189 / 464
使用人達の後始末
しおりを挟む
バロウが先の生活について構想し、ルーシエが一人あれこれ考えていた頃、使用人達は火事の後片付けと、そしてじきに訪れる引っ越しに先駆けて準備を進めていた。
それにはバフォメットとジャヒーも交じっていた。
二人は魔人であり、これまで正体を伏せていたこともさることながら、事情はあれど敬愛するバロウ達親子に対して裏切っていた者達だ。
本来ならば気まずいはずなのだが、当のバロウ達が咎めなかったこと、そして何よりルーシエに超がつくレアで強力な特殊能力があることが発覚した上に、他に上位魔人アモンや白金の騎士団の登場という強烈なイベントが目白押しだったことで、二人が魔人だったことのインパクトがどこかに消し飛んでしまい、なんとなく曖昧になってしまっていた。
バフォメット達もなんだかんだで既に心からバロウ達に忠誠を誓っていたので、『戦争維持派』の遣いとしての立場のことは忘れ、バロウ達に尽くそうと思っていた。
本当にいろいろ衝撃的なことがあり過ぎて心が寛大になったせいか不思議なほどに蟠りが残ることもなく、使用人達の間の中では以前のような日常が返ってきたのだ。
しかし、これからの全てが以前にように戻れるわけではない。
以前にも話をしていたように、彼らにはけじめをつけなければならないことがあるのだ。
それはバロウ達に使うポーションを目的として、野盗として行動してきたことのケジメ。
実行犯だった男達は、禊も済ませていないのにバロウ達に仕え続けるわけにはいかないと憲兵に出頭することにしていた。
これからバロウ達は大きな町に出て新しい生活を送る。
現状では何か商売をする予定であるが、もしその商売が成功したとしても、使用人達の禊が済んでいない状態では、いずれ野盗として起こした事件について憲兵の調査の手が入って来たときに大きな迷惑をかけてしまう。
最悪の場合はバロウ自身が憲兵に連れていかれる可能性もあった。
そんなことはあってはならないと、野盗行為をした男達はバロウ達に一言も言うことなく全員憲兵に出頭するのだ。
恐らくは罰としては強制労働になる。
人権などない過酷な強制労働となると、普通に考えれば五体満足で帰ってこられる可能性は低い・・・というより途中で死んで可能性のほうが高いだろう。(魔人であるバフォメット除く)
男達はこれからバロウ達親子に告げることなく、憲兵に出頭する。
メイドとして残る女達とは、今生の別れを惜しむことになった。
「俺、実は君のこと・・・」
「あっ、俺も!」
「待て、俺が先に・・・!」
ここぞとばかりに最後に愛の告白をする者もいたが、カップルが成立したとしてもすぐに身を分かつ立場である。
使用人達は悲しみに暮れながら、最後の別れの時を迎えた。
「・・・あれ、そういえばアポロはどうしたんだ?」
「さぁ?雇い主のおっさんが、寝ていたアイツを拘束して箱に詰めてるのは見たんだが・・・」
「そこで止めろよ!?」
「いやいや、あのおっさんブツブツ独り言言いながら、虚ろな目でいたんだぜ?怖くて何も言えなかったよ」
「ほっとこう・・・もしかしたら俺達よりも地獄を見るかもしれんが・・・まぁ、運がないと思うしかない」
ポーションをよりたくさん得るためにポーションを取り扱っている商人のトラヌドッグの元に潜伏していたアポロは、本来なら功労者として称えられるはずだったが、欲目を出してフローラに如何わしいことをしようとしたことで、仲間達からの好感度が下がっていた。
ほんの一瞬の出来心のために仲間からも見捨てられ、哀れといえば哀れな男であった。
それにはバフォメットとジャヒーも交じっていた。
二人は魔人であり、これまで正体を伏せていたこともさることながら、事情はあれど敬愛するバロウ達親子に対して裏切っていた者達だ。
本来ならば気まずいはずなのだが、当のバロウ達が咎めなかったこと、そして何よりルーシエに超がつくレアで強力な特殊能力があることが発覚した上に、他に上位魔人アモンや白金の騎士団の登場という強烈なイベントが目白押しだったことで、二人が魔人だったことのインパクトがどこかに消し飛んでしまい、なんとなく曖昧になってしまっていた。
バフォメット達もなんだかんだで既に心からバロウ達に忠誠を誓っていたので、『戦争維持派』の遣いとしての立場のことは忘れ、バロウ達に尽くそうと思っていた。
本当にいろいろ衝撃的なことがあり過ぎて心が寛大になったせいか不思議なほどに蟠りが残ることもなく、使用人達の間の中では以前のような日常が返ってきたのだ。
しかし、これからの全てが以前にように戻れるわけではない。
以前にも話をしていたように、彼らにはけじめをつけなければならないことがあるのだ。
それはバロウ達に使うポーションを目的として、野盗として行動してきたことのケジメ。
実行犯だった男達は、禊も済ませていないのにバロウ達に仕え続けるわけにはいかないと憲兵に出頭することにしていた。
これからバロウ達は大きな町に出て新しい生活を送る。
現状では何か商売をする予定であるが、もしその商売が成功したとしても、使用人達の禊が済んでいない状態では、いずれ野盗として起こした事件について憲兵の調査の手が入って来たときに大きな迷惑をかけてしまう。
最悪の場合はバロウ自身が憲兵に連れていかれる可能性もあった。
そんなことはあってはならないと、野盗行為をした男達はバロウ達に一言も言うことなく全員憲兵に出頭するのだ。
恐らくは罰としては強制労働になる。
人権などない過酷な強制労働となると、普通に考えれば五体満足で帰ってこられる可能性は低い・・・というより途中で死んで可能性のほうが高いだろう。(魔人であるバフォメット除く)
男達はこれからバロウ達親子に告げることなく、憲兵に出頭する。
メイドとして残る女達とは、今生の別れを惜しむことになった。
「俺、実は君のこと・・・」
「あっ、俺も!」
「待て、俺が先に・・・!」
ここぞとばかりに最後に愛の告白をする者もいたが、カップルが成立したとしてもすぐに身を分かつ立場である。
使用人達は悲しみに暮れながら、最後の別れの時を迎えた。
「・・・あれ、そういえばアポロはどうしたんだ?」
「さぁ?雇い主のおっさんが、寝ていたアイツを拘束して箱に詰めてるのは見たんだが・・・」
「そこで止めろよ!?」
「いやいや、あのおっさんブツブツ独り言言いながら、虚ろな目でいたんだぜ?怖くて何も言えなかったよ」
「ほっとこう・・・もしかしたら俺達よりも地獄を見るかもしれんが・・・まぁ、運がないと思うしかない」
ポーションをよりたくさん得るためにポーションを取り扱っている商人のトラヌドッグの元に潜伏していたアポロは、本来なら功労者として称えられるはずだったが、欲目を出してフローラに如何わしいことをしようとしたことで、仲間達からの好感度が下がっていた。
ほんの一瞬の出来心のために仲間からも見捨てられ、哀れといえば哀れな男であった。
0
お気に入りに追加
206
あなたにおすすめの小説
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる