたかと思うと地面に倒れ伏したのだ。


「!?」


倒れた男を見て、ジャッカルはハッと息を飲んだ。
男の首があり得ない角度までねじ曲がっているからだ。当然、死んでいた。


「なっ・・・!?」


知らぬ間に敵襲?身構えようとしたジャッカルの脳天に鈍器のようなものが炸裂。

(一体何が・・・)

ジャッカルが考え終わる前に、彼の頭はスイカのように弾け飛んだ。
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